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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第3章
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第31話

おことわり

「中華人民共和国」という名称は華夷秩序(かいちつじょ)のなかで、シナ大陸の国家を「中華」、日本などを「夷狄(いてき)」と位置づけることを意味しています。こういった周辺諸国に対するヘイトスピーチは受け入れがたいものであり、本来なら同国は「シナ(支那)」ないしは「チャイナ」と呼称されるべきです。

しかし、以下の文章においては、読者の理解を助ける意図のもと、あえてその俗称である「中国」という表記を使う場合がありますが、これは便宜上の措置であり、支那共産党のいう華夷秩序を受け入れることではありません。ご理解いただければ幸いです。

翌日

夜通しで行われた尋問の結果、天田の背後にはやはりチャイナの勢力がいたことが明らかになった。

チャイナはキョンシーに代表されるように死体を操り人形のように動かす魔術が盛んである。

その発展系となったのがオートマタであり、傀儡人形である。


諸田家と薬師寺家は早速電話会談を行い、外交ルートを通じてチャイナの組織を秘密裏に捜査することとなった。

幸い、薬師寺家はすでに重慶という町に人員を派遣していたこともあり、追加補充のついでに情報収集を行うこととした。

諸田家は引き続き、霧生家などとともに情報統制にあたることとした。

オートマタ事件を表に出すわけにはいかない。

そのため、オートマタによる被害に遭われた人々(実際の人的被害は数名だが、不運なことに車を破壊された人が1人いた)に巨額の口止め料を渡し、2度と口外しないようにすることにした。


薬師寺家には追加人員の補充が外務省からも現地部隊からも寄せられていた。

このうち、外務省については「観戦武官は防衛省の管轄である。そもそも中国は戦争のため民間人の退避勧告が出ているはずだ。飛行機が飛ばないうえに、台湾、インドと交戦中だし、中国国内でも各地で暴動が起きていると聞く。これ以上は付き合いきれない」と拒否。

現地部隊の方には早急に増員は送るがいつになるかわからないというメッセージと重慶での調査一時中止と新規調査の詳細を送った。


一方で、奈央達にも依頼が届く。

依頼人は広田社長。

依頼内容は、長野県の上伊那にいる大蜘蛛様に密書を届けてほしいというものだった。

大蜘蛛様は(よわい)600歳以上の大蜘蛛であり、長野県南信地方一帯の妖怪の元締である。広田社長とは、異種族の保護と雇用の件で幾度となく話し合いを広げた仲である。


薬師寺邸別宅

そこが薬師寺奈央の本拠地である。

なお、普段この庭付き3階建ての広い家には、住み込みの書生兼武装メイド数名と奈央くらいしかいないので、広い家を持て余し気味だが、掃除をきちんとしているので綺麗である。

その家に、祐介が訪れた。

「いらっしゃい。上がりな。メイドにお茶を出させるから。紅茶でいいか?」

と、奈央がいう。

「はい。お願いします。あと、薬師寺さん、これ高松出張の時のお土産です」

そういうと、祐介は土産物を出した。

中身は讃岐うどんの乾麺と瓦せんべいとうどんグミだった。

「あんがとよ。で、今日は打ち合わせかい?」

「それもありますが、単に世間話も少々」

「そうか。しかし、社長も何を考えてんだ?」

「と、言いますと?」

「上伊那に連れて行く連中に、水野さんや宮城さん、祐介にみゆきがいるのはまだわからなくもないが、なんで玉藻までいるんだ?」

「玉藻を知ってるんですか?」

祐介が食い気味に聞く。

「あいつとは古い馴染みでね。親父と会ったこともあるよ。それよりも、なんで玉藻がメンバーなんだ?」

「さあ、わかりませんね。それよりも、交渉になるんですかね?玉藻は香川県にいるはずですよ?」

「それがな、今度東京に来るんだ。宮城さんが久々に顔を見たいって言って、連れて来るそうだ」

「だったら、いいアイデアがありますよ」

と、祐介は奈央にある作戦を話す。


「祐介、お前ってのは本当にワルだな」

「これも作戦のうちですよ。力無きものは知恵で戦うしかない。私がまともにやったら死にますよ」


その5日後の午後17時56分

何も知らない玉藻は、宮城さんが予約してあった料亭を訪れた。

その料亭が、今回の作戦場所である。


夜18時

宮城さんが頼んでおいた食事と大量の酒を部屋に送り、食事を届けた女将が「宮城さんからの伝言で、少し遅れるから先に始めてくださいとのことです」と告げ、部屋を後にする。

こうして、酒を飲み始めた玉藻。いい感じで酒が進む。


15分して、宮城さんが到着。

「宮城、遅い!もう始めてるよ」

「ごめんごめん。さぁ、飲もうか」

「すみませ〜ん。ビールを2本お願いします」

と、玉藻がすかさず女将さんに注文をする。

「ビールを2本ですか?」

「はい」

「はいわかりました」

そして、ビールを2本追加。


数分後

「いや〜〜最高!これで芸者でもいたら天国だな」

と、玉藻が完全に出来上がった状態になる。

「もう、人の金だと思って。じゃあ呼びます?芸者さんを」

と、宮城がいう。

「おっ、それは楽しみだぜ」

と、玉藻。

しかし、玉藻はこの後自らを襲う災難に気づいていなかった。

そしてその15分後、芸者3人が到着。

「失礼いたします。今日はじっくりと遊んで行ってくださいませ」


玉藻は何一つ気付いていなかった。

彼女らの正体が、薬師寺奈央、小橋川マヤ、水野晴海であることに。

しかし酔っぱらいと化した玉藻に、気付く(すべ)など存在しなかった。


そして

「お、おい何すんだよ!おい、やめろ!お前何してんだよ!おい!」

芸者3人に担ぎ上げられる玉藻と、大爆笑する宮城の光景が出来上がった。


料亭の前には黒のワンボックスカーが止まっていた。

何を隠そう、今回の計画の主犯は雨谷祐介である。

芸者に扮した3人は、玉藻を後部座席に押し込め、玉藻を逃げられないようにした。

少し遅れて宮城が到着。

「さ、玉藻、旅に行くよ?」

「うるさいんだよ!いやこれは拉致だろ!これは!拉致だよこれは!誘拐だろ!」

「いやいや。君酔っぱらってたから何も聞いてなかったでしょ?これから駒ヶ根に行くって」

「いやいや、そんなこと言ってないでしょ。どうがんばっても。この時間から駒ヶ根はおかしいよ。だいたい4時間くらいかかるでしょ。なんの恨みがあって真夜中に駒ヶ根に行かなきゃいけないんだよ」

「一つは、社長の依頼。もう一つは大蜘蛛様とのお話」

その言葉で玉藻は完全に拒否反応を示した。

何しろ大蜘蛛様はかつて幾度か水野が玉藻を折檻したときに笑いながら水野を手伝っていたことがあるからである。

「やだ!やだ!ねえ小生やだ!下ろしてよ!」

「いや、もう高速乗りましたんで。ここから駒ヶ根着くまで休憩無しで行きましょう。下手に休憩したら逃げられちゃいますから」

と、祐介が軽く笑いながらいう。


車は首都高速から中央道を通り、駒ヶ根へと向かった。果たして、そこで待ち受けるものとは。



つづく

次回の更新は未定です。

年明けまでにはなんとかする予定です。

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