第5話
俺達は車で一路三重に向かっていた。
助手席に座っていた中根さんは後部座席で寝ており、代わりにみゆきが助手席に座っていた。
「なあ、後ろの2人は寝たか?」
「寝たわよ」
「そうか」
と、祐介とみゆきが会話を始める。
「しかしお前も危ない橋を渡るんだな」
「どうして?」
「ああいう世界から足を洗うなんてことだよ」
「ああ、それね。実は休業扱いなんだ。だから、いずれケリをつけるよ」
「それならいいけど」
「それと、聞きたいことがある」
不意を突かれて、祐介は少し驚く。
「なんだい?山部のことか?」
「違う。カオリのこと。あの人は私に隠し事をしてる」
「そうかい?あいつが隠し事できるようには思えないけど」
「嘘は良くないわ。なんなら、私がアメリカで仕込まれた尋問術を発揮してもいいけど」
と、みゆきが脅す。
「仕方ない。このことは絶対秘密だからな」
「わかったわ。話してちょうだい」
「その前に、お前がまずオカルトをちょっとでも信じるか信じないかだが、お前は信じるかい?オカルトは」
「ちょっとくらいならね。でも本気では信じないわ」
と、みゆきが冷ややかな返しをする。
「普通はそうだな。ということで、ここからの話は話半分で聞いてもらいたい。魔術師が存在するのは知ってるよな?」
「ええ、ほとんどがエセでしょ。本物はイギリスにしかいないって聞いたことあるけど」
「そうなんだが、ごくまれに日本人でもそういう因子のあるものが産まれることがあるんだ。社長の話だと、ウェールズに行ったことがきっかけで覚醒したんじゃないかって話だが、俺にもそれ以上のことはわからない」
機密事項が混じることなので、詳細は祐介にも知らされていないのであった。
「そう。つまり、香里が魔術師かもしれないってことね。わかったわ」
と、みゆきは素直に納得する。
しばらくすると、みゆきも寝てしまい、祐介はカーラジオで深夜番組を聞くことにした。
そんなこんなで車は新東名、伊勢湾岸道を過ぎ、三重県に入り、東名阪道御在所サービスエリアへ。
ここで祐介はみゆきを起こす。
「みゆき、もう着いたぞ」
「ここは?」
「御在所サービスエリア。後ろの2人を起こしてやってくれ。俺はコーヒーを買ってくる」
そう告げると、祐介はコーヒーを買いに行ってしまった。
―――
祐介が戻ると、後部座席で寝ていた2人が不機嫌そうな顔で睨んでいた。
「コーヒーでも飲むかい?」
と、祐介が聞く。
すると2人は無言でコーヒーをひったくるように取っていった。
「怒らせたかな」
と、みゆきに聞く
「不機嫌なだけよ」
「まあ、寝起きだしな」
そう話すと、二人で後部座席に座った。
車は御在所サービスエリアを出て、伊賀上野へ向かう。
しばらくして―――
「着いたわ」
と、中根に起こされる。
どうやら運転の疲れからか眠ってしまっていたようだ。
眠っている間に伊賀上野に着いていた。
これからどうなるのだろうかという不安を抱えながら、祐介たちは伊賀のダンジョンに向かうのであった。
つづく
ご愛読ありがとうございました。
更新ペースは遅いですがまだまだ続きます。
実はこの作品、武蔵側の未登場のキャラも多数いるのですが、作品構成の都合上少なくともこの章では出ません。
気長に待っていてください。




