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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第4章
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第60話

半年以上お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

薬師寺家本家。

薬師寺敏夫と望月貴雄が話し合っていた。


「何!BC兵器だと?」


「正確には細菌兵器です。第二次世界大戦中にナチスドイツが不利な戦局を打開するために開発された兵器で、日本の沖縄にひそかに運ばれた分も含めてすべて回収されたと思われていたのですが、高熱で焼却しないと完全処理できないので、高温の炉のある沖縄の科学兵器研究所に運ばれる最中に、黒靴の会に奪われたものとみられます」

と、貴雄が説明する。


「黒靴の会の連中が沖縄に乗り込んだとみていいってことだな」


「問題はその細菌です。奪われた細菌の量は10ガロン、約37.8kgですが、それでも使い方によっては、億単位の人間を楽に殺せる途方もない兵器です。潜伏期間なし、吸い込めば即発病、抗生物質も全く効果なし。ワクチンの開発は現在大急ぎで行われていますが、現在のところ死亡率100%です」



翌日

警察庁本庁地下

情報調査局


「さて、先の細菌兵器強奪だが、今のところうちは動けない。米軍のほうもあまり()()()()にしたくないらしい。本庁とインターポールは引き続き極秘裏に捜査する」

と、局長代行の原田が言う。

「誰がやったか分からないうちは、下手に動けないから仕方ないな」

紫原がそうぼやいた時、電話がかかってきた。


「はい。警察庁情報調査局でございます」

「特殊事件捜査室の喜多川です。原田局長代行はおりますか」

「はい。少々お待ちください」

そういうと、乙坂は電話を保留にした。

「原田さん。お電話です」

「どちら様?」

「特殊事件捜査室の喜多川様です」

「そーらおいでなすった」

原田は意気揚々と電話を取る。

「お電話代わりました。原田でございます」


数分後…

「乙坂、紫原。お前たち明日から鹿児島に行ってくれ。今回の事件には黒靴の会が関わっていることがわかった。すぐにだぞ」


一方その頃、薬師寺家では。

非常呼集がかけられ多くの直参の幹部やその代理などが集まっていた。


「我々が、今やらなければならないことは、細菌兵器の奪還と処理だ。アメリカ政府に恩を売るのもいいが、それよりも最優先すべきは、うちの大口のクライアントが狙われているということだ。気を抜くな」


会議がつつがなく終わったところで、奈央のスマートフォンに連絡が入った。

「薬師寺さん、今お時間大丈夫ですか?」

連絡をしてきたのは社長の秘書だった。


「はい。大丈夫です」


「社長から緊急の要件です。ロバート・ムーアという人物について調査してほしいとのことです」


「かしこまりました。ちなみに、武蔵協和銀行やその系列の会社の顧客情報はお調べになりましたか?」


「武蔵協和の系列の金融機関のネットワークをすべて洗い出しましたが、ロバート・ムーアなる人物の口座情報はなし。クレジットファイルも存在しません。もちろん顧客情報にもヒットしません」


「わかりました。大急ぎで調べます」

通話終了後、奈央のスマホにロバート・ムーアの画像が送られてきた。

画像から分析できたのは顔は髭面で、もみあげが髭まで繋がっている。髪は赤茶色、中肉中背で推定年齢は40代前半か30代後半くらい。


「なんということだ」


奈央はすぐに社長に連絡を入れた。




その日の夜、祐介の自宅に奈央が押しかけていた。


「祐介、みゆき、夜分遅くにすまないな」

「薬師寺さん、俺からも話がある。俺はこの依頼、後方に転進する」


転進とはいわゆる撤退である。薬師寺家において撤退の言葉は基本的に用いない。


「そうか。もはや何も言うまい。私は今回はお前ら2人にこの仕事から手を引く権利があると告げるために来たんだ。だから、この任務は私一人でやる」


「ナオだけには任せられない」

そういうと、みゆきは1枚の写真を出した。

写真の人物はロバート・ムーアだった。


「この人は以前、私がいた組織のあるチームを壊滅に追い込んだ工作員。相当な強者というのは確か。5人1組のチームが皆殺しにされた」


「なんともはや」


「昨日、城南ファイナンスに強盗が押し入って副社長の金田正輝が殺され、現金およそ2800万円が奪われたって事件は知ってるだろ?その時の手口がそっくりだってみゆきが言ってるんだ。だから連れて行ってやれ。どうせみゆきの有給は余ってるし、上司も…」


その時、祐介のスマートフォンに電話が入った。

社長からである。

「雨谷です」

「今、みゆきくんと一緒かい?」

「一緒ですよ」

「悪いけど明日から鹿児島に行ってくれ。2日ほど前、武蔵協和クレジットの鹿児島支店長が何者かに殺された。その死に方が、昨日起こった城南ファイナンスの副社長の殺しと同じだ。鹿児島への出張を命じるので速やかに支度をするように。あと数分でうちの秘書が迎えに行くから」

そういうと、社長は電話を切ってしまった。


「薬師寺さん、社長からの電話、あなたの差し金ですか?」


「さあ?どうだかね。ただ、お前はこれで引くことができなくなった」


「転進は変わりませんよ。だがそれはあくまでも最前線でドンパチをやらないという意味です。俺には俺の戦い方があるんです」


「じゃあ危なくなったら逃げろ」


「心得ております」


様々な陰謀渦巻く戦いの舞台は、九州へと移った。



つづく

当分の間、お休みさせていただきます。


理由としては本業が忙しくなったことや、予想以上に二次創作小説の需要が多く、この作品にまで手が回らなくなったというのが大きな理由です。


ですが、打ち切りにはしません。

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