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魔獣は絶滅危惧種扱い

 紙と鉛筆を手に入れて、休憩コーナーへ戻ることにする。

 どうも閉店前のセールで生鮮品を買い込んだ人たちはそのまま帰るようで思ったほどには人がいない。

 炊飯とか洗濯とかはまだまだ人がかりで、買い物あとに喫茶でお茶をする余裕もないということか。

 それとも財布の都合か。

 水を扱う魔法がそれなりに普及しているようなので、洗濯機なら作れそうだが。


 買ってきた紙の束を広げ、さて鉛筆をどうするかと思いながらそんなことを考えていると、護衛の男性がナイフを取り出し削ってくれた。

 さすがプロ。ナイフの扱いが上手い。



 この国の貨幣が知りたいと伝えて貰うと、ケイトさんが紙の上に硬貨を並べてくれる。

 左から銅貨。円い白銅貨。六角形の白銅貨。外縁が白銅で中心が銅貨の1ユーロのようなバイメタル貨。

 護衛の女性が一番左に少し小さな銅貨を置いた。


「いちばんひだりのちいさなどうかじゅうまいでとなりのどうか。どうかごまいでまるいはくどうか。ろくかっけいのはくどうかごまいでいちばんみぎのこうかですな」


 紙に硬貨の絵を描き、それぞれに1,10,50,100,500と書く。

 良かった十進法か。


 俺はふと気になって、メリルちゃんの小さな手のひらを見る。

 メリルちゃんに向かって、グーパーを繰り返すと、メリルちゃんもクビを傾げながら手をニギニギと。

 メリルちゃんが可愛い。

 俺が手を広げて止めると、メリルちゃんも手を広げて止める。

 一本二本……。ああ、指は五本だ。

 ケイトさんや護衛の人の指も確認する。

 みんな五本だ。親指の位置も同じだし、なんとなくホッとする。

 そして、両手の指10本で10進法が流通したって説は正しそうだと思う。


「このうえに、ぎんか、きんか、せいれいかがありますな」

「精霊貨?」

「しろいきんかで、せいれいがまほうをこめたものです」


 精霊力のこもった白金貨幣か。金属の価値を、精霊力で水増ししてるのかな?

 ケイトさんが胸元をごそごそしているなと思っていたら、隠しこんでいた財布から大小の銀貨と金貨を取り出してきた。

 つい胸元に視線が行ってしまっていたのは許して貰いたい。

 小さい銀貨は半銀貨といって、銀貨半分の価値だそうだ。

 半銀貨一枚はバイメタル貨で二枚+αで、銀貨と金貨は相場によって交換比率が若干変動するらしい。

 あと、この金貨は1/4金貨で銀貨25枚くらい。その上に1/2金貨と金貨がある。

 半銀貨、銀貨、1/4金貨の絵を描き、それぞれ1000。2000。5万と書く。

 精霊貨は金貨10枚の価値があると。

 さらに右に1/2金貨、金貨、精霊貨と字で書いて、その下に10万、20万、200万と書く。

 屋敷に戻ったら、精霊貨見せて貰えないだろうか。イケメンに頼んでみよう。


 さらにケイトさんが紙幣を出してきた。紙幣あるのか。

 銀貨、金貨以上は兌換紙幣があり、最近は紙幣の信用も上がり使われるようになってきたらしい。

 発行は国の一元管理ではなく、兌換紙幣を領主や商人が発行しているそうだ。

 銀行券というより、藩札とか為替手形に近いようだ。

 偽造防止に、本位貨幣の金貨や銀貨にヒモ付いた魔法がホログラムのように張り付いているらしい。

 ちょいちょい出てくるな、魔法。



 硬貨のリストを作った下に線を引き、駄菓子300と書く。

 次にと考え、荷駄小50、荷駄大100と書く。

 青服の日当は1600くらい。これは売上は2000くらいだが、2割を元締めに収めるためというのが護衛さんの経験だそうだ。


 ケイトさんが飲物を買ってきてくれたので、これはいくらかと聞くと六角形の白銅貨1枚と銅貨3枚だという。


 市場の飲物130。


 生フルーツを絞った天然果汁100%の林檎のような甘さのあるネクターの様な飲み物で美味い。氷が無いので冷えていないが、その少し温さが甘さを引き立てているようだ。

 これが一杯で荷駄賃より高いのは、このジュースが高いのか、荷駄賃が安いのか。


 思いつくままに金額を聞いていく。

 □○○×の実1個30。だしの素180。味噌400から800くらい。

 魚一人前80から300。×△*の背中肉一人前400。


 屋台のご飯500から600。青服の日当じゃ3食を食べるのがぎりぎりか。

 紙一束200。鉛筆1本120。

 あそこのドーナツ?が30から50。クレープ?が80から100。

 ドーナツ?とかクレープ?が安い気がしたが、クリームとか使ってるわけではなく、小麦粉を焼いた生地にジャムを塗った駄菓子らしい。

 クリームとか果物を使ったものは、中流の人が使う商店街にあって、300から500くらいするとのこと。

 嗜好品は生活に必要な食料品に比べ少し高めのようだ。


 ランクで言うと下層に属するこの市場の商品価格を日本の商品相場で換算すると、六角形の白銅貨は100円しないようだ。70円くらいか。月金貨一枚の稼ぎが年収で200万円くらいの気配。中流で暮らすには月に金貨一枚じゃ足りない。二枚は稼げないと。


 護衛さんはやはり甲殻機動隊所属で見習いが月に1/4金貨3枚。正規採用で金貨1枚と半金貨1枚から。

 館のメイドさんは住み込み仕事着支給で下働きが半金貨一枚から。侍女で金貨1枚かららしい。

 ただ領主の侍女は行儀見習いの要素もあるので、少し安めなのだとか。

 機動隊のさらに上の治安維持部隊レベルだと金貨2枚くらい稼げるらしいが。


「*****」

「*****」

「さいきんはおおきないくさもないので、せんとうのかのうせいはすくないですが、さいがいじのどういんとかでちほうをてんてんとしたり、ようちあさがけだそうです」


 今度は自衛隊か。それは無理だ。


 あとケイトさんの実家の商家辺りだと、さっきの屋台の店員が半金貨1枚。中流の行く商店街の店員で金貨1枚からとか。

 だいたい公務員や商家の見習いで10万。正社員の初任給が20万。

 危険手当とかの付く特別職で見習いが15万。正規採用で30万といったところか。

 月収金貨2枚の道は遠そうだ。

 ラノベの主人公とかだとチート使ったりドラゴン倒したりですぐに100万、1000万稼ぐ設定だけど道のりは遠い。


「まじゅうはたおせませんよ」

「え? ドラゴンみたいな獣はいませんか? 野生の×△*とかドラゴンぽいのかと」

「いえ、やせいのまじゅうはかってにたおせません。とくにおおがたのものはかずがすくないですゆえ、ほごされています」

「え?」

「まえにきたにほんのかたもそのようなことをおっしゃってましたが、まじゅうをかるのはきょかがいりますし、ほとんどきょかはおりません」


 なんと、魔獣はレッドデータブック入りの絶滅危惧種扱いらしい。


「むかしのかたがたが、らんかくしすぎました。げんじゅうのかたなどようせいごうにひきこもりです」


 なにが幻獣なのかわからんが、幻獣クラスのはどこか別世界の妖精郷に行ってしまったらしい。


「さいきんはちあんもよいので、とうぞくのかたもおられませんし、おいでになられてもりょうしゅのへいにせんめつされます」


 自衛隊レベルの兵士が駆けつけて殲滅戦を仕掛けるなら、夜盗なんかは割に合わなそうだもんな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ようせいごうにひきこもりです 妖精郷の「郷」は、理想郷と同じ様に「きょう」かと。 [一言] まだ読み始めて間もないですが、楽しく読ませていただいてます。 妖精さん達可愛い。
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