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美人多いな。

 目の前を通り過ぎていくあまたの生地とデザイン画に圧倒されている内に、どうやら衣装選びは終ったらしい。

 服を仕立てるなんて、入社した時に日本橋のデパートでイージーオーダーのスーツ作った時以来だ。

 生地なんて灰色か紺か、ストライプが入ってるか無いかの選択しかなかった。

 それに比べ、今回淑女の方々によって厳正にセレクトされ、机の上に広げられている生地は、派手な色柄物が多い。

 森薫の描く中央アジア漫画の衣装にあるようなカラフルで緻密な刺繍とか、派手なアロハっぽい柄とか。

 絵柄こそ女の子じゃないけど、痛シャツ紛いの色使いをした生地とかもある。

 ……しかしこれは何の絵なんだろう? 抽象画? なんかの動物? 妖精さん?

 一見無地かと思う生地にも、超絶技巧の刺繍が一面に施されていたり。

 メリルちゃん曰くの“魔術的にすぐれた刺繍のある生地”も当然残ってる。妖精さんお勧めの逸品だものな。

 デザインも、どっかの民族衣装っぽいのからポロシャツらしきものまでいろいろ。

 隅の一枚がどうもネトゲの冒険者服っぽいんだが、どこぞの召喚者が持ち込んだデザインじゃなかろうか。

 サックリ言って、どうやら侘寂は理解されていないようだ。


 人族の方々は満足ゲなんだが、メリルちゃんとエマさんが肩を震わせているように見えるのは何故だろう。

 わかってるさ。

 こんなゴテゴテの生地で作った服、醤油顔のおっさんには装飾過多なのは。

 顔が服に埋没するよね。これぞ都市迷彩。

 それが狙いかよ!

 とはいえ、ロココの昔は男がタイツだったり、女の人がメガ盛りも真っ青な髪型だったりしたそうだから、こっちじゃこれが普通の感覚なんだろう。

 はあ。

 コルセットを強要されたり、股間にカップのついたパンツを履かされるよりはマシだと思うしかないか。


 なんだかどっと疲れてしまった。

 うわぁーと思いながら、ズズッと少し苦みのある紅茶っぽい飲物を飲み、気疲れを癒す。

 2、3日後に先行数着の試着合わせをするらしい。

 屋敷で試着するにことも出来るらしいが、2、3日後なら来るのもいいかな。

 今日一日、インドア派の俺としては驚くほど歩いてるから、明日はきっと筋肉痛だ。

 それにしても仮縫いとはいえ2、3日ってのは随分と急がせるんだなと思ったが、考えてみれば、侯女殿下や侯子殿下と謁見するのに、いつまでもあの部屋着ってのは、やはりアウトだったのかも知れない。



 さて、一息ついたし、行きましょうか。と席を立つ。

 いつの間に増えていたのか、ずらりと並ぶ店員に見送られて外へ出た。

 日の加減から察するに、日本だと大体午後3時から4時前くらいな頃合いと思われる。

 3時間くらい居たのか。

 3時間も掛けたと思うべきか、3時間しか掛からなかったと思うべきか。

 まったく、金持ちの買い物なめてたは。


 歩きはじめると、人の衣装に目が行くようになっていた。

 確かにこの辺りを歩いている人達は、さっきの程凄くはないが、結構カラフルで、緻密な刺繍を施された生地の服なのが多い。

 でも、その服に負けない彫りの深い顔立ちだけどね。

 あー、美人多いな。

 食糧事情も良く、衛生状態も良好なせいか、健康的な美肌美人が多い。

 運動量が多いせいだろうか、筋肉質でスタイルの良い人ばかりで、太ってるのが美徳って感じはなさそうだ。

 ラテン系(20代)ってこんな感じか。


 このあたりは中流階級の商店街ってことだったけど、結構アッパーな感じがする。

 店やお客さんの雰囲気が、渋谷原宿っていうよりかは、青山銀座っていう落ち着いたイメージ。


「この辺りには、熊の人や蜥蜴の人はいないですね」

「あのかたがたは、おかねもないですし、このまれるものも、やたいよりですからな」


 なるほど。お金が無いってのもあるのだろうが、あの体格じゃあ、この辺りの商品はむいてないわな。

 俺は丁度通りかかった店の商品を見回す。


「*****」

「*****」

「そのろじをはいったおくの、どうぐやのあたりには、ときどきいらっしゃるそうです」


 路地を指さしながら、メリルちゃんがケイトさん情報を教えてくれる。


「*****」

「*****」

「あと、そざいのあじをいかしたりょうりをこのまれるので、ちょうみりょうをあまりかわないそうです」


 えーっと、それは生肉とかそのまま食べてるってことでしょうか??

 まあ犬とか猫とかは、味の濃いものはダメだっていうし、獣人とか感覚が敏感なんだろう。

 なんにせよ、体格や嗜好での住み分けはあっても、差別があるわけではないらしい。



 さすがに俺みたいに護衛っぽいのが付いてる大人は見当たらない。

 お供っぽいのを連れている人がいないでもないが、そういう人は、大体が金持った坊っちゃん嬢ちゃんのお上りさんぽい。

 かといって俺が注目されるわけでもなく。

 自分の知らないジャンルの海外アーティストが六本木を歩いてるくらいに見られてるんだろうか。

 嘘です。わかってました。何処ゾの田舎から出てきた成金の観光客と思われてるに相違ないです。



 お、なんかメリルちゃんとエマさんが呼んでいる。


「このみせは、そこそこのまほうがあふれてますな」


 窓に顔を付けて中をのぞき込んでいるメリルちゃんたちの横に並び、俺も店の中を伺う。

 ほほう。ちょっとした宝石屋のようだが、これがお高い魔法石を売ってる店か。

 20畳程の、この辺りにしてはそれほど広い店ではないが、なんだか奥の方の作りがいかにも高級っぽい。

 この窓際に並んだ小瓶に、ボールペンのように刺してある細長いカラフルな飴のようなのも魔法石だろうか。


「入ろう、入ろう」


 メリルちゃんに声を掛けて扉の方へ身体を向けると、すでにケイトさんが扉を開いて待っていた。

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