表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第4章
41/61

第40話

前回までのあらすじ


ヒプリ王国第四位王位継承者だったミシェル王女は王籍を捨て、留学とビジネスのために日本へ訪れた。

しかし、ミシェル王女は命を狙われている身であるため、ひとまずは六本木の武蔵ホテル六本木の最上階のスイートルームに逗留することとなった。



武蔵ホテル六本木最上階スイートルーム

ミシェルと広田社長、社長が連れてきた宝石鑑定士、武蔵協和銀行の山下常務取締役、同行六本木支店の達川支店長の合わせて5名による商談が行われた。

武蔵協和銀行の2人が来た理由は口座開設の手続きのためである。

武蔵協和銀行はヒプリ王国で日本の銀行の海外支店を開設している唯一の銀行で、山下と達川の2名はヒプリ王国の首都ヤナークにあるヤナーク支店の支店長と営業部長の関係にあったこともあり、交渉がスムーズにいきやすいだろうという判断のもと、広田が送り込んだのである。

宝石の類合わせて34点は広田が7億2千万円で買収することが決まった。宝石鑑定士は上物の宝石を見て腰を抜かしたり子供のように目を輝かせたりと表情豊かに驚いていた。

一方、武蔵協和銀行の山下常務取締役と達川六本木支店長は口座開設手続きと宝石の売却利益の7億2千万円のうち、社長が手付金としてキャッシュで持ってきた2千5百万円を弾いた分の6億9千5百万円を口座に入れる手続きを行った。

手続きは比較的シンプルなもので、手続き書類へのサインで終わった。武蔵協和銀行は新規口座は印鑑を不要としているため、印鑑は必要なかった。

山下常務取締役は金融商品のセールスも行ったが、ミシェルは「必要があればその時に六本木支店にお伺いいたします」と丁重に断った。


商談が終わってすぐ、外で待っていた奈央と小橋川は部屋に入ってきた。

「商談は終わりましたか?」

と、奈央が聞く。

「ええ。なかなかのものでしたよ。あの社長、わかってらっしゃる」

と、ミシェル。

「それはそれは。ところで、大学の学費の類いは?」

「すでに入金済み。入金確認の領収書もある。ヒプリ王国の銀行からの入金だったから、時間はかかったがな」

そういうと、ミシェルは領収書を出した。

「そうか。これは失礼した」

「あんた、読めるのか?この字が」

「これでも表向きは通訳だからね。とは言っても、ちょっとだけだけど」

「なぁんだ」

「ところで、うちもそういう組織なんで、あんたのこともそれとなく調べさせてもらったが、なんであんたは、あの王国から逃げようとしたんだい?」

と、奈央がきく。

「ヒプリ王国は、破滅したわ。ある組織によってね」

ミシェルは、そういった。

「破滅?破滅ってどういうことです?」

と、奈央が疑問を浮かべる。

「簡単に言うと、今の国王と第一王位継承者はある組織の傀儡になったってところよ」

「なんということだ。で、その組織、わかるのか?」

と、奈央がきく。

「わからないね。だから、証拠集めは必死だった。敵もシッポを掴ませてはくれないから、なかなか大変だったよ。まず、私に忠誠を誓う連中を選抜するのが大変だった。そしてそこから情報を手に入れる。そしてまとめた情報は私の生体情報を認識させないと起動しないパソコンと、私が持つフラッシュメモリと左足の小指のQRコードに収めた。敵さんは私が命からがら逃亡した際にパソコンを破壊できて大喜びだったけど、まさか左足の小指にQRコードを仕込んでるなんて夢にも思わなかったでしょうね」

「お嬢様、ちょっとよろしいですか」

小橋川は話を遮るように、タブPCの画面を奈央に見せた。

画面には自動小銃を持つ髭面の男が映っていた。

「やはり。戦闘員の1人に中東の大物がいる。この男、タイガーっていう愛称と髭面以外の情報は謎に包まれているけど、かなりの実力者です。確か、うちの戦闘員も2人ほどこいつにやられてます」

「なんてこった。そんな切れ者の殺し屋を差し向けるとは、あんたの国を狙う組織ってのは、いったい何なんだ」

「ヒプリ王国にはダイヤモンドの鉱床があるってのは知ってるよね」

「ああ。とはいえ、それは30年以上前のことだろ?それがどうした?」

「問題は2年前に見つかった希少金属の鉱床よ。あれを巡って世界中からわんさかとスパイがくるようになった」

「あんたらの国は90年代半ばまでは自給自足で成り立つ珍しい小国だったから、西側にも東側にもつかない非同盟にいてもやってこれたんだろ?だから、半ば自業自得な面もあるだろ」


非同盟運動とは、東西冷戦期において西側や東側のいずれにも公式加盟していない国による国際組織のことである。エジプトのナセル、インドのネルー、ユーゴスラビアのチトーが立ち上げに関わったことから、独裁者クラブという別名もあった。


「まぁ、うちの国は西側寄りの非同盟だからね。うちの王家が通商とマスコミを独占してたおかげで、庶民の不満そらしはお手の物ってやつよ」

「鉱物資源豊かな国はそれでも生きていけるからね。羨ましいよ」

「あなたの国もそれなりにあるでしょ。水資源と金が」

「水はともかく、金なんかもう損益分岐点割ってるから掘れば掘るだけ大赤字ですよ。で、話を戻しますけど、あなたはいったい誰を敵に回したんですか?」

奈央が呆れ顔になりながら聞く。


「と、言いますと」

「とぼけんなよ。中東の大物まで動いてるなんて、よっぽどのことだぞ」

「ですから、敵はこの画像に」

「せめて自分の小指のQRコードにとんでもない人物の画像データが残ってるのを把握してくれ。これだけの大物雇える組織に命を狙われるほどのことだ。タダでは済まなそうだ。よって、しばらくはここに居座ることになりそうだな」

「大学へは?」

「うちの組織の連中が送り迎えしてやる。なんならうちのシークレットサービスもつけるぞ」

「大学の入学式までにはどうにかしたいのですが…」

「現実的に無理だ。それに、私の予想通りなら最悪の展開になる。今はまだ予想の段階だから言えないけどな」


ミシェルが呼び込んできたのは、大物の殺し屋だけではないと、奈央も小橋川も確信していた。

果たして、この先、ミシェルらの運命やいかに。



つづく

皆様のご愛顧により、40話に到達しました。


応援、ありがとうございます。


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ