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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第4章
52/61

第51話

今回、祐介くんは出ません。

薬師寺家別宅

小橋川が奈央に報告をしていた。

「相手の実行部隊がわかったのか」

「はい。実行部隊は解散した倉田組の秋元ってやつの息子が率いる株式会社アキモトのチンピラどもです。秋元以外の全員に前科がなかったんで探すのには苦労しましたが」

「あの秋元か」


倉田組は、かつて薬師寺家傘下の戦闘組織兼暴力団八雲会と反目し、抗争では八雲会圧倒的有利で壊滅寸前だったにも関わらず、若頭の秋元が部下共々八雲会の組長の殺害に成功。その後、倉田組倉田会長が自身の組の解散で五分の手打ちに持ち込んだ過去がある。

なお、八雲会はその後殲滅作戦の際に実行部隊として動いたが、相手側の必死の抵抗で相打ちとなり、壊滅に至った。

(殲滅作戦時の始祖六家側の死者はそれぞれの本家合わせて20人ということになっているのだが、実際には傘下の戦闘部隊で多くの死人が出ている。どこの家もその点はぼかしているため全容はつかめていない)


「で、その会社、どういう会社だ」

「飲食店経営ならびに格闘技道場の経営です。最近はかなり資金繰りが苦しかったようで、今回のヤマに手を出したようです」

「一国の王位継承権者を暗殺したところで、その組織の連中は、約束の金を払わずに口封じとして皆殺しにするのが目に見えてるのに、そのチンピラどももヤキが回ったな」

「溺れるものは藁をも掴むと言います。これからどうします?」

「口封じされたり警察に自首される前にうちで身柄押さえるべきだな」

「とすると、アレでいきますか」

「アレだな」


その頃

薬師寺家本家

「ハーデル国の大統領が暗殺されただと!?」

敏夫はテレビのニュースに驚きを隠せなかった。

ハーデル国はヒプリ王国の隣にあり、ヒプリ王国とは対立する関係にあった。

「失礼します。当主様、出発のお時間でございます」

執事が敏夫に声をかける。

「そうか。悪いが、いつもの車の下などを隅々までチェックさせるように命じておいてくれないか」

「かしこまりました」

執事は困惑しながら部屋を出た。

「さて、それとなく外務省や武蔵のルートでも情報を集めることにするかな」

そういうと、敏夫は各所にメールを送った。



薬師寺家別宅作戦本部

「アキモトがこれまで手入れを受けなかった理由は、警察内部に内通者がいた疑いがあったからです。諸田さんの話だと、あえて泳がせ続けたとのことです」

「泳がせ捜査か」

「もう泳がせ捜査は不要です。内通者もろとも皆殺しにしましょう。このことの詳細は私とお嬢と諸田様にしか知らないように立ち回り続けることにしましょう」

と、小橋川がいう。

「一応、根回しはしておく。親父には姫様がらみの案件ということで言い訳する」




翌日

豊島区東池袋の雑居ビルの3階

株式会社アキモト 社長室

そこでは悪徳警察官の吉本と秋元社長が談笑していた。

「お前たちのような不良警官のおかげで我々がこうして生きられるんだから、感謝でしかないよ」

「そういえば、先程配ったまんじゅう、みなさん召し上がりましたか?」

「ああ、みんな甘いものが好きだからな。おい、吉本。さっきから時間を気にしてるが、どうしたんだ」

秋元は吉本の顔を見ながらいう。

「すぐにわかりますよ」

その瞬間、隣の部屋からチンピラたちの断末魔が一斉に響き渡った。


「おい、これはどういう…おぉぉぉ…」

秋元は胸を押さえて苦しみだす。

「みんなには毒入りのまんじゅうを食べてもらっただけさ。死体は、後ほどうちの組織が回収する。警察は永遠に来ないよ」

「そんな…バカな…」

「お前さんのは特製だ。死ぬまで時間がかかるぜ。さあ、話すんだな。とっておきのネタを」

「お前ら、薬師寺家だな…ということは…あの姫様がらみか…」

「今頃気づいたかマヌケ。お前の依頼主は誰だ?」

「それを知ってどうするんだ…」

「奴らを始末してやるだけだよ。これはもはや薬師寺家に喧嘩売った全ての組織を抹殺するための戦争ということに気づかなかったお前の落ち度さ」

「横浜の伊勢佐木町に外国人が出入りするクラブがある…そこのマッチ箱…」

と言った瞬間、秋元は事切れた。

しばらくすると、奈央と小橋川が入ってくる。


「これで、いいんですか」

と吉本が奈央に聞く。

「お前だって諸田家のアサシンどもには殺されたくないだろう。だからお前にはあらかじめ解毒剤を飲ませておいたんだ。警察官としての地位と名誉を失うことに比べたら、安いものだろう」

「まったくですよ。では、私は…」

その瞬間、悪徳警察官の吉本は倒れた。

脈を測り、瞳孔が開ききっていることも確認した。


「バカなやつめ。まんまと泳がされてたことにも気づかないバカな警察官を諸田が生かしておくわけないだろうが」

奈央はそう吐き捨てる。

「で、どうなりますか?二階級特進ですか?」

と、小橋川が意地悪く聞く。


「そうはならんよ。先日付で懲戒免職だ」

諸田が入ってくる。

「警察庁長官がこんなところで油売ってていいんですか?」

「おや、驚かんのか。まあ、今日は私は()()だからね」

警察庁長官に非番もへったくれもないだろという言葉を飲み込み、奈央は軽く聞き流した。

「で、これからどうするんですか。諸田家は」

「伊勢佐木町のクラブ「シャガール」のマッチ箱は押収した。情報調査局のほうでまず動くから、薬師寺家はその後で動いてくれ」

「わかりました。小橋川、帰るぞ」

奈央が小橋川を呼ぶ。

「はい。ですが、彼らの遺体は?」

「心配ない。諸田家が回収する。ですよね?諸田さん」

奈央が諸田のほうを向く。

「ああ。食中毒で全員死亡。たまたま来てた警察官が偶然発見したものの、事件性は無しということにしてやる。

諸田のその言葉を聞くと、奈央と小橋川は別宅へと戻った。


別宅に向かう車中にて

「気に食わんな」

「諸田家の対応がですか?」

「ああ。いくら最初に窓口になったからと言っても入れ込み過ぎだ。何か裏を感じるな」

「そういえば、大将から報告のあった人体発火の件、どこのニュースソースにもかかりませんでしたね」

「当然だろう。あの後私も調べたが、警察が意図して隠蔽してるわけじゃなくて、事件性を証明することができないという理由でニュースにならないだけだ」

2人とも黙り込んでしまった。

そして…

「明日、霧生家の奴らにあたってみる」

「わかりました。お気をつけていってらっしゃいませ」


その頃

「あの王女を消さないかぎり、私たちの計画は障害だらけね」

「おまけに、始祖六家も敵に回った」

「まずいことになったね。仮に王女を消しても、始祖六家は私たちを滅ぼしにかかる」

「万波の部隊がしくじったのは痛手ね。おまけに秋元の部隊との定時連絡もない。もうこれ以上の失敗は許されないわ」


「万波を消すってことですか?」

「そうするしかないわね」



ミシェルを守るもの、ミシェルを消そうとするもの。

双方の陰謀は着々と進んでいった。



つづく

次回もお楽しみに。

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