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ほどよく魔力をはらんだ□○○×の実

 交番の前で馬車を降り、早速朝市へと向かう。

 ケイトさんを見失わないように一歩後ろを歩こうと思ったら、それはないらしい。

 俺の真横に付いて腕を組まんばかりだ。

 護衛の三人は俺たち二人を囲むように少し離れた位置をさりげなく歩いている。


 小路を脇に折れ二区画先にある広場が、食料品メインの屋台で賑わっているらしい。

 区画を一つ越えた辺りになると雑踏のざわめきが聞こえ始めた。

 思っていたよりもずっと人通りが多い。

 新規開店のショッピングセンター並みに賑わっていそうだ。


「もし迷子になったら、さっきの交番前に集合ってことでよろしく」


 俺の情けな宣言を伝え聞いた護衛の男性が笑いながら応える。


「*****」

「ごえいたいしょうがまいごになったら、さんにんのくびがとぶそうです」


 たしかに。


「メリルちゃんも、俺の頭にしっかり乗っててくださいね」



 広場は思っていた以上の広さだった。

 ビッグサイトの西館ワンホールくらいの広さがある。

 その広場におのおの荷馬車一台分、幅でテーブル二台くらいのスペースの屋台がずらりと並んでいる。

 おおよそ200台くらいの屋台がある勘定か。

 屋台には、籠に盛られた色とりどりの野菜や果物が満載だ。

 このあたりはヨーロッパのマーケットに似ている。


「あちらからよきかおりがしますな」


 メリルちゃんが俺の頭の左の方をトントンと叩く。


「あの辺りは果物っぽい感じのが並んでるね」


 まずはあてもないのでメリルちゃんの示す方へと行ってみることにした。



 前を歩く男性の護衛は、この混雑した雑踏の中、ヒョイヒョイと歩いて行く。

 なんという見事な身のこなし。

 人を掻き分けている様子もないのに歩く先の人の間に体を入れると、彼のあとに人垣がすっと割れる。

 俺は屋台に並んだ野菜の品数、品種の多さに感心しつつも、彼の開けたスペースにケイトさんを送り込み後に続く。

 さりげなくケイトさんに密着してしまったのは許して貰いたい。


 いやー。異世界来て良かったわ。


 メリルちゃんに髪の毛を引っ張られる。

 俺のセクハラを咎められたのかとヒヤッとしたがそんなこともなく、なんか右手の屋台が気になるご様子。


「あそこにならんでいる□○○×のみは、ほどよくまりょくをはらんでいて、かいもとめるとよいです」


 う、メリルちゃんの言葉を聞いて、ケイトさんの目が獲物を狙う野獣の瞳と化した。

 獲物を狙う野獣の瞳なんて、今までに見たことなんて無いがな。


 目だけ怖いまま、優雅な仕草で俺に合図をよこし、ケイトさんはメリルちゃんの指し示すままに屋台の商品を手に取る。

 取る。取る。取る。次々と取る。

 その手にした量を目にして屋台のおばちゃんが籠を差し出してきたので俺が受け取り、ケイトさんが抱えた獲物を籠に移す。

 急に目を輝かせて商品を漁りだしたケイトさんに護衛の女性が声を掛ける。

 その耳元にケイトさんが何か囁くと護衛の女性も一緒になって漁り始めた。


 なんか魔力の増強に効くから買っておけって話なのかとも思ったけれど、男性の護衛二人は特に興味もなさそうで、生暖かい目で二人の奇行を眺めている。

 なに? なにがあったの?


「よういちさんのまりょくをたかめるのにすこしやくだつかとおもったのですが……」


 買うように薦めたメリルちゃんもビックリしている。


「*****」

「*****」


 俺が呆然として引いているのに気がついた男性の護衛さんが教えてくれた。


「まりょくをはらんだ□○○×のみは、はだのわかがえりにこうかがあるそうです」


 えー。二人ともお肌ピチピチなのに。



 大量の戦果を抱えた女性二人がこの後どうするのかと思ったら、近くをうろつく青いハッピを着た中学生くらいの少年を一人呼び寄せて荷物を渡す。

 馬車まで届けてくれるらしい。

 庶民街の子供の小遣い稼ぎだそうだ。

 この雑踏の中、一袋くらいは持つ覚悟もしていたが、なかなか便利なシステムがあるようだ。

 あの青いハッピが市場公認の制服なのだろうか。

 小遣い銭を渡して荷物を預けられるというのは、この市場の治安とかモラルはかなり良いようだ。



 少年たちに買い物を預け、さらに奥へと進むと新しいゾーンへ出た。

 手前の大きな袋に詰まった小さな実らしいのは香辛料だろうか。

 奥にある白い割れた板のようなものは塩?

 基からスパイスなんて塩と胡椒くらいしかわからないが、ずいぶん色々な種類がある。

 こっちの茶色いのは?


「それはかんみですな。あまいこなです」


 砂糖か。

 こっちの茶色っぽい粉はなんだろう。粒子が細長い。


「***あじゅのーもろ**」


 ケイトさんがちょっと自慢そうに言って、少し手につまんで俺の手のひらに載せる。

 味見しろってことか?

 なんか見たことのある粉なんだが。


「あ、だしの素!」

「あじゅのーもろ、あじゅのーもろ」


 もしかしてケイトさん『味の素』って言ってるのか?


「*****」

「むかしこられたにほんのりょうりにんというひとがつくったしるをもとにかいはつしたそうです」


 俺的には『ほんだし』なんだが。その料理人が『味の素』って教えたのか、『だしの素』が訛ったのか。

 いずれにしろアミノ酸系のうまみ調味料だ。

 でもなんでケイトさんが自慢げ?


 そういえば、この屋台の店員、いやにケイトさんにペコペコしてるが。


「このやたいは、かのじょのじっかのものだそうです。そのちょうみりょうはひっとしょうひんだと」


 大店のお嬢さんて話だったと思うんだけど、コレ??

 だしの素一本で大店はさすがに無いと思うんだが。


「われたはんぱものやひのたったものなどを、おやすくていきょうしているそうです」


 ああ、アウトレット的な。

 ケイトさんの実家は結構手広くやってらっしゃるご様子。

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