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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第4章
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第49話

雨谷の自宅

自宅前では奈央が待っていた。

「さて、昨日ちょっと話したが、広島から帰る新幹線の車内で薬師寺さんに連絡をした。ミシェルのガードのため、無理を言って変装術の先生に弟子入りすることになった」

と、祐介がいう。

「まあ、この祐介(バカ)だけの頼みなら断るところだが、社長や親父がいいと言ってくれたし、宮田先生も暇してるから問題はないよ」

奈央は笑って応えた。

「宮田先生ってのは、変装術の先生だ。俺も昔手ほどきを受けたよ」

と、祐介。

その後、奈央、祐介、みゆき、ミシェルの4人は黒塗りの高級セダンに乗って宮田先生のもとへと向かった。もちろん、黒塗りの高級セダンの運転手はいつもの童顔の女(27歳。第22話参照)だった。


「ユズ達から聞いたわよ。あんた、富岡海運の保険金詐欺事件にたどり着いてしまったんでしょ」

と、奈央が祐介に話しかける。

「ああ。本当は別件で…」

その瞬間、祐介は喋るのをやめた。

「どうしたの?」

「いや。社長もずいぶんと食わせ物だし、部下を使うのがうますぎるなって。いくらなんでもたまたまが重なりすぎだ」

「あら。いいんじゃないの。こういう偶然も」

「冗談じゃない。俺だって命を狙われてるんだ」

「幼少の頃から薬師寺家に関わってきた人間の宿命よ。諦めなさい」


1時間後。

車は屋敷の前に止まった。

少なくとも150坪はある屋敷である。

「ここよ」

奈央がそういうと、インターホンを鳴らす。

応答してから1分後、見た目50歳くらいの男性が現れた。

「宮田先生、お久しぶりです」

「おお、お嬢に雨谷くん、久しぶりだな。そこの女の子2人は?」

「山本みゆきとミシェルです」

奈央が横の2人を紹介する。

「山本みゆきです、よろしく」

みゆきは軽く頭を下げた。

「ミシェルです。よろしく」

ミシェルも軽く頭を下げた。

「そうか。話はお嬢から聞いとるよ。変装術の弟子入りだそうだな」

「そうです」

「他ならぬお嬢の頼みだ。断るわけにはいかん。ただ、変装術は一朝一夕ではないぞ。まずは、わしの弟子から基礎を学ぶこと。基礎、応用、実践の順だからな。基礎の講師を呼ぶからそこで待ってなさい」

そういうと、宮田はみゆきとミシェルを部屋に通す。

「では、私たちはこれで」

奈央と祐介は帰ることにした。

「ありゃ、もう帰るのか」

「こちらでもいろいろありましてね。あとのことはよろしくお願いします」

「わかった。困った時は自分一人で解決しようとするなよ。わしらもついてるんだからな」

「お心遣い感謝します」

奈央がそういうと、祐介とともに車に戻った。



車中にて。

「お前、残らなくてよかったのかよ」

と、奈央が聞く。

「私も忙しいですから。それにミシェルにはみゆきがついてます。何かあってもみゆきなら対処できるでしょう。それに、薬師寺さんはずいぶんといい部下をお持ちのようで」

と、祐介がいう。

「相変わらず口だけはうまいんだな。お前は。おだてたって何も出ないぞ」

と、奈央が軽く笑う。

「おだててはいないよ。それはそうと、私はこれから新宿に行くんだ。どこか近くの駅にでも降ろしてくれないかな」

「はいよ。八王子駅でいいだろ」

「助かります。おっと、電話だ」

そういうと、祐介は電話を取る。

「はい、雨谷です」

「久しぶりだな、祐介。今日の夕方、神宮球場で野球を見ないか?」

電話の相手は大将だった。本名は黒田憲弘。

親分肌の戦闘員で、多くの人からの信頼が厚い人物。

別名を鬼殺しの大将という。

「いいですよ。このあと、新宿に行って注文していたスーツを受け取りに行くところなんです。何時に合流しますか?」

「じゃあ午後6時前に1塁側の3番入口のところに来てくれ。お前のことだからどうせ試合開始に間に合わせるだろう。着いたら連絡してくれや」

そういうと、大将は通話を終えた。

「誰から?」

奈央は、祐介にきく。

「大将」

祐介は素っ気無くいう。

「あの野球バカか。どうせ野球の誘いだろ。ちょっと待ってろ」

そういうと、奈央は何かの文章を書き始める。

書き終えたらそれを折り紙にして祐介に渡した。

「祐介、こいつを大将に渡してくれ」

奈央が祐介に折り紙を渡す。

「わかりました」

何が書かれているかは見ないほうがいい。祐介はそう思いながら、財布の札入れにそっと折り紙をしまった。


八王子駅

奈央が祐介を車から降ろすとすぐに車に乗って去ってしまった。

祐介はまず新宿に行き、スーツを受け取ることにした。



その頃

「ユウスケも帰っちゃったね」

「そうだね」

「まさか泊まり込みとは思わなかったね」

「だから奈央さんが着替えを持って来いって言ったのか。用意周到だこと」


「ミシェルに山本、無駄口を叩く前に手を動かせ」

変装術基礎の講師が注意を与える。

メイクも変装術の基礎の基礎である。



17時30分

明治神宮野球場1塁側3番入口

「祐介、ここだ」

大将が祐介を呼び止める。

「大将。いつ着いたんですか?」

「ついさっきだ。その袋は?」

「スーツですよ。あと、奈央さんが大将にって」

そういうと、祐介は財布の中から折り紙を渡す。

大将は無言で折り紙を広げる。

しばらくして…

「さあ、そろそろ入ろうじゃないか。試合開始前は混むからね」



つづく

次回もお楽しみに。

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