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リゾートスパ

 VIPルームに興味があると思われたのか、それではこちらへと茶屋に案内された。

 広く張り出した軒下のテラス席で休憩している参拝者を横に奥へと進む。

 天井は低いし作りも古いボロ小屋かと思ったら、結構しっかりした作りじゃないか。

 カフェのカウンター風な作りの反対側で水の精霊をモチーフにしたグッズが売ってる。

 ただ、光の塊と言うのは意匠化しにくいのかどれも微妙だが。

 擬人化したらそれはまさに妖精さんになっちゃうし、難しいところか。

 お守りやお札も売ってる。ポーションとかはないのかな。

 並んだ品々を見ていると、奥からさっきの水掛け男と同じ格好をした高校生くらいの女の子が、妖精さんを肩に乗せて出てきた。

 女の子の肩に座った妖精さんがパタパタと手を振って、俺の肩の辺りに屯していたメリルちゃんたちに挨拶してくる。

 俺は女の子と目が合い軽く会釈を交わす。

 クリッとした目の愛敬がある顔立ちの娘だ。いかにもおばあちゃん受けしそうな感じ。

 なるほど、彼女たちは水掛け男の交替要員ってことか。

 するとこっち側は社務所なのか。


 俺の目線がグッズから離れたところを見計らって、ケイトさんがさらに奥へと俺を導く。

 そして茶屋を通り抜けるとその奥には円形の車寄せ。そしてその先には瀟洒な作りの休憩所が建っていた。


 木造平屋の格式のありそうな門構え。

 窓を遮るように巧妙に配された腰丈の板塀と木々。

 少しモダンな感じで、リゾートホテルのスパに近い趣だ。

 全体的に光を帯び、水の精霊が池の水が湧き出ているところ並みに集まっている。

 建物の奥は池が回り込んでいるようだ。

 池の畔にはひときわ背の高い木が何本か立ち並んでいる。

 その木の周りを水の精霊たちがゆるゆると登っていく。

 あの背の高い木々を目当てに精霊が集まっているのだろうか。


 奥の方をぽへーと眺めていると、建物の中から女性が出てきた。

 建物にあまり似つかわしくない服装をした怪しげな一団を追い払いに来たのか?

 営業的なスマイルを貼り付けて歩み寄ってきた女性は、しかしケイトさんに気づくと一転親しげな様子にかわり、


「*****」

「*****」

「*****」

「*****」


 なにか話がまとまったらしく二人が俺を招く。

 どうやら中を見せてくれるようだ。



 両手を広げても届かないほど広い入口をくぐると、50畳はある広いホールだった。

 吹き抜け二階ほどの高い天井。

 奥にカウンターらしき机。

 左右には観葉植物で上手く仕切られた椅子席。

 まさにリゾートホテルにあるスパの受付だ。

 そしてあちこちに妖精さんと水の精霊たち。


 メリルちゃんたちがスィーっと奥へと入っていくと、そこに妖精さんたちが集まってきて、なにやら会合が始まる様子。

 中にいた受付嬢?三人のうち妖精さんが見えるのは一人か?


「*****」


 俺の視線が妖精さんを追っているのに気がついた、妖精さんが見えるとおぼしき受付嬢が声を掛けてくるが、案の定何を言っているのかさっぱりだ。

 曖昧な笑顔で首を振り、意思疎通が出来ないことを申告すると、ケイトさんが間に入ってくれる。

 間に入ると言っても、俺とケイトさんの間には深い溝があるが。

 結局何も出来ずにホールを見渡し、右奥に続く通路を覗き込んであそこが施術室だろうか等と適当に見学していると、ケイトさんに腕を取られホールの左手に導かれた。


 左手に進むと扉があり、それをくぐると池に張り出した縁側に出た。

 どうやらこの先に進むらしい。

 ホールを覗き込んでメリルちゃんを捜す。

 ちょうど俺を捜していたらしいメリルちゃんと目が合い、メリルちゃんたちが飛んでくる。達?

 メリルちゃん、エマさん、外の祭壇?にいた妖精さんにホールにいた妖精さん二人。総勢5人の妖精さんと15くらいの水の精霊だ。

 なんぞなんぞ。


 すこし驚いていた俺だが、ケイトさんに背中を優しく押され、縁側の奥へと足を向ける。

 なんか柔らかいモノが背中に当たった気がする。

 先へ進む案内の女性の後ろ姿。背中に当たる柔らかな感触。そして追いかけてくる妖精さんと水の精霊。

 おろおろとうろたえてしまう俺だが、扉は妖精さんの見える受付嬢が押さえていてくれる様子なのに気がつき案内の女性を追って歩き出した。


 縁側はすぐに階段で半階分ほど下りて、池の水面近くを建物を取り囲んで続いている。

 俺は導かれるまま縁側を奥へと進む。

 行き着いた先には広いウッドデッキ。

 デッキには藤で編んだような寝心地の良さそうなデッキチェアが絶妙な間隔で並んでいる。

 施術を終えた後だろうか、妙齢の女性や御婦人が気持ち良さそうに寝ている。

 まあ、なかには金持ちそうなおっさんやおばさんも居るが、それは目に入らなかったと言うことで。

 薄手の施術服を纏った気怠い表情の女性の艶姿を追ってしまいそうになるのは自然の摂理。

 とはいえガン見することだけはなんとか耐え、目線を池の方へと戻すのに成功したところで、手前のデッキチェアへと案内された。


 デッキチェアに腰を下ろしたところでメリルちゃんたちが追い付いてきた。


「*****」

「*****」

「*****」

「*****」


 俺のまわりで5人の妖精さんがなにやら話していたと思ったら、ホールに居た妖精さんが、スィーッと空へと昇っていく。

 胸の辺りに陣取ったメリルちゃんがなにやら合図すると、祭壇?にいた妖精さんが水の精霊を引き連れて俺の肩先へとやってくる。

 あー、気持ち良い。

 肩にとりついた水の精霊の恩恵だろうか、凝り固まっていた肩がスーッと軽くなる。

 顔周りにも登ってきたので目を閉じると、目のまわりの熱っぽさが引いていく。

 まわりのざわめきに目を開くと、空へと昇っていった妖精さん二人が水の精霊の団体を引き連れて降りてくるところだった。

 そしてそのまま雪崩込むように俺の全身を水の精霊が包み込んでいく。

 なんだこれは、なんだこれは。

 腰、肩、足、腕。

 見る見る全身が癒されていく。

 水の精霊の癒しの力、パナイな。

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