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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第4章
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第41話

久しぶりの更新です。お待たせしました。

奈央と小橋川は、ミシェルの護衛を武装メイド隊に任せ、ひとまず薬師寺家別宅に戻ることにした。


車中にて。

「小橋川、今回の件で万一のことがあっては面倒だ。よって、特戦隊を結成する」

「特殊作戦部隊ですか」


薬師寺家にはいくつか特殊作戦部隊がある。常設の部隊もあれば、必要に応じて結成される部隊も存在し、その内容および構成はそれぞれの部隊ごとに異なる。


「私は、このホテルが安全とは思えないんだ。相手が日本人の殺し屋を用意する可能性は否定できない。今回の件は他の始祖六家の連中も知ってるが、念のためだ」

「移動ですか」

「そうだ。だが、襲われる可能性は極めて高い。そこで、移動の際に特殊作戦部隊で警護をする。いざとなったら、私たちの出番だ」

「そうすると車が必要ですね。どうしますか?」

「防弾車はうちの絡みでどうにかできるとしてもだ、乗り気じゃない警察庁情報調査局まで巻き込むのは良くない。それに、画像データのこともある。この件で国際指名手配を頼むにしても無理がある」

「そうですね。この活動家連中、国際指名手配されたとしても、密入国しかねませんよ。ましてやヒプリ王国の現政権を傀儡にしてるから、外交官などになりすまして公然と上陸されたら厄介ですよ」

小橋川が肩を落としながらいう。

「相手が表に出てくれば始末もできるが、相手がどこにいるかもわからないとなれば、雲を掴むような話だ」

「そうですね」

「とりあえず諸々の手続きについては山部弁護士に任せるとしても、問題は警護だ。ミシェルは要人とはいえ一般人扱いだ。下手に警察を介入することはできないし、警察内部にも裏切り者がいないという確証はない」

「一度諸田家に話を通すべきでしょうね。この事案は」


その頃。

最上階スイートルーム

電話が鳴ったため、ミシェルは受話器を取る。

「はい」

「フロントのものです。お電話をお繋ぎしてもよろしいでしょうか?」

「どなたから?」

「タルト・タタリーと名乗ってますが」

「そう。つないでください」

ミシェルの部隊はそれぞれの隊員が偽名を用いている。お菓子に因んだものから、故郷の名前まで様々。


「お嬢様、ご無事でしたか」

「じい、私はもう王族にはいないことになっているんだ。じいを巻き込むわけにはいかない」

「私はお嬢様の執事です。クビになった今でもお嬢様のために命をかけます」

「じい、クビになったのか」

「お嬢様が日本に逃げたことで摂政のサトル・ハリに怒られてクビを言い渡されました。私はもう妻に先立たれ、娘はアメリカで亡くなりました。失うものはありません」

執事は、うなだれながらそう言った。

「わかった。ちょうど今度始める予定の会社に秘書がいないんでな。ついてきたいならついてこい。ただし、しばらくは会うな」

「じいは心配でたまりません」

「我慢しろ」

そういうと、ミシェルは電話を切った。

「さて、いろいろと動き出しそうだな」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

3年前 福岡 玄界灘

「よし、ここまでくればこいつは用済みだ。おい、海にぶちこめ!」

今にも海に沈められそうな薬師寺家の戦闘員。しかし…

「おい、あれはなんだ!?」

彼らの目の前には大量の漁船が襲来していた。

そしてものの2分もしないうちに、彼らの乗った船は完全に包囲された。

彼らの親玉はバフォメットという悪魔。両性具有の生物ゆえ、サキュバスからは継子(ままこ)のごとく嫌われているのである。

「1人たりとも生かすな。海に沈めろ」

その命令と同時に、バフォメットや戦闘員に向けて何発もの弾丸が撃ち込まれた。しかも拡張弾頭である。

このような弾丸はダムダム弾と呼ばれ、人体命中時に容易に変形・分裂し、大きな損傷を与えることから、ハーグ陸戦条約により厳しく禁止されている。

激しい戦闘ののち、薬師寺家の戦闘員を救出。

バフォメットの乗った船は爆破されて海の藻屑となった。

むろん、多数のバフォメットや相手の戦闘員の死骸とともに。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「また、嫌な夢を見ちゃった」

そう言いながら水野は目を覚ます。

サキュバスは人間とは対立しないが、悪魔とは対立する。ゆえに数多くの修羅場を掻い潜ってきたが、多くのサキュバスは戦闘に不向きである。

『私は満たされない。全てを手に入れたとしても、そこに愛がないから』

というのがいつからか口癖のようになっていた。

水野は不死の呪いにより、どんなに愛していようと愛する相手が先に死んでしまい、辛い思いを幾度となくしてきた。

薬師寺家には大恩があるが、その関係はあえてドライなものにしてきた。情を注ぎすぎると、いざという時に辛くなるからである。



薬師寺家別宅に戻った奈央と小橋川は、水野とともに特殊作戦部隊の召集を行った。

何しろ、急な話だったため、選抜には難儀したものの、それでも水野が推薦した影武者兼戦闘員3名を加えた12人が集まった。

「12人も集まれば大丈夫でしょう。とりあえずプラン通りなら3台ほど影武者用車両を用意できます」

「そうだな。雨谷くんをまた巻き込むことになったが、うちの戦闘員並みかそれ以上の生命力の強さなら大丈夫だろ」

「そうですね。しかも水野さんのお気に入りですから」

「その水野さんは、また拷問に戻ったのか」

「はい。なかなか口を割らないんで苦心してましたが、必ずなんとかするって言ってました」

「そうか」

そういうと、奈央は自室に戻った。


その頃

祐介宅のポストに猿のおもちゃが当たる。

「誰だよこんなもん投げ…」

猿のおもちゃの口には紙が巻かれていた。これが薬師寺家のものであるのは間違いなかった。

薬師寺家でもこのようにローテクを用いるのは盗聴や電子メールの傍受を防ぐためという意味合いもある。

「なに、これ」

と、みゆきがいう。

「薬師寺家の特命書だ。なになに『明日の午後6時に六本木の武蔵ホテル六本木の地下駐車場にみゆきと一緒に来い。詳細は追って話す。N なお、例のごとくこの文書は必ず焼き捨てること』」

と、祐介が読み上げる。

「ずいぶんと勝手なのね」

「特命書は本物だ。薬師寺家、それも薬師寺奈央本人の花押(かおう)が押されてる。というわけで俺は明日、そのホテルに行く。みゆきも来てくれるな」

「もちろん」


いろいろと渦巻く陰謀に巻き込まれていく薬師寺家や雨谷祐介、山本みゆき。ミシェルの祖国を巻き込んだ巨大な勢力とはなんなのか。

祐介らの運命やいかに。


つづく。

筆が進まないとペースが鈍くなります。申し訳ありません。いろんな作品を見て思うことは、いい作品のためにはいろんな作品を見てインプットすることや、それを踏まえて作者自身がそれを自分なりにアウトプットするため、日々精進しなければならないということを改めて実感します。

次回もお楽しみに。

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