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水の精霊が湧く池

 さらに奥へ進む。

 参道の突き当たり、清浄な水をたたえた池に出た。

 これが水の湧く池か。

 思っていたより広い。

 なんとなく湧き水がちょろちょろ出てる水場か、せいぜい数メートル四方の泉かと思ってたんだが、代々木の体育館くらいありそうな池だ。

 水が凄く澄んでいて、びっくりするほど透明度が高い。

 水深は1メートル以上ありそうだが、水底に敷き詰められた白い玉石がしっかり見える。

 池の奥の方に、水の湧き出しているところがあるのも見える。

 水の精霊だろうか、水の湧き出ているところから時々白い光が湧き上がってくる。


「ほほう。おもったよりみずのせいれいがわいていますな」


 メリルちゃんが感心したように声をあげる。

 さすがに光の柱が立ち上がるほどにはなっていないが、湧き上がる水面に水の精霊がたゆたって、ぼんやりとした光の山を築いている様子はなかなかに幻想的だ。

 大勢の人が池のほとりにしゃがみ込んで、池の水を掬っては身体にかけている。

 お寺の本堂前にある大きな香炉で線香の煙を浴びてる感じだろうか。

 俺も人垣の隙間を見つけてしゃがみ込み、手に池の水にちょっと掬ってみた。

 日の光が十分に差し込んでいるせいか、思ったよりも温かい。


「この池の水には魔力がいっぱい籠もってるんですか?」


 どことなく感じる神聖な気配に感じ入りながら、メリルちゃんに水の効能を聞いてみる。


「わきでるみずのまりょくはすぐにせいれいへとかわるので、このばのみずにはまりょくがありませんな」


 俺の掬った水をふんふんと眺めていたメリルちゃんが即答する。

 なんだよ、ただの気のせいかよ! 超がっかりだよ。

 精霊が多い=場に魔力が多いではなくて、精霊に魔力が取られちゃってむしろ場には魔力がないらしい。

 なにが“神聖な気配”だよ。霊感ないな俺。

 とはいえ折角の記念なので、濡れた掌で最近とみに凝りを感じる肩をポンポンと軽く叩いてから立ち上がる俺に、ケイトさんがはんかちを渡してくれる。

 このケイトさんの顔、彼女はこの水に魔力がないのを知ってたっぽい。

 まあ鰯の頭も信心だよ。


「このみずはじょうかされすぎで、のむとむしろはらをこわします」


 実験用の純水なんかと同じか。

 そうか。だからこの池は“苔も生えないほど綺麗”なんだ。


 あー、でも奥の方で水垢離してる人とかいるんですが。


「さぞやつめたかろうと」


 それだけか。

 ただ意外と温めだったんで、水垢離も見た目ほど苦行ではなさそうだがな。


「あ、あっちの人が固まってる辺り、水の精霊も集まってますよ」


 右手の岸辺に人垣が出来ている。

 その後ろの方に茶屋っぽいのもあるな。

 とりあえず行ってみようか。



 人垣の元へ行ってみるとそれはなにかの行列で、列の先頭では20代後半といった男が向かい合わせに腰を掛け、先頭の人と話をしながら柄杓で池の水を掛けているところだった。

 どうやら病を訴える患者の患部に、男が池の水をかけているようだ。


「おや、どなたかいますな」

「*****」

「*****」


 メリルちゃんとエマさんが話しながら男の方へと飛んでいく。

 なるほど、男の振るう柄杓のかたわらで妖精さんがなにか指示を飛ばしているんだ。

 どうやら男が柄杓で水をかけたところに、妖精さんが水の精霊を誘導している様子。

 池のほとりで水を掬ってかけている人たちとの違いは、妖精さんが水の精霊を集めるのを手伝ってくれるかどうかだけだ。


 先頭の患者が腕をさすりながら男になにやら訴えかける。

 男は厳かに頷いて、患部と思われる場所に池の水を柄杓で掬ってかける。

 妖精さんの指示で、水の精霊が水に濡れたところに集まる。

 患部が精霊の光に包まれる。

 精霊が離れるとともに男がまた厳かに頷く。

 患者が銀貨?を男の足元にある箱に入れる。

 察するところ、霊験あらたかな水と精霊で、治癒魔法をかけてるってところか。


 一人3分。一時間で20人捌いて5時間で100人。

 一日で金貨1枚のもうけじゃないか。

 なんという錬金術!

 経費は初期投資の柄杓と椅子代だけだしな。


 もしかして、あのおっさんが水の神殿の神官てことか?

 いやー、教会儲かってるわー。



 メリルちゃんたちに話しかけられ、男を手伝っていた妖精さんの動きが止まる。

 男は少しホッとした顔をして、後ろから板書きを取り出すと座っていた椅子に立てかけて席を外してしまった。

 なんだろう。“只今休憩中”とか書いてあるのかな。

 金儲けを邪魔されて怒り出すかと思ったがそうでもないらしい。

 一応は神職ということか。ゲスく疑ってすまんな。

 それとも休憩のタイミングを見計らっていたところだったか。


 ところで神殿てのはどこだろう。


「メリルちゃん。水の神殿ていうのはどこですか?」


 ちょうど三人で戻ってきたメリルちゃんたちに聞いてみる。


「このいけがしんでん。ではないでしょうか」


 うーん。そうなんだろうか。

 自然崇拝のイメージだとこの池はご神体なんだけど、ここにはリアルご神体な水の精霊がおわすから、この池が神殿になるのか?

 じゃあ、そこの水掛やってた椅子が祭壇てこと?

 あの柄杓が錫杖か。

 なんだか少し清貧過ぎやしないか。

 すいぶんと儲かってそうだから、それっぽいモニュメントとか建物はないのかな。


「*****」

「*****」


 ケイトさんに聞いてもらうと、すぐに答が返ってきた。


「このちゃやのうらてに、きぞくのかたがたがたちよるしせつがあるそうです」


 VIPルームか。

 やっぱりそういうのがあるんだ。

 外から見るくらいはできるのかな?

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