異世界召喚は事故らしい。
「******」
「******」
女の子と推定魔法使いがなんか言ってる。
英語でもないし、何言ってるのかさっぱり分からない。例え英語だったとしてもわからんが。
普通、異世界召喚とかだったら言葉は何故か日本語とか、翻訳魔法とかあるんじゃないのか? 翻訳指輪プリーズ。初っぱなから言葉が通じないなんてハードモード。俺TUEEEE系異世界物では無いようだ。神様にチートも貰ってないしな。
どうしよう、魔法使いも騎士団も害意は持ってない感じがするのが助かる。とりあえず両手を開いて武器を持っていないことを示しつつ、アルカイックなスマイル。
なんかカラスぐらいの鳥みたいのがたかってきた。うるさいほどにギャーギャー鳴いてる。あれ? 今の英語っぽくなかったか? え? こんにちは? 今誰かこんにちはって言った?
俺は「こんにちは?」って聞こえた方を振り返りつつ挨拶を返した。
「こんにちは!」
あ、知ってる。
そこに居たのは、いわゆる妖精ってやつだ。
アキバの中古ガチャ屋で見かけたことがある。羽のはえた1/8美少女フィギュア。そんなのが10体くらい俺の頭の上を飛んでる。
「にほんのかたですか?」
その中の一体がするすると俺の前に降りてきて、たどたどしい日本語で聞いてきた。
「ああ、日本語をご存知ですか? 良かった。ここはどこでしょうか?」
コミュ症寄りの技術屋とはいえ一部上場企業の会社員。社会人生活で培ったわずかばかりの対人スキルを駆使してこれ幸にと話かけてくれた妖精さんにすがる。
彼女を逃がしたら、ホントにゼロベースの異世界冒険ものになってしまう。やだよ、森で狩りをしながら野宿を三カ月とか。絶対にムリ。
「さっきまで日本の公園で寝てた筈なんですが、気がついたらこんなことに」
なるほどと、彼女が頷く。
「*****」
後ろからの声に、彼女と妖精の一群がスーッと声の方へと動いてゆく。彼女たちの姿を追うように、俺も声のした方へと向き直る。
「*****」
「*****」
魔法使いと妖精さんがなにか言葉を交わしている。
あれ? 魔法使いが庇っている少女には妖精たちが見えてないのか?
俺と魔法使いの間には10体近くの妖精たちが飛んでいるのに、全然気にしていないというか、目にはいっている様子がない。まわりの騎士たちも妖精たちに視線がいってない。
俺TUEEEEかどうかわからんが、とりあえず「妖精が見える人」ポジはゲットだぜ。
少女がなんかオドオドとしながらも興味深げに俺を見つめてくるので、にっこり笑って手を振ってやる。あ、恥ずかしそうに手を振り返してくれた。ほっこりする。
「にほんのかた、よいですか?」
少し落ち着いてきた感じの少女と向きあってほっこりとしていたら、魔法使いとの話が終った妖精さんが俺に声をかけてきた。
「あなたがここによばれたのは、じこだそうです」