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九州とかを走ってる豪華客車

 ユサユサと頭を左右に揺られて目を覚ます。

 首を回しながら身体を起すと、開いた扉からメイドさんが神楽鈴っぽいものを手に入ってくるところだった。

 俺が目を覚ましていることに気が付いたメイドさんは、そのまま鈴をテーブルに置き、窓を開けはじめる。

 まだ外は暗い。


「おはようございます」

「*****」


 両脇でメリルちゃんとエマさんが挨拶してくる。

 二人が両側から頭を揺ってきたようだ。


「おはようございます」


 そういえば、今日は王都へ向けて領境まで移動するので、朝が早いのだったか。

 昨日は昼間の気疲れもあって、夕食も早々に寝てしまった。

 入浴後のマッサージでも、半分寝てたし。

 十二分に寝たせいか、朝早い割にはスッキリとした目覚めだ。

 顔を洗い、着替えると、部屋のリビングスペースに移動してソファーに座るようメイドさんにうながされる。

 今日の服は上下左右に伸縮性のある生地で、サイズもやや大きめでゆったりとしている。

 かなりの長時間、馬車に揺られることになるので、身体を締めつけない様とのこと。

 用意が調い次第の出発で、朝食は途中で食べるらしい。

 このメイドさん、妖精さんが見えない人の筈だけど、もう自然と通訳のタイミングを見計らって話し掛けてくる。

 朝食のメニューはなんだろう。

 天気が良いなら、サンドイッチとスープのピクニック料理もアリなんだが。

 夕食のスパイスが効いたタンドリーチキンぽい料理は美味しかったな。

 アレをサンドイッチにしてくれれば十分だが、どこかドライブイン的なところへ寄るのだろうか。


 テーブルの上では、メリルちゃんとエマさんが、リュックサックのような袋を背負ってどや顔をしている。

 庭向きの窓から見慣れた妖精さんたちが、色取り取りのリュックサックを背負って飛んできた。


「みな、ご一緒いたしマス」

「エマさんもですか?」

「*****」


 なにか言いながら、首をブンブンと縦に振るエマさん。

 醸造の仕事は仕込みが終わり、あとは親方任せで大丈夫らしい。

 じゃあ皆な、仲良く行こうね。

 俺の言葉に『おー』と妖精さん達が片腕を振り上げる。

 そのかわいさに、とても癒される。

 ところで、そのリュックサック、なにが入ってるの?

 メリルちゃんとエマさんがリュックサックの中を見せてくれたけど、なにも入ってなかった。


「あ、そうだ。俺も太陽電池パネルもっていかなきゃ」


 あわてて立ち上がるが、メリルちゃんがテーブルの上を指さす。

 そこにはどこと無く和柄な袋が。


「その袋に」

「?」


 袋を開くと太陽電池パネルがきれいに収まっていた。

 荷造りされたトランクを熊の人に運び出させているメイドさんをみると、メイドさんが頷き、話し掛けてくる。


「*****」


 以前のケーブル外れ騒ぎで貴重品扱いになってるらしく、ご持参くださいとのこと。

 お心遣い痛み入ります。




 長距離バスの着座に供え、軽い屈伸運動で足腰を伸ばしておく。


「*****」


 膝の屈伸をしているところにメイドさんが声をかけてくる。


「準備が出来たようですな」


 俺はうんうんと頷いてiPadと太陽電池パネルの入った袋を手にとり、忘れ物はないかと辺りを見回す。

 なにも用意してないんだから、何もないが。

 あ。


「トイレ、行く、途中、おねがい」


 案内よろしくおねがいします。



 念のためにトイレを済ませ、玄関ホールを出ると、緑色をしたデカ物が止まっていた。

 10人乗りのバンくらいかと思っていたが、マイクロバスサイズはありそうだ。

 おや? その前後にも大型の車が止まっている。

 黄色と緑の2台のマイクロバス。それにマイクロバスよりやや小さい青い大型バンが二台。

 そのマイクロバスと大型バンに、サイより二周り大きなサイに似た動物が、それぞれを二頭づつ繋がっている。

 さらにその周りを、チョコボが10頭くらい取り囲んでいる。

 これ全部、王都まで行くの?

 “高級サルーンバスで行く名門旅館に泊まる豪華旅行”どころか、ぷち大名行列じゃないか……。


「これ、乗るデス」


 陣容に驚いて立ちすくんでいると、背中からヒューさんに肩を捕まれて軽く押されていく。

 誘導されるまま、後方に停まった黄色のマイクロバスに乗り込む。

 豪華な木造の内装。

 テレビで見た、九州とかを走ってる豪華客車がこんな内装じゃなかったっけ。

 前方には御者席。後ろ三分の一は荷物室のようだ。

 客室にはケイトさんとあと二人、メイドさんが控えている。

 椅子は大きめの一人掛け高級ソファーが左右の壁に沿って前後に二席ずつ。

 定員は四人か。


「ここ動かす、背中倒れるデス。足も伸ばせるデス」


 椅子はフルリクライニング仕様だ。

 まるで飛行機のファーストクラスの座席のよう。

 乗ったことないけど。


「あとこれ、寝る、出来マス。気持ちイイデス」


 そう言いながらヒューさんが広く空いたセンターのスペースにセットしたのはハンモックとハンモックチェア。

 マジか。

 これで頼めばお茶でも軽食でも出てくるらしい。

 至れり尽くせりだ。


「侯女ちゃんとメイドちゃんは、緑の方?」


 緑のマイクロバスが侯女ちゃんとメイドちゃん。バンとチョコボには護衛の人達が乗るらしい。

 このマイクロバスの乗客は、俺とヒューさんに妖精ズだけ。

 他にメイドさんが3人と御者のひとが二人。それとデッキに護衛の人が何人か。

 あれだ、七つ星とかオリエントエクスプレスとかそんな世界だ。

 ただ、トイレは一旦停めて、簡易テントを仕立てるのだと。


 前方奥の座席に座るよういわれる。

 ヒューさんは前方入口側。俺の後ろの座席をフラットにして、メリルちゃんとエマさん以外の妖精さんたちが陣取っている。

 メリルちゃんとエマさんは、俺の座席の前にあるテーブルに腰掛けている。


「*****」

「*****」


 シートに座ってキョロキョロとしていると、侯子と魔法使いがドアから顔を覗かせて挨拶してくる。

 慌てて会釈を返す。

 挨拶が終ると直にドアが閉じられた。


「*****」

「*****」

「*****」

「出発デス」


 外で大きな声があがり、ゆっくりと馬車が動き出した。

 さあ、王都へ向けて3泊4日の移動開始だ。

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