第4話
出発当日
着たきりスズメかあんたはと言わんばかりの軽装で準備完了と言うみゆきを尻目に、旅の仕度をする俺。
女の子らしからぬ言動も多少はたしなめてやりたいところだが、そんなのは香里にでもまかせればいいので、無視。
そして…
仕度も済ませ、現金も用意し後は出発するだけとなった。
まるで夜逃げをするかのように。
しばらくすると電話がかかってきた。
もう家の前に着いたから出ろとのこと。
「みゆき、行くぞ」
声をかけ、車に乗り込む。
車はワンボックスタイプの7人乗り。
車の中には同級生で弁護士の山部美咲と、先日本部で見た忍者の2人がいた。
「やあ、雨谷君、それから山本みゆきさん。私は雨谷君の仲間の山部美咲。運転席にいるのは中根枝織さん。うちと友好関係にある三重のギルドの人よ」
と、山部が話しかける。
こいつも腐れ縁の一人。高校の頃からの仲で、俺がいたラグビー部のマネージャーだった。
大学では法学部に入り、2年の頃に司法試験予備試験に合格し、3年の時には司法試験に合格。
現在は、武蔵ダンジョンギルドソサエティの親会社たる武蔵ホールディングスの企業内弁護士と、冒険者を兼ねている。
基本的には戦術担当と後方支援がメインなので、直接闘うことはない。
「まさかお前も伊賀に行くのか?」
「その通り。戦術担当は必要でしょ?」
「誰の差し金かはわかるよ。ったく…今回は危険だからあまり表立ってしゃしゃり出るなよ。命を落とすかもしれないんだからな」
そう言うと俺とみゆきは荷物を3列目の席に置いて後部座席に腰かける。
ドアを閉めると、車は高速道路に向かい動き出した。
「ねえ、ミサキとユウスケはどんな関係なの?」
と、みゆきが聞いてくる。
「高校の頃からの付き合い。ラグビー部のマネージャーで香里の友達」
「あと、私から勉強をたくさん教わったってことが抜けてるよ」
「うっさい、体力が無くてよく水汲みを香里や後輩ばかりに任せて、日陰で撮影ばかりしてたお前とは頭の出来が違うんだよ」
「黙れ筋肉馬鹿。お前がセンター利用で大学受かったのはまぐれだろ?」
「お前のようにセンター試験で平均9割7分も得点できる実力からすれば、俺の実力なんかまぐれに見えるんだな。この田舎っぺ」
山部さんは地主の娘だが実家が周りに茶畑しかないようなところにあるため、こう言われるのを嫌がるのである。
「なによあんたなんかバカのくせに」
「黙れや関ケ原古戦場」
「関ケ原古戦場?」
「こいつの胸見りゃわかんだろ。こnぐえっっ…」
みゆきのパンチが腹部を直撃した。そういやこいつも胸に関しては禁句だったなと、薄れゆく意識の中で思い出す。
「ありがとう。感謝するよ山本さん」
「ミユキでいいよ。あなたとはいい友達になれそうね。よろしくね、ミサキ」
どうやら意気投合したらしい。
そうこうしている間にも、車は圏央道入間ICから八王子方面に向かう。
「ユウスケ、起きて。運転交代よ」
と、みゆきが俺を起こす。
「ここは?」
「足柄サービスエリア。中根さんもお疲れのようだからここで交代」
「どこまで運転するんだ?」
「東名阪道の御在所サービスエリア。ちょっと遠いけど頑張ってね」
「三重県まで運転させる気かよ…わかった。じゃあおやすみ」
ここで栄養ドリンクを補給し、車にガソリンを入れ、一路三重県へ向かう。
厳しい闘いの待ち受ける、伊賀上野に向かって。
つづく
R15とは言ってますが、まだ過激的な暴力描写や残酷なシーンは出ません。
今後の展開にご期待ください。