第6話
前回までのあらすじ
社長のもとに舞い込んだ盗賊団退治の依頼。
祐介らはしぶしぶその依頼を受け、埼玉から伊賀上野までの長い道中を車で移動した。
9:25
伊賀協会
被害総額などが書かれた書類を見て祐介が唖然とする。
「しかし、ここまでひどいとはね。わかっている被害総額だけで600万円以上だ。ここまで放置してからうちに依頼するなんてどういうつもりですか?横にいる弁護士の方も何も言えませんよ」
やけに偉そうにする祐介が山部を見てから
「これをはした金で請け負うわけにはいかないってことはご承知ですよね?もしも、不払いということになれば、我々は地の果てまであなた方を追いかけますからね。もちろん法的措置も取りますから」
「わかっている。我々の中に裏切り者がいるのは先方も承知だろう。頼む、裏切り者を懲らしめてくれ」
口を閉ざしていた頭領が祐介らに頼み込む。
「お任せください。契約は守ります。ただし、今回の被害総額の件が我々に伝わってなかった件も成功報酬に算入しますから」
「お願いします」
「それでは失礼いたします」
祐介らは伊賀協会を後にした。
「さて、諸君、車に戻ろう。それと、中根さん、少しの間情報集めに動いてくれませんか?報告は明日で構いませんので」
と、祐介は中根を車から遠ざけた。
車の中にて
「さて、ここからは調査に移ろう。君等には黙っていたが、別動隊を頼んである。我々のベースはこの街ではなく、隣町にする」
「どうして隣町なの?」
と、山部が口を挟む。
「依頼者のギルドに裏切者がいる以上、この街でおおっぴらに動くのはまずい。近隣のギルドの団員からも手広く情報を集める必要がある」
「なるほど」
と、山部がうなずく。
「そこで、いくつかのグループに分けて、情報集めをやっておきたい。とりあえず、今日は別動隊との合流優先で進めよう」
「別動隊はどこにいるのかしら?」
「亀山のはずれにある山荘にいる。ここがキャンプ地となる。さて、キャンプ地へ向かおう。山部さん、運転は頼んだよ」
そう言うと、祐介らは車を運転し、亀山の山荘へと向かった。
「そういえば、中根さんを別行動にしたのはなぜ?」
「誰が裏切り者かわからないうちに、こちらの手の内をさらすのは良くない。相手の人数が何人かわからないのに下手に動いたらやられるだけだ」
「まさか中根さんが裏切り者とでもいうの?」
「そういうわけじゃないけど、100%こちらに味方するという確証も無いんだ。後ろから弾を撃たれちゃ戦いにならん」
「そう。みゆきはどう思う?」
「ユウスケの言う通り。誰が敵か味方かわからない以上、下手に動くのは危険。慎重に行きましょう」
――――――
「今回も余裕そうだな」
「油断するな。向こうが用心棒を雇ったそうだ。前とは一筋縄じゃいかんぞ」
「まあ、相手がどんなのでも、俺らに敵なんかいないっすよ。枯渇するまで荒稼ぎして、危なくなったら逃げだせばいいんだから」
このときはまだ、彼らは知る由もなかった。敵に回してはいけない人を敵に回していたことに…
つづく