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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第1章
8/61

第8話

ロイヤーズクラブを一時離れ、単独行動を取る祐介のもとに一通のメールが届いていた。

「遅くなってすまない。明日こちらに向かう。薬師寺」

送られてきたのは30分程前。

「そろそろ行こうか」

と、山部が祐介を呼ぶ。

「ああ。そうだな」

祐介と山部はここで山荘に戻ることにした。


「そういえば、薬師寺さんが明日合流するそうだ」

「確か最近帰国したんだよね」

「あの人確か海外渡航経験が豊富だから英語や中国語、ドイツ語も堪能なんだよな」

「確かスペイン語も話せたよね」

「そうそう。海外で武者修行してたから単位が心配とか言ってたけど、なんだかんだで卒業したんだよな」

「羨ましいよな。そんなことしてても卒業できるなんて。私なんか法学部でヒイヒイ言ってたのに」

そりゃ在学中に司法試験に受かってりゃ自ずとそうなるに決まってる。


20:01

「さて、みんな集まったね。ここで調査報告にしましょう」

ここで会議が始まる。

「じゃあ俺から。伊賀ギルドにはやはり裏切り者はいたよ。十河(そごう)と岩田だ。盗賊の方は見たことない顔ばかりだな」

と、池永。

潜入工作はおそらくみゆきに任せたのだろう。

「なるほど。次は野上と菅野」

「こっちは不作だな。全然情報が無い」

と、菅野が気の抜けた声で言う。

真面目に取り組んでいるのだろうが、気の抜けた声だとサボってたように聞こえる。

「そうか。まあ、初日だからな。では、こちらからの情報だ。明日、薬師寺さんが合流する。それからたいしたことじゃないが敵の人数は30人だ」

本当は20人だが、なにぶん、中根を信用できないので水増しをした。

「おいしれっと言うな」

「こんなの聞いてねえぜ」

「こうだとわかってたらこの依頼は受けてないぞ」

野上、池永、菅野の3人が苦情を言う。

「まあまあ、話は最後まで聞くものだ。今回君らを戦わせるなんてこの仕事の一部を請け負わせてから今の今まで一言も言ってない。戦うのは山本さんと俺と薬師寺さんだけだ」

「それだとお前らがきついだろ」

「大丈夫。作戦通りにやれば問題ない。ダンジョンの入口の図面も手に入れてある」

「じゃあお前に任せるけど、危なくなったら俺らは逃げるからな」


会議はお開きとなった。


「ユウスケ、薬師寺さんってどんな人?」

「単純に言えば、強者かな。戦いの中にある美しさと強さの探究者であり、自分の信念に従って生きてる人だ」

「束縛が嫌いなの?」

「そうかもしれんな。大学のころというか、それこそ俺らと出会う前から自分の好き勝手と気まぐれで生きてきたような人だからな。気に食わないものをとにかく叩き潰して、ここまでのし上がってきた人だからな。正直、あの人の機嫌を損ねたら、俺みたいなやつは簡単に血まみれだ。だから弁が達者になるわけだよ」

「仲のいい人にも気を遣うの?」

「親しき仲にも礼儀ありだ。親しい人でも礼儀をわきまえないとダメだよ。さて、俺は自分の部屋に戻るよ。明日も早いからな」


翌日

前日に引き続き、みんなを情報収集に向かわせる。

今日は留守番を置かず、三木も情報収集に向かわせ、俺は単独行動。そして薬師寺を迎えに行くことに。


薬師寺さんは14時頃に名古屋駅に着くとのこと。

名古屋から亀山までは約1時間。

伊賀神戸(いがかんべ)までなら特急乗り継ぎで1時間20分ほど。


それまでの間に、中根さんと打ち合わせをし、情報を収集しておく必要がある。

しかし、下手な動きをすれば、水差し野郎だの荷物をまとめて埼玉に帰れとまで言われかねない。

ましてや、裏切り者が少なくとも2人か3人はいると考えると、より慎重にならねばならない。


伊賀での調査が終わったところでメールが来た。


「近鉄名古屋14時10分発の特急に乗る。伊賀神戸(いがかんべ)駅で合流しよう。薬師寺」


自分の調べたいことの裏は取れた。

時間に余裕ができたので、ゆっくりと伊賀神戸(いがかんべ)駅に向かう。


15:32

伊賀神戸(いがかんべ)

「よう、雨谷。久々だな」

薬師寺さんが来た。

大学時代の同期で、同じギルドの仲間。

世界各国の格闘技に精通しているだけのことはあって、本当に強い人。

「薬師寺さん。まさか援軍があなただとは思いもしなかったですよ」

「話は後だ。その前に資料だ」

と、薬師寺は祐介に封筒を渡す。

「誰からもらいました?」

「社長の秘書からだ。とにかく重要なものだ。とりあえずみんなとの合流が先だから山荘に行こう」


と、薬師寺は車を走らせるように祐介にいう。


「どうだい、調子のほうは」

「ある程度裏は取れました。あとはあなた次第ですよ」

「そうか。そういえば、お前のところの居候、名前なんて言うんだ?」

「山本みゆきです」

「若い男女が一つ屋根の下か。いいもんだね」

「そういう関係じゃないですよ」

「私もそういうつきあいをしたかったもんだよ」


2人が山荘に戻ったのは午後5時過ぎであった。

その後、すぐに薬師寺は自室にこもってしまった。


19:50

「明日、作戦を決行しよう」

と、祐介がいう。

祐介とみゆきは会議の準備で広間にいた。

「唐突ね」

「みゆき、今回は多少君に負担がかかることになるが、構わないか?」

「もちろん。それはそうと、他のメンバーは?」

「いったん席を外してもらっているよ。それはそうと、今日薬師寺さんが合流した。かなり腕の立つ者だ」

「そういえば、この封筒はなに?」

と、みゆきが聞く。

「資料だ。そういやまだ開けてなかったな」

そういうと、祐介はおもむろに封筒から資料を取り出す。

「こりゃあ、大変だ」

内容はこうだった。

盗賊団のバックに香港マフィアがおり、その香港マフィアが近々香港で大規模な武器取引の現場を襲撃し武器を強奪しようと企んでいるが、資金と武器が足りないため、資金調達のために次々と盗賊行為を起こしている。裏切り者の詳細は書いてなかったが、あらゆるギルドに内通者を作る手口は共通とのこと。

「私が動こうか?」

と、みゆきがいう。

「必要ない。俺らの依頼はあくまでも生け捕りだ。こういうこともあるから外国人をダンジョンに入れるのはご法度なんだ。中には、日本に入るのすらご法度の人種もいる。そういうのを見つけたときにダンジョン内で秘密裏に始末する連中もいるって話だ」


「さあ、全員を集めよう。作戦会議だ」

全員を集めたところで作戦会議が始まる。

誰にも本当の狙いは決して語らない。

敵を欺くにはまずは味方から。

こうして会議は終わり、それぞれが自室に引き上げる。

しかし、残った人がいた。

みゆきと薬師寺だった。

「はじめまして、薬師寺さん」

「君が山本みゆきさんだね。噂は聞いてるよ」

「話はなに?」

「単刀直入に言おう。君は私と同じ殺し屋だな?」

みゆきは無言を貫く。

「ノーコメントか。まあ、隠すことはあるかもしれんが、私もそういう家系の生まれだ。私には隠さなくてもいいぞ」

薬師寺の実家は江戸時代から続く殺し屋の家系である。

隠密の中のさらなる深層、決して表に出ることのない30の殺し屋集団は現代では6にまで減少したが、警察、公安、自衛隊などで隠密活動の闇仕事を続けている。

「あなた、強い?」

と、みゆきが聞く。

「なんならお手合わせ願おうか。ただし使っていい技は武道の技のみで、ダウンしたら負け。時間は5分でどう?」

「いいよ」


こうして私闘が始まった。

最初の2分はほぼ膠着(こうちゃく)状態。

2分過ぎ、動きが出る。

まず動いたのはみゆき。

出し惜しみなしと言わんばかりに飛び出す空中殺法。

薬師寺がみゆきの威力ある蹴りをガードする。

「(あの身体のどこからこんな威力が出るんだよ。こりゃ本気でやらねえとな)」

「(この蹴りでも浅いか。なら次はスピード重視の技)」

次に薬師寺は連続して蹴り技を出す。

これをみゆきがかわすも、三発目の蹴りが木に直撃。

枯れ木だが、粉々になってしまった。

「(予想通り蹴りが強い。ガードに回らなくて正解だ。もう時間もない)」

「「(次で決める!!)」」

みゆきが繰り出したのは常人の判断速度をはるかに上回る連続攻撃。

一方の薬師寺が出した技は強い蹴りによる地面振動。

地面振動でみゆきがぐらついたところで薬師寺が強い蹴り、みゆきも体勢を立て直してからの高速の蹴り。

どちらも技をかわしたところで時間切れ。


「いい勝負だったね」

と、みゆき。

「こっちは肝を冷やしたけどな」

と、薬師寺。

二人は熱い握手を交わし、それぞれの部屋に戻った。


翌日の夜

作戦が決行された。

雨谷、山本はダンジョンの中で待ち伏せ。

薬師寺は盗賊団の後追いで分断してから倒す。

三木、菅野は分断工作。

池永は中根の見張り。

野上は車で待機。


盗賊団が入ったのを確認し、薬師寺が動く。

このダンジョンの入口は地下1階にあり、そこからどんどん地下に降りていく構造である。



「何かがおかしい」

「なんです?」

「いや、いつもより人が少なすぎる」

「たまたまでしょ」


この時、盗賊団はすでに分断されていたのだが、誰一人気づいていなかった。

この時点で前列10人、後列21人。


そして、地下3階に降りる階段にて…

「おい!シャッターが閉まってるぞ!」

「私が合鍵を持ってきます」

と、岩田が走っていく。


数分後

「岩田のやつ遅いな。たかが合鍵を取りに行くだけなのに何をやってんだ?」


「岩田ってのは、こいつのことかい?」

振り返ると、そこには身体中傷だらけになった岩田が薬師寺に抱えられていた。

「てめえ誰だ」

「名乗るほどの者じゃねえよ。お前らは包囲されている、命が惜しかったら今すぐ投降しろ。香港マフィアの陳さん」

「何をふざけたことを言ってやがる、てめえら!やっちまえ!」

その叫びの中には余裕があった。

しかし、ものの数分でその余裕は打ち砕かれる。

「お前…その技は…」

「昔、中国に渡った時にな。それと、やけに日本語がうまいじゃねえか。冥土の土産に教えといてやるよ」



「ダンジョンにはてめえらのような汚らわしい奴らを始末するやつがいるんだよ」



こうして、薬師寺は21人を一気に始末したのであった。


「よし。あとはあいつらだな」

そういうと、薬師寺はシャッターを開ける。

シャッターの向こう側では三木と菅野が待っていた。

「うまくいきましたね」

「ああ。あんな連中、私にかかれば造作もない」

と、いうと薬師寺は出口に向かう。

「あれ?薬師寺さん帰るんですか?」

と、菅野。

「私の仕事は盗賊団退治と別動隊の手助けだ。あいつらの手助けまではしないよ」

「冷たいんですね」

「雨谷と山本を信用しているだけだ。山本は強い。だから心配することはない」



その頃

地下4階にて

盗賊団のメンバーが突然倒れた。

「おい!どうした!」

倒されたやつの意識はなかった。

「見捨てて先に行きゃいいじゃねえかよ。十河(そごう)さんよ」

「てめえ誰だ!?」

「お前がやってたことはお見通しだよ。裏切り者。お前に対してはどんなことをしてもいいんだからさ、早くに楽になれや」

「姿くらい表したらどうだ」

そうして、祐介とみゆきが9人の前に立ちはだかる。


「たかが2人か。てめえらやっちまえ!」

と、十河が叫ぶ。

しかし、実力差は歴然としていた。

「何をしてやがる!とっとと倒さねえか!相手はたったの2人だぞ!」

と、叫ぶのが精いっぱいで、周りの盗賊は次々と倒されていった。

「残念ながら、ここまでだ。お前たちはすでに袋のネズミだ。おとなしく投降するんだな」


「たかが二人で何ができるんだよ」

「下半身が震えているのにそんなことをまだいうのかい?言っておくが、君らの仲間はみんな倒されたんだよ?黒幕が誰か言うんだな」

この時、他のメンバーはすでに始末されていたということは祐介は知らなかった。

「知らねえよ」

リーダーの十河(そごう)がそういった刹那、みゆきの空中殺法が炸裂する。

十河(そごう)はあっという間に倒れてしまった。

「さて、行こうか」

「ええ。でもその前にお約束の拷問でもする?」

「本場仕込みのものでもなんでもやってくれ」


祐介は十河(そごう)を縛りつける。

そして…


「や…やめろ…やめてくれ…命だけは、命だけは助けてくれ!」

「おう、洗いざらい吐いたら考えてやるよ。みゆき、やっちまえ」

「あいよ」


(ここから先の拷問の描写については読者の想像に任せます)


そして、拷問の末に…

「アアアアァァッー!!!!!」

十河の悲鳴が地下4階にこだまする。


「死んじまったか?」

「大丈夫。殺してはいない」

「そうか。じゃあ、次の作戦だ。急ごう」




ダンジョンの外れの県道

中根はヒッチハイクの車を探していた。

すると、一台の車が停まった。

豊田ナンバーのミニバンだった。

「すみませんが、名古屋まで乗せてくれますか?」

「いいよ。俺ら豊田まで行くから」

と、運転手は素直に快諾した。

「どうもすみません」

そして、中根が後部座席に座り、車が動き出す。


「よう」

と、祐介が中根に拳銃を突きつける。

「しかしてめえが裏切り者だったとはな。うすうす感づいていたけど」

「いつ分かったの?」

「最初の時だよ。あんたはやけに表情を出さないようにしてた。最初は忍者らしさを出すためかと思っていたが、違和感を残すには十分だったよ」

「でもそれだけじゃ…」

「まだあるよ。あんた三重に向かう車の中で一言も話してなかった。あれは聞き耳たてるにはいい作戦だが、不自然すぎた。だから途中でカーラジオの音量を上げたのさ。もっとも、あれはみゆきの差し金だけどね」

「ヤッホー」

と、みゆきが小さい声で返事をする。

「あとはみゆきに任せるよ」

「ユウスケに言われるまではあなたに違和感は抱いてなかった。でも、よくよく考えたら、本社で私がナイフを出したとき、あなたは表情一つ変えなかった。さすがプロね。でも、三重についてからあなたは油断した。忍者は尾行の巻き方を知っていて当然だと思ったのに、あなたは私の尾行に一切気付いてなかった。そして、あなたに会っていた男、あれ、盗賊団のリーダーじゃない。問い詰めたら素直に話してくれたわ。あなたが暗躍して、かつ、自分は安全圏にいるってこともね」

あれだけの拷問をしておいて素直に話したとか言うんじゃねえと、祐介が心の中でツッコミを入れる。

「満足だった?自分のいたギルドをつぶせて」


「自由になりたかったの」

と、中根は語りだす。

「もともと私の家系は頭領の家に仕える忍者だったの。頭領の先祖がまだ殿様だったころからね。今でもそういう関係だから、自由もなかった。兄さんが生きていた頃は、私もそれなりに自由に動けて、横浜の小学校で教職実習もして、あともう少しで先生になれるってところで、兄さんが死んだの。だから私が家を継ぐことになった。それからよ、私が頭領に憎しみを抱き、この家を恨んだのは」


「だからって自分の所属するギルドにこういうことをしていいわけじゃないだろ。頭領がどういう思いで俺らに頼んだと思っているんだ」

「さすがに頭領を殺すのは気が引けたわ。主君殺しは大罪だし、何より私に利点が無い。だからね、こんなギルドめちゃくちゃになればいいって思った。潰れればまた自由になれるって思ったけど、現実はそんなに甘くないわね」

「お前がどうあれ、俺はこのことの顛末をいったん社長に話さなきゃならん。処分が決まるまで、みゆきと行動を共にしてもらう。言っとくが、逃げようなんて思うなよ。みゆきは本当に強いぞ」

「万が一の時は、わたしが全ての責任を持つ。逃げたら捕まえて拷問してもいいんでしょ」

と、みゆきが言う。

「そうだな、従順になるまでしつけるくらいまでならいいよ」

そして車は名古屋へ向かった。



名古屋市内

某高級ホテル

偶然にも社長が名古屋にいたため、東京に戻る必要はなかった。

「社長、今回の一件の首謀者を連れてきました」

「そうか、やっぱりあの忍者が一枚噛んでいたか。とりあえず山本さんは中根さんを連れて隣の部屋に行きなさい」

と言い、部屋には社長と祐介が残った。


「お疲れ様。まさか3日そこらで終わるとはね」

「あの資料と、薬師寺さんは社長の差し金ですか?」

「いや、僕は秘書に命じただけさ。別動隊の子に封筒を渡すようにね。そしたらたまたま、薬師寺さんが来た。あとは君の想像に任せるよ」

「借りが出来ちゃいましたね」

「貸し借りの問題じゃないさ。それに、私が名古屋に来たのはあくまでも別件のついでだ。ところで、雨谷君」

「はい?」

「山本さんにも、いつか解決しなきゃいけない事ってあるのかな?」

「唐突にどうしました?」

「あの子、突然日本に来たって言ったでしょ。もう両親も亡くなったというのに」

「その件ですか。あいつはまだ殺し屋稼業から足を洗ってないんです。だからいずれいなくなるって言ってました」

「そうか。君はもう知っているかもしれないが、君の父と山本さんの父は古い友人だ。私ともそれなりに関わりもあった。だからね、雨谷君、もしも山本さんに何かあったら必ず私に伝えてくれ。私の古い友人の娘を見殺しにでもしたら、そいつに顔向けできないからね」


翌日

社長と俺と山部は頭領のもとへ向かった。

社長が頭領と話をしている最中に、頭領が心臓発作で倒れたと聞き、急ぎ救急車を呼び、病院へ向かった。

緊急手術が行われたが、手術の甲斐なく頭領は亡くなった。

その為、法定相続人を呼び、遺産相続と今回の依頼料の件について話し合うことにした。

また、この件と付随するように、中根さんの引き抜きも決まった。

そう、この事件の真相は闇に葬られたのである。

俺は速やかに名古屋にいるみゆきと中根さんを呼びつけた。

中根さんの所有する不動産を全部引き払ってもらうために。


それから1週間後。

みんなはいつもの生活に戻った。

野上、池永、菅野の3人は少しの間ダンジョンから離れるらしい。また気が向いたら戻るだろう。

薬師寺はまた放浪に出た。修行が足りないと言い、大学時代の知人のいる東北へと旅立った。

三木は相変わらず自由に生きてる。今度は兄さんのところにいくらしい。

山部は本社の仕事が溜まったからと言い、企業内弁護士の仕事に戻った。

森田は誘われなかったため「水臭いな、雨谷くん。私を誘わないなんて」と言った。知らない奴は気楽でいいね。

もちろん詳細は闇に葬ったので言うつもりはさらさらない。



「終わったかい、山部さん」

「ええ、終わったわ。振込も確認した」

「いろいろあったけど、万事OKかな」

「もっと感謝しなさいよ。私がいたから、こういうイレギュラーな事態も速やかに解決できたんだから」

「もちろん感謝してますよ。この後飲みに行こうか。西武園のバーへ」

「あんたのおごり?」

「たわけ。自分の分は自分で払いな。弁護士先生」

「手厳しいのね」

「あんたほどじゃないけどね」

そういうと、二人は談笑しながら西武園に向かった。


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