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あまい棒

 店へと入り、ぐるりと見回す。

 窓側は天井に照明もあって明るく、奥は間接照明の灯で薄暗くなっている。

 店の一番奥には、いかにも高級そうなカウンターがあり、その後ろの棚にぼんやりと輝きを放つものがならんでいる。

 あれが魔法石なのだろう。一つ一つがやわらかな光を放ち、それで照明をわざと薄暗くしているのかと納得する。

 左右の壁にはいかにもな杖がずらりと飾ってある。

 その手前に傘立ての傘のごとく十把一絡げで立てかけてある杖は、安物か?

 腕輪とか指輪とか、宝飾品のようなものも色々あるが、全部魔法の発動体だろうか。

 勝手に触ってはいけないオーラがビンビンでている。おもにお値段的な意味で。


 手前の明るい場所に並んでるのは何だろう。

 単4電池くらいから、大きいものでもボールペンくらいの大きさの棒とか、おはじきの様なものとか。

 わりとポップなマーブル模様をしている。

 棒が立っている瓶毎になにか書いてあるので、それぞれ違う用途の品なのはわかるが、そこまでだ。


 あの窓際のブースはなんだ?

 外に窓が開いてるけど、修理受け付けとか?


 さてどうしよう。と思って目線を上げると、メリルちゃんとエマさんの妖精組はさっさと奥へといってしまっている。

 ケイトさんは俺の横で控えてるし、護衛のチャラオはマーブル棒をチラみしている。

 うわ、奥から品の良さそうな店員さんが近寄ってくる。

 メリルちゃんを追った視線を勘違いされたか、メイドと護衛を連れた俺をいい鴨と見たのか。

 テンションあげあげで入ってきていながら、もうすでにガクブルで、俺、ちょっと涙目なんだが。


 とりあえず、近寄ってくる店員さんと目を合わせないようにするという、異世界でも通用しそうなダメスキルを発動。

 店内をぐるりと見回すていで窓側に身体を回し、さっきから気になっているマーブル棒を観察する。

 ほんと、何だこれ?


「*****」


 聞きなれない声がしたので身体を向け、日本人的曖昧な笑いを浮かべ、首を振る。

 にこにこ顔で、店員さんが何か言ってる。


「*****」

「*****」

「*****」


 うん。どうやらケイトさんが上手く対応してくれるようだ。

 ついでに店員さんの背後に目をやると、俺のHELP視線に気がついたらしいメリルちゃんがフワフワと漂ってくる。


「まずまずなしながありました」


 奥の棚を指さしながら、満足ゲに首肯するメリルちゃん。

 でもきっと、お値段もそれなりだよ。


「ところで、」


 と、俺。


「この棒も、魔法石ですか?」


「……あまいぼう?」


 メリルちゃんも知らないらしい。

 商品前のPOPを読んで、マーブル棒をペタペタ触っている。

 いや、メリルちゃん。何だかわからない商品、そんなにペタペタ触るもんじゃないよ。


「なるほど」


 並んだ商品を一通り観察を終え、メリルちゃんが大きく頷く。


「これには、みかくをしげきするまほうがこめられているのですな」

「味覚を刺激する魔法??」


 砂糖とか塩の結晶だろうか。


「そのものがあまい、からいではないのですよ。したにあるとくていのそしきをしげきするのですな」


 言って、んべーっと舌を伸ばすメリルちゃんがとてもラブい。


「特定の味蕾を刺激するってことかな」

「みらいとはなんですかな?」


 相変わらずメリルちゃんの質問はシャープだ。


「舌にはそれぞれ、甘さを感じる細胞、辛さを感じる細胞と言うのがあって、それを味の蕾と書いて、味蕾と言うんです。たしか人間には塩味、酸味、甘味、苦味の4つの味を感じる細胞があるってことだったと」


 なるほどと頷きながら、メリルちゃんが棒の刺さった瓶を指さしていく。


「このぼうは、あまいぼう。こちらがあまさが6、そちらがあまさ4とかいてありますな。これはからいぼう。からさ3」


 飴みたいに舐めるものなのか?

 辛い棒ってのは辛いだけ? それとも煎餅とか明太味とかあるの?


「*****」

「*****」

「*****」


「ぼうじたいは、おたかいものではないので、おやつがわりに、いちにほんはだれでももっているそうです。まりょくがきれたあとのちゃーじにおかねがかかるそうですが」


 なるほど。

 魔力の補充で儲けをだす、メンテナンスビジネスってことか。

 ああ、あの窓際のブースはチャージ客相手の窓口だ。

 振り返って窓際のブースに目を送ると、丁度女子高生くらいの女の子達が、ワイワイといいながらマーブル棒をブースの店員に渡している。

 女子高生の咥えた棒。なんか犯罪チックだ。

 俺は首を振って、店に並んだマーブル棒に向き直る。

 決して、「それお幾ら万円」などと思ってはいない。



 何本か買って貰えるかな。

 甘さ4ってどのくらいの甘さなんだろう。

 味見とか出来ないのか?


「*****」


 いつの間にかマーブル棒の束が刺さったケースを手にした店員さんが横に立っていて、そのうちの一本を差し出してくる。


「*****」


 相変わらず、何言ってるのだかわからないが、メリルちゃんの言う“甘い棒4”を指さして、どうやら舐めてみろと言ってるっぽい。

 なんだろう。試供品か?

 持ってきたケースに入ってるってことは、ちゃんと洗浄してあるんだろうか。

 まずはケイトさんに毒味をして貰えないだろうか、などと不埓なことを考えつつ、マーブル棒を受けとる。


 思ったより軽い。

 もっとガラス棒くらいの重さがあるのかと思っていたら、ずっと軽い。

 色合いといい、重さといい、有平糖とか千歳飴とか、そんな感じか。

 窓にかざしてその輝きを楽しんだ後、おっかなびっくり咥えてみた。


 あまい。


 さほど複雑な味わいではなく、ごくプレーンな“飴”を舐めているような味。

 結構好みの味だな。

 店員さんを見て、マーブル棒を指さし、指を4本立てる。

 店員さんがうんうんと頷く。

 次に両手を使って指を6本立てて、マーブル棒を舐める仕草をする。

 店員さんがすぐに理解してくれたのか、別のマーブル棒を渡してくれた。

 うん。やはり甘い棒6はちょっと甘過ぎ。


 今度はこっちどうかって?


「からさとにがさだそうですが」


 辛いと苦いか。大人の味だな。

 ?? なんか、たばこってこんな味?

 俺は普段たばこを吸わないんで、大学の頃に飲み会で貰って吸った記憶しかないんだが、こんな味だった気がする。

 へー、ほー。これならニコチン中毒とか肺癌の心配いらないね。

 そういや甘い棒は糖分ゼロだし、これは健康機能性なんとかってヤツか。


 とういことで、甘い棒4と、甘辛のBBQソース味っぽいのを一本ずつ、縞柄の、和紋でいうところの間道のような柄の、マーブル棒が2本入る布ケースと合わせて買って貰う。


 さて、ウォシュレットも起動できない俺に、そこの高級そうな魔法石なんて縁がなさそうだが、後学のためにちょっと拝見しますか。

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