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工房街と倉庫街

 ズズーっと林檎のネクター?をすすって一息ついていると、


 ゴーン、ガラーン、ゴローン


 時報の鐘がなる。そろそろ十時か。

 鐘の音が鳴り渡るとともに、がたがたと屋台がかたづけられていく。

 青服の少年たちが慌ただしく走り回る。

 俺たちの座っていたテーブルと机もかたづけるらしい。

 紙を束ねて立ち上がると、ケイトさんが広場の外へ続く道を指し示す。


「しょうてんがいのほうへいきましょうと」


 屋台街を引き上げて商店街へ移動するらしい。

 屋台を引くのであろうチョコボを避けながら、ケイトさんに導かれるまま広場を出ようと歩き始めると、服を着た熊とかゴリラみたいなのとすれ違った。

 思わず足を止めて、振り返ってしまう。


「メリルちゃん。あの熊とか大猿のような人は何ですか?」

「ちゃいろのかたはおおぐまのひとで、さむいもりにすむかたたち。くろいかたはおおざるのひとであたたかいやまにすむかたたちですな」


 やはり熊と大猿の獣人らしい。


「けもののひとたちは、けがぬけるのがこまりますが、ちからもちなのでちょうほうされます」


 なるほど。抜け毛が酷いとなると、飲食関係の職には就けなさそうだね。


 彼ら大型の獣人は数は少ないがリザードマンよりは賢く(それでも小学生並み?)力もあるので、屋台の走り出しの補助や、交通整理とかをする要員として働いているらしい。あとは土方仕事とか。

 ああいう人間重機みたいのがいると工事ははかどりそうだが、その分動力機関の発達が阻害されそうだ。制約こそあれ魔法なんてのもあるし。

 あと自衛隊にもいるらしい。あんなのがハルバードとか振り回して突貫してきたら、戦意喪失間違いなし。


 しかし、熊や猿の獣人が居るってのは、猫耳少女とか期待できるのか?

 でも熊も猿も二本足で働く姿が想像できるけど、猫や兎はちょっと想像できない。

 もし居たとしても、手足とかカンガルーとかに近いんじゃないか?

 それはちょっと萌えにくいな。



 商店街までは歩いて半刻もかからないらしいので、ぶらぶらと歩いていくことにする。

 途中に精霊を祭った神殿とかそれなりに見所もあるそうだし。


 広場を出て、幅5メートルくらいの路地を歩く。

 両側には3階建ての石造りの建物が立ち並んでいる。

 とにかくカラフルだ。デンマークとかこんな感じじゃなかったっけ。

 2,3階は住居なのだろうか、窓はそれほど大きくなく、両開きの鎧戸のようだ。

 1階もほとんどの建物は扉1枚に窓が何枚か。

 建物から30センチほどのところに、道路と隔てる柵が立っている。

 時々1階の全面が開口になっている建物がある。

 そういった建物の開いた折り戸から中を覗くと、どうも工房のたぐいのようだ。


「このあたりは、はたおりやかわざいくしのこうぼうだと」

「なるほど。鍛冶屋とかはないですか?」

「*****」

「*****」

「おとのうるさいのは、じょうへきのそとだそうです」


 鍛冶屋に興味があるのかとくい気味に聞かれたので、少し考えて、作ってみたいものができた頃に案内をお願いすることにした。

 どうも異世界人のもたらす新しい技術というのにイケメンからもプッシュされているらしい。

 俺の知っている商品だと、それなりの材料や工作機械が必要と思われるがどうだろう。

 工作機械はNCは無理だろうが、鍛造機やならい旋盤くらいならありそうな感じがする。材料も精霊パワーがこもった謎材料とかありそうだし。

 色々試したいことは浮かぶんだよな。


 俺はふと気がついて足下を見つめる。

 しゃがみ込んで、道路を叩いたり撫でたり。

 この道路も石化の魔法を使っているのだろう。少しざらついたレンガのような材質で一面覆われている。

 道路の石材自体も水はけは悪くなさそうだし、両側の柵の手前には排水用の溝があり、その溝も所々穴が開いているので、下水道も整備されているようだ。


 ちょうど我々の横を、大荷物を載せた台車を引いた大熊の人が追い抜いていく。


 魔法と怪力。俺の世界にはなかったこの二つが組み合わさっただけで、技術というのはどれだけその発展の歴史を変えてしまうのだろう。興味が尽きない。



 気を取り直して再び歩き始める。

 所々、大扉を開いて作業している工房があるたび、軽く覗いてみる。

 なにやら縫い物をしている工房が多い。

 こちらの工房では、大きな布に刺繍をこらしている。

 隣でカタンカタンと音を立てているのは織機か。

 あちらの工房では、皮を裁って鞄を作っている。

 奥で鞄を縫っている機械は足踏み式ミシンのようだ。


 5メートルほどの川を渡る。

 荷物を積んだ船が行き交っている。

 エンジンのない舵だけの、艀というやつだろう。


 橋を渡った先は荷車が行き交っている。

 引いているのは大熊の人や蜥蜴の人が多い。

 蜥蜴の人の太い尾は、荷車を引くには器用な舵の役目をして便利そうだ。


 このあたりは橋向こうの区画に比べ間口が広い。

 どうやら水運の倉庫街らしい。

 大きく開いた間口には荷車が差し込まれ、大猿の人が荷下ろしというか、吊り上げをしている。

 やはり猿の人の方が手先の器用さがあるのだろう。


 また橋だ。川幅もさっきと同じ5メートルくらい。

 ああ、この川は水運の運河だったのか。

 橋から川岸を望むと、川を跨いでフレームが渡してあり、どうやら手動のクレーンのようだ。


 興味深げにクレーンをみていると、ケイトさんに腕を引かれた。

 橋の反対側で、クレーン作業が始まるようだ。

 行き交う荷車を避けながら橋の反対側へと回る。

 川の側面に寄せた艀の上に掛かるフレームを、大猿の人が太いロープを持って渡っていく。

 現代日本なら絶対に安全基準違反だな。安全索もつけてなければヘルメットもしてないし。

 艀の真上に陣取った大猿の人がロープの束を投げ下ろすと艀の上で人が玉掛けをして、準備が出来ると大猿の人がロープを引く。

 なんと力任せ。滑車使わないのかよ。

 大猿の人もなれた様子で危なげがないが。人命軽視なのか、安全基準が高いところにあるのか。

 それに滑車を使わないのは、獣人の雇用対策かもしれない。

 それとも単純に滑車を倉庫に引き込む機構がコスト増になるからか?

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