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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第4章
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第53話

薬師寺家別宅

奈央はミシェル、みゆき、ミシェルの専属運転手を呼びつけていた。

専属運転手のタタリーは車で待とうとしたが、ミシェルにより、同席を求められ、奈央から同席を許されていたのだ。


「ミシェルさん、あなたは「黒靴の会」という名前に聞き覚えはありますか?」

「ええ。それがどうかしましたか?」

「あなたの命を狙う組織です」

「やはり、そうでしたか」

「なぜ、教えてくださらなかったのですか?」

奈央が少し不満そうな顔をする。

「証拠もないことで外交問題にするのは、私たちにとってプラスではございません。そして、私どもは一切の証拠をつかめませんでした」

「古くから王室が関与していた事案とはいえ、なぜあなたがたの国の暗部がお家争いに関わらなければならない理由を、お聞かせ願えませんか?」


「それは、私から言いましょう」

と、タタリーが出てくる。

「じい」

「我が国の国王は96歳。しかもここ数年は病で王宮から一歩も出ていません。第一継承順位の方は72歳で半年前から入院中です。第二順位の方も69歳でしかも余命いくばくもない状況です。第三順位の方は49歳。で、本来なら第一継承順位にあたる方が執権を務めるのですが、このような状況ですので、摂政のサトル・ハリがこの国の政治を手中に収めてしまいました。私たちは第三順位の方、すなわち国王の孫にあたる方と手を組み、サトル・ハリを失脚させるために動きました。しかしながら、サトル・ハリは手強い方でした。まず、国王の孫を在オーストリア公使という形で軟禁状態に置き24時間監視状態にしたのです。このままではラチがあかないと踏んだ我々は、私の義理の息子達をはじめとした勇気ある若者たちを主体に決死隊を作り、黒靴の会から証拠を得ようとしました。しかし、それが敵の罠だったのです。敵の襲撃により私たちは散り散りになり、私たちはかろうじてお嬢様だけを逃がしました。幸いにも、中東の某国にプライベートジェットを回していたのでそこまで逃がして日本に行くというプランは無事に成功しました。ですが、もう手遅れでした。黒靴の会は、ハーデル国の大統領暗殺に成功しました。それは、王族の親衛隊がやったかのように見せかけたのです」

「じい。滅多なことを言うな」

「ですが、このままでは、王族がやったこととして扱われて、全員皆殺しですぞ。そうでなくとも、ハーデル国と我が国は一千年もの昔からの敵。大国の代理戦争にでもなったら、地獄ですぞ」


「なるほど、話はよく分かりました。敵もなかなか尻尾を掴ませてはくれないし、この情報もひょっとしたらミシェルをおびき出すための敵の罠かもしれません」

奈央は落ち着きながらいう。

「だとしたら、どうすれば」

と、タタリーがいう。



その時、祐介が入ってきた。

「失礼します。ただいま到着しました。一体何があったんですか?」


奈央は祐介にことのあらましを話す。


「そうですか。私に何ができるか言ってください」

「祐介は、社長にこれを渡してくれ」

そういうと、奈央は祐介に書状を渡した。

「わかりました」

祐介は書状をもらうと、すぐに立ち去っていった。


「ナオ。頼みがある。ユウスケはできる限り、安全な場所に居させてほしい。ユウスケが今回の依頼で戦うのは厳しいだろうから」

と、みゆきがいう。

「心配するな。あいつには戦わせない。それに、あいつの逃げ足はうちの直参の連中より速い。危なくなったら適当な言い訳をつけていつの間にか安全圏にいるから。昔からあいつはこうなのよ」


「そう。ならいいんだけど、ユウスケはなにかと巻き込まれがちだから」

「それは、私たちにどうにかできる問題じゃないからな。とにかく、やらなきゃいけないことは「黒靴の会」の殲滅だ。黙ってても奴らは攻めてくる。だから、ミシェルたちには当面の間ここに逗留してもらいたい。ここならしばらくはしのげる」


その瞬間、防犯システムの警報音がけたたましく鳴り響いた。


それとほぼ同時に内線電話もかかってきた。

奈央は内線電話を取る。

「何事だ」

「侵入者です。メイド隊が対応にあたってますが、相手はかなりの強敵です」

「相手は何人だ?」

「3人です」

「絶対に部屋に近づけるな」

奈央は受話器を置いた。


「小橋川、ミシェルとタタリーを逃がせ」

「承知しました」

そういうと、小橋川は隠し通路にミシェルとタタリーを連れて行った。


「ナオ、ユウスケは大丈夫かな」

「そんなことより今は目の前のことの心配をしろ」

「ハジキはある?」

「ねえよ。こいつを使え」

そういうと、奈央は大量の手裏剣を渡した。


「こんなブツでどうしろと」

「ナイフは在庫切れだ。手裏剣でどうにかしろ」

そういうと、奈央も手裏剣を用意する。

「風車付きの手裏剣だぞ。こいつなら要領はダーツやクナイと一緒だ」

「だからそういう問題じゃ」


「やい!そこに姫様がいることはわかってんだ!出てこい!」


「相手がそこの襖を開けたら私が手裏剣を投げつける。相手が万一生きてたらあんたの出番。手裏剣でどうにかしてね」


その刹那、3人の男が悲鳴をあげて倒れる。


「よう。無事か、ガキども」

襖を開けたのは、忍者装束に身を包んだ1人の忍者だった。

「あなたは…」



その頃。

乙坂らは前川の宿泊先で愕然としていた。

前川が殺されていたからである。


乙坂は局長代行に連絡をした。

「こちら乙坂、前川の死亡を確認。死後硬直の具合から見て、死後3時間は経過しているものとみられます。すぐに鑑識を呼んでください」

「わかった。とにかく現場保存だ。いいな?」

そういうと、局長代行は電話を切った。


「前川の背後関係を洗うしかないわね」

乙坂は肩を落としながらも、指示を出して前川の背後関係を洗うことにした。




つづく

次回もお楽しみに。

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