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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第3章
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第34話

祐介は久々に家に帰った。

郵便物が溜まっていたが、ほとんどがダイレクトメール。その中には差出人不明の手紙があった。

開けると一枚の紙が入っていた。


聞け、かのものよ。

必ず行く。楽しみにしろ。


いったい何のことかわからないので、社長や薬師寺奈央に聞こうとするも、残念ながら不在とのこと。

小橋川さんに連絡をしても「お嬢様はただいま不在です」とそっけない態度であった。

これで何かを察した祐介は、引き下がることにした。



その頃、薬師寺家別宅。

魔女王の来訪に、薬師寺奈央は困惑していた。


(以下の会話は英語ですが、読者の理解を助ける目的により、日本語表記とさせていただきます)

「薬師寺家の次期当主が女だと聞いてはいましたが、人は見かけによらないものですね」

「そちらこそ。それはそうと、ずいぶんと早いお出ましで。昨日の今日でしょ?電話をしたのは」

「行動力があることが取り柄だから」

「でも、あんたほどの大物が極秘来日しようものなら、あんたらの業界はパニックにならない?」

「それは大丈夫だ。ところで、あの女王を消したのは、あんたら薬師寺ファミリーか?」

「それは機密事項なので答えられない」

「たわけたことを。いいか?私は女王の影武者という立場で、英国王立魔術研究会を立ち上げた。したがって私たちには王家を守る義務がある。極東の殺し屋組織がでしゃばることじゃない」

「ですが、その王様や女王様が最初から偽物だったらどうするんですか?」

「どういうことだ?」

「私たちは世界各国で諜報活動をしたり傭兵を派遣したりしてる。調べようと思えば一通りのことは調べられますよ。バッキンガム宮殿の門の左側の紋章が取り外されてたことの真相も知ってますよ。自動車事故ってのは、表向きの話でしょ?」

そういうと、魔女王は黙った。

やがて…

「ふん。私の計画を邪魔しやがって」

「爺さんから何も聞いてなかったのですか?うちの一族が本来魔を滅する組織ってことを」

「…」

「歴代のローマ教皇の秘密や元アメリカ大統領夫人の秘密も当然知ってるはずでしょ?」

「もちろん」

「なら話は早い。アメリカ合衆国は正義を貫く。我々は日本を滅ぼされないためにアメリカにつく。そもそも日本はアメリカに敵対すれば日本全国のすべての送電網の電源を落とされるマルウェアを仕込まれてるんだ。あんたがたはどうするんだ?黙ってたらあんたらも滅ぶぞ」

「今のところは静観ということでいいか?」

「聞きたいのはあなたの本心ですよ。迷っているなら自分が正しいと思うことをすればいい。ただ、私たちと戦うのは決して良策とは思えないがな」

「今は結論を出すことはできない。私にもかわいい部下がいる。彼らの安寧は私の幸せ」

「お困りならいつでもご連絡ください。すでにロイヤルダークソサエティとは提携を結びましたので、話は早いはずですよ。あなたのかわいい部下はとても優秀ですね」

「それはどうも。今度、極東支部の新しい支部長がそちらにご挨拶に来るわ」

「ほう。というと、トマソンさんは異動ですか?」

「ロンドンの本部に戻すだけよ。あのアニメオタクを」

「それは知りませんで。で、新しい支部長は、有能でございますか?」

「と、言いますと?」

魔女王は一瞬だが困惑した。

「いえ。こんな時期に支部長が変わるなんて、イギリスで何かありましたか?それとも極東で何かよからぬことでも?」

「単なる配置換えよ。それにチャイナ情勢ならあなたのほうがお詳しいでしょう」

「それは買い被り過ぎですよ。チャイナの内戦に乗じて香港独立派を焚き付けて漁夫の利で香港を奪い取ったイギリスには勝てませんよ」

「3大派閥の頭目を全部消し飛ばした始祖六家に比べたら大したことない。心配しなくても、実力は本物よ。彼女、氷の女って呼ばれてるから」

「それを聞けて安心しました」

「さて、もう帰ってよろしいかしら」

「どうぞ」

「次からは新しい支部長さんに交渉を任せるわ。私も忙しくなりそうだから」

「お気持ち、お察しいたします」

「じゃあね。奈央さん」

(日本語表記の英語終わり)

そういうと、魔女王は帰っていった。


しばらくすると、奈央の携帯に電話がかかってきた。

相手は小橋川だった。

「なんだ?今日は私に電話をしないでくれと言ったはずですが?」

「申し訳ありません。緊急の用件でございますので」

「緊急の用件?」

「水野様からです。「急で申し訳ないが、すぐに組員を20人ほど福岡まで派遣してほしい。できれば、福岡以外の地域から」とのことです」

それを聞いて、奈央は一瞬黙った。

そして。

「わかった。今の時間じゃ東京の組員は間に合わん。急いで大阪の組員に連絡する。私はお前と合流する。今どこだ?」

「新宿の小田急の前です」

「よし。今すぐ帰ってこい」

「わかりました。それと集めた団員は福岡のどこに集めておけばいいですか?」

「とりあえず福岡市内ならどこでもいい。ホテルは必ず確保しろ。3泊くらいでいい」


通話を終えると、奈央は大阪支局に電話をかけた。

「松園さんか?急な話で申し訳ないが、20人ほど博多に向かわせてほしい。今からなら最終の新幹線に間に合うはずだろう。20人が無理なら、集められるだけのメンバーを集めて、福岡に向かわせてほしい」

「わかりました。集めたやつらはどうするんですか?」

「とりあえず小橋川にホテルを予約させてある。新幹線に乗る段階になったら小橋川に連絡しろ。連絡役はいつも通り、松園さんでいいよな?」

「わかりました。団体乗車券はいつも通りでいいんですね?」

「もちろんだ。後のことは、小橋川さんに任せてあるから」

そう言うと、奈央は電話を切った。


1時間後

「兄貴、言われた通りに大阪の集められるだけのメンバーを全員集めて新大阪駅に行かせましたが、何かあるんですか?」

「わからん。俺はお嬢と小橋川さんに「集められるだけのメンバーを博多に向かわせろ」って言われただけだ。俺もすぐに新大阪駅に行く。サブ、お前は留守番だ」

「はい」

そういうと、松園は部屋から出た。

「(面倒なことになってきたなぁ)」

そう思いながら、松園は地下駐車場から黒塗りのセダンに乗り込む。

「新大阪駅まで」

「はい」

松園を乗せたセダンは新大阪駅へと向かった。



その頃、祐介の自宅にて。

「おまえ、何者だ?」

「私は歌の女神。そう呼ばれています」

「はいそうですか。って言って納得できるわけねえだろ?誰の差し金だ。言え」

「紹介状をもらってあります」

そういうと、女神は紹介状を渡した。

紹介状には広田社長と六角氏の名前があった。

祐介はすぐに社長の秘書に電話をかけた。

社長は不在だが、社長から伝言を預かっているとのこと。

「今度君のうちに来るやつだが、身元は保証する。しばらくの間、住まわせてやってくれ。必ず君の役に立つから」

この伝言を聞いた祐介は、呆れ果てて電話を置いた。

ことの顛末を聞いたみゆきも流石に呆れ果てた。

やがて…

「ねえ、社長殺していいよね?」

「やめなさい」

「デリカシーってのがなさすぎでしょ。私と歌の女神に対しても」

「社長のデリカシーのなさは昔からだから。いい加減慣れてくれ」

「だからって言ってもね…」


その時、家の電話が鳴る。

「はい、雨谷です」

電話の主は六角氏だった。

祐介との面識はあまりなく、会話は初めてだった。

「ワシは六角源之助じゃ。そっちに山本みゆきってのが居候してるじゃろ?いたらちょっと代わってくれないか」

「はい。少々お待ちください」

祐介は一旦受話器を置いた。

「誰?」

「六角さんだ」

そういうと、祐介はみゆきに受話器を渡す。

「お電話代わりました。山本です」

そういうと、5分ほど会話が続いた。

やがて

「おい、歌の女神とやら、電話だよ」

「誰から?」

「六角さん。あんたに礼が言いたいんだとよ」

そういうと、みゆきは歌の女神に受話器を渡す。


数分後

「わかりました。雨谷さんに代わりますね」

歌の女神は、祐介に受話器を渡す。

「はい雨谷でございます」


それから数分ほど会話が続き、六角は電話を切った。


「で、つまるところ、あんたは当面の間は村岡ななみって名前で活動するわけだ」

「そうなりますね」

「みゆき、この2人で暮らすには広い家に居候が来たようだな」

「しかも歌以外は何もできなさそう」

「失礼ね。これでもくらいなさい。<ビブラート>」

ななみの周りで超音波攻撃が鳴り響く。

「うっ!頭が痛え…脳が揺れる」

「ひどい攻撃だ…頭が割れそう…やめて…やめ…やめろ!」

そういうとビブラートが止まる。

「わかったかしら。私の実力」

「わかったよ。ただし、その攻撃は俺らに向けてやるなよ」


こうして、祐介の家にまた同居人が増えたのであった。



つづく

月一回更新予定ですが、次回更新は未定です。

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