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召喚者料理人は味噌の開発に生涯を掛けた

 なんだかちょっと得体の知れないものの干物らしきものを見ていると、ケイトさんに腕を引かれた。

 そのまま屋台の陰にはいると、ベンチシートに座った人たちがおちょこのようなもので何かを飲んでいる。


「みそをえらんでほしいと。みそとはなんですか?」


 みそを選ぶ?

 ケイトさんに連れられた先に、屋台の前にいくつか樽が置かれ、中に茶色の練り物が。

 ああ、味噌。味噌がある。それも色違いがいくつも。

 赤茶色のとか黒いのはわかるけれど、なんか緑色がかってるのとかあるけど大丈夫なんだろうか。


「味噌は日本の代表的な調味料で、豆とか米とかを発酵・熟成させたものです。だし汁で溶いて飲むのが普通ですが、肉とかに塗って焼いてもおいしいです。発酵はわかりますか?」

「わかります。ようせいがてつだうこともありますゆえ」


 妖精が手伝うって? 米麹の変わりするの?


「そのみちのようせいがこねると、こくがちがうといわれます」


 うーん。妖精の生態がますます謎だ。


 おちょこを手渡され、その中に土色の液体が注がれる。

 どうやら味噌汁の試飲みたいだ。

 ケイトさんがおちょこと樽の一つを交互に指さす。

 どうやらこの赤褐色の八丁味噌っぽいのをまず試すらしい。

 思ったより甘みが強い味噌だ。

 この味は白味噌に近い気がする。もっともここしばらく味噌汁なんて定食屋かカップものしか飲んだこと無かったな。

 いくつか試飲したあと、色違いの味噌を7:3で混ぜて貰う。

 うん。このくらいのコクと香りが俺は好きだ。

 他にも気になった緑と白の1:1とか何種類か作って貰ってみんなで試す。

 このあたりでは赤褐色に緑が売れ筋らしい。俺にはちょっと甘すぎるかな。

 味噌は作られ初めてまだ30年くらいで、最近やっと地方ごとに特色のある味の味噌ができてきたところらしい。

 だし汁を伝えた日本人の料理人が、醤油といっしょに開発に生涯を掛けたのだと。

 名も知らぬ料理人の執念に感謝。


 俺としては、この味噌を溶いてるだし汁も興味あるのだが、やはりさっきのだしの素を溶いたものだそうだ。

 一杯の試飲でだしの素と味噌が両方試せるってことか。

 あと干物のお試しでもあれば最高なんだが、香りが混じってしまうのでやってないらしい。

 香りがダメなら、味噌おでんとかどうだろう。味噌の味が限定されるか?


「みそおでんとはなんですか?」

「味噌を濃いめに溶いただし汁で、魚の練り物とか大根、こんにゃく、玉子なんかを茹でた料理です」

「*****」

「*****」


 なんかケイトさんがメモを取らんばかりの勢いで聞いてくるが、詳しいレシピはちょっと。

 ぜひ研究していただきたい。



 味噌の試食は屋敷の料理長に頼まれたらしく、ケイトさんは俺が気に入った合わせ味噌とあといくつもの香辛料をまとめて買い、また青服の少年を呼び寄せて持たせる。

 そしてまたぶらぶらと奥へと進んでいくと少し開けたスペースに出た。

 辺りに適当に置かれた木箱に人々が座り何かを食べている。

 椀に入った麺のようなもの。串に刺さったよくわからない肉。ナンに挟まれたなにか。

 どうやらここはフードコートらしい。

 東南アジアテイストな凄いにおいで、「なにか召し上がりますか」的なことを言われたけど丁重にお断りした。


 フードコートを抜けるとどうやら海産物のゾーンらしい。

 熱帯魚のようなカラフルな魚?とか、マグロくらいの大きさのある深海魚っぽいのとか、タコだかイカだかクトゥルフだかわからん得体の知れないものとか。

 もちろん見慣れた感じのもいてホッとする。


「これはきのうのよるにでた、ぱんこでつつみあぶらであげたものですな」


 メリルちゃんがちょっとカラフルだけど、アジとかサバとかそんな感じの魚っぽいものを叩く。

 よかった。あのクトゥルフみたいなのじゃなくて。

 アレはアレで美味しいのかもしれないが、まだ心の準備が。


 鮮魚の奥には加工魚のコーナー。

 干物はわかるがあのちょっとどぎつい青い煮物らしき物はなんだろう。

 顔を近づけてじろじろと観察していると、屋台のおばちゃんが小さなかけらを串に刺して手渡してきた。

 この食欲を減退させる青い色彩をした物体を試食しろと?

 意を決して口に入れると、存外に美味い。佃煮?

 美味いんだが、コレが食卓に上るのは微妙だ。主に色取り関係が。

 酒のつまみにして酔っちゃえばいいんだろうが、俺は下戸なんだよな。

 ケイトさんにパスの意志を伝えると、ケイトさんがおばちゃんに伝え、おばちゃんが笑って手を振る。

 良かった、試食しても無理に買わなくていいらしい。


 隣の屋台にあるのはさつま揚げじゃないか?

 さつま揚げらしきものを見つけた屋台に移動すると、蒸し物なんかもある。

 屋台の裏手で練り素材を揚げたり蒸したりしているのが見える。ここの練り物はできたてのようだ。

 もう少し覗き込めば練り物の素材も見えそうだが、あのクトゥルフみたいなのだと困惑するので目をそらす。


「このあたりのしょくざいは、このみせであたらしくかいはつした、しんしょうひんだそうです」


 練り物はおばちゃんところで売り出したばかりか。意外に歴史が浅い。

 そういえば魚の練り物って洋食では見かけないし、思ったよりも限られた食材なのかも。

 色味も許せる色彩だし、ちょっと試食させて貰う。


「これはそのまま温めても美味しいですが、だし汁で少し煮るとまた違う味わいがでます」


 メリルちゃんを介してケイトさんに伝えると、ケイトさんがフムフムと頷く。


「さっきの味噌を溶いただし汁で茹でても、そのまま味噌を塗って田楽にしても美味しいですよ」


 ケイトさんが青服を走らせると、味噌屋台の若い衆が飛んできた。

 多分これから味の研究が始まるのだろう。

 おでんや味噌田楽が侯爵家の食卓に上る日が来るのだろうか。

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