ウマーな人生が送れそう
妖精さんのカタコト通訳を介して仕入れた情報によると、どうやら俺は、この少女に召喚されたらしい。
ただその召喚てのが、勇者召喚とか英霊召喚とかの格好いい物ではなく、とりあえず呪文を覚えるための練習に「頭が良くて、好戦的でない、そこそこの幻想種を呼んでみましょう」的なものだったらしく。下位の火蜥蜴とか喚べたらペットにでもしてと思ってたところ、少女の力が強力すぎて俺が喚ばれてしまったということらしい。
なにそれ、装置たち上げ時の試し打ちでできちゃったやつか。
勇者召喚に至るまでの間に、一体どれだけの試行錯誤があったことやら。
どうやら今までにもこういう事故は無きにしも非ずで、喚ばれた人々との文化交流を求めて、妖精さんたちは過去に喚ばれた人の使っていた色々な言葉を教養として学んでいるらしい。
文学部異世界語学科とかある感じか。あるいは高校の第二外国語が異世界語とか。
それで俺みたいなのが実際に現れると、わーっと集まって試すのだとか。
そうか駅前で外人捕まえて喋りかける高校の英会話サークルでやる度胸試し的なアレだ。
そのおかげでこうして俺の生命線が繋がったわけで、ありがたいことだ。
帰れるのかと聞いたところ、送還という技術はあるものの、日本を含めて俺のいた世界というのがどこにあるのか分からず、帰すのは難しいだろうとのこと。少女と魔法使いにはひたすら謝られた。確かに送られたはいいが、魔獣が闊歩する別世界とか、同じ地球でもアフリカのど真中とかに送られたら死ねる。
もともと召喚術はかなりレアな技術で、送り帰す必要がある程の大物を召喚する場合には、儀式を整え、召喚する相手の座標?を把握してから呼ぶものらしい。
とりあえず今後のことは、少女の実家である侯爵家が客分として面倒見てくれるらしい。ってことを、途中から現れた少女の兄であるところのイケメン侯子が保証してくれた。
そう、少女はこの国を束ねる有力貴族の一角を占める侯爵家の御令嬢で、侯爵家は所領の鉱山経営を元にした関連産業、商業を国の内外で手広くやってる金持ちらしい。
この国が世に覇を唱える大国なのか、大国の間で震える小国なのか知らないが。
でもイケメンの立ち居振る舞いを見る限り勝ち組っぽい。
金も名誉もあるイケメンとか死ぬが良い。
その代わり、なんか金になりそうなネタないかとのこと。さすが抜目無い。
まあこの世界の産業、文化レベルがどのくらいか分からないが、最低でも侯爵令嬢のペット、うまくいけば大貴族の技術顧問ポジってことで日本にいた時よりはるかにウマーな人生が送れそうなんじゃないか。