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水の精霊は雲になりたい

 工房を覗きながら橋をさらに二つほど渡ると、右手に木立の広がる公園?が現れた。


「ほほう。せいれいのけはいがこいばしょですな」

「精霊が濃い? ここが精霊を祭った神殿てやつなのかな?」

「*****」

「*****」

「みずのせいれいがつどうちだと」

「水の精霊? 木とか緑じゃないの?」

「*****」

「*****」

「おくにみずのわくいけがあるのだそうです」


 なんか雰囲気の良さそうなところっぽいので案内して貰うことにする。

 もともと神殿はみどころのひとつだって事だったし。


 木立に沿って道を歩いて行く。木々は両手を広げたよりやや広い、大体3メートルから5メートルの間隔で植えられている。

 見通しは良さそうなんだが上手いこと木が配してあって、奥まで見通せるようにはなっていない。

 覗ける限りでは木立の中では木の根を枕におっさんが寝転んでいたり、アベックが座ってきゃっきゃうふふしていたりで、神社とか神殿とかより、自然公園に近い雰囲気か。

 少し歩くと入口なのだろうか、木立が開けた場所に玉砂利が敷かれ、そこから奥へと道が続いていた。

 道幅はそれなりにあって神社の参道に似た作りだが、あまり厳かな雰囲気はなく、やはり森林公園の遊歩道といった風情だ。


 玉砂利を踏みしめ、我々も木立の奥へと入っていく。

 参道?は緩やかに登り、やがて下り始める。30センチ程度のわずかな高低差。

 下ったところに清涼な水を湛えた小川が流れていて、その小川のせせらぎを丸石を並べて作られた橋?で渡ったところで、なにか雰囲気が変わった。

 水場に囲まれた場所に入ったことですこし涼しくなったのか?

 立ち止まってきょろきょろ見回していると、ケイトさんが上を見上げて指を差している。

 指さす先に視線をあげると、メリルちゃんがふよふよと木立を上に上がっていくのが見えた。

 あれ?

 メリルちゃんの周りに、なんかボンヤリとした光が集まってきている。

 両手で包む程の大きさの光の群れ。

 何だろう。実体のない不思議な光だ。煙に照明をあてたのとも違う、蛍とも違う。

 ガラスに蛍光塗料を刷毛ではたいたらあんな感じに見えるのだろうか?

 ただ明るい光の集まりがふわふわと漂う様に、それでも確かな意志を持ったかのようにメリルちゃんを囲んでいく。

 そうだ、コミックなんかで天に召されていく魂ってのがあんな感じか。

 なんかもやもやとはするが、怖いとか不気味とかの感情は湧かない。どちらかというと癒されるというか。


 ぶつぶつと何かつぶやく声が聞こえて横を見ると、ケイトさんや護衛さんが両手を合わせ、メリルちゃんをみて何かつぶやいている。

 いや、メリルちゃんにじゃないか。あの光に向かって祈っているんだ。

 ケイトさんや護衛さんの祈る姿に気がついた周りの人たちも同じように祈りを捧げはじめる。

 そうか。あれが精霊か。いかにも精霊っぽいし。

 なんとなくわかった気になって心に余裕が出来たのか、周りの人たちのことが見えてくる。

 どうやら精霊への祈りは決まった様式があるわけでもなさそうで、神社の参拝っぽく結構長く祈ってる人もいれば、わりとあっさり挨拶程度で済ませてしまう人もいる。

 祈りの言葉も聖句を唱えるという感じじゃなくて、願い事を唱えている感じなのかも。

 あそこで跪いて妙に真剣に祈りを捧げてる妙齢の女性がちょっと怖い。


 うわ。メリルちゃんが10から15くらいからなる光の群れを引き連れて下りてきた。

 あれは灯で数えるのか? みんなが祈りを捧げているとなると柱?

 まあ数詞なんてここじゃ俺の気分次第で何とでもなるんだが、気分的にもやもやする。

 というか、あんなの引き連れてきたら、目立つんじゃないか。チョー目立つよ。大丈夫か?

 普通の人にはメリルちゃん見えないってことは、あの精霊たちが俺たちを目指して降臨してくるみたいじゃないか。

 イイの?そんなことがあって。こっちじゃよくあること?


「みずのせいれいさんたちです」


 水の精霊をメリルちゃんが紹介してくれるんだけど、どう返せば良いんだ。言葉とかわかるのか?

 俺の狼狽を余所に、光の玉が俺に群がってくる。

 これ、動いてもいいものなんだろうか。うらやましそうな周りの目線が痛い。


 水の精霊たちは俺に触れんばかりにまとわりつく。というかぶつかってるような?

 精霊は明るいんだけど、やはり何かが当たった感じはしない。温度も感じない。LED電球だって少しは熱があるのに。不思議な光の玉だ。

 動きには意志を感じる。

 そうだ、公園とかで会った人なつこい犬に匂いかがれてるのがこんなか。

 もっともあまり興味を引かれなかったようで、すぐに精霊は俺を離れ、再び樹の枝葉が織りなす頭上の茂みへと上がっていく。


「水の精霊は、池に居るんじゃないんですか?」


 俺は水の精霊たちを目で追いながら、メリルちゃんに声をかける。


「みずのせいれいはきをつたいえだをわたり、たかきところへのぼります。やがてくもへといたるのがせいれいのほまれと」


 なるほど、水の精霊は雲になるのが出世の上がりなのか。

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