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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第3章
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第28話

薬師寺邸

小橋川は薬師寺家当主に事情を説明していた。


「魔法で動く自動人形(オートマタ)か」

「はい。間違いありません。このチップは特定の人形に命令を出すもので、あらゆる電子機器で調べましたが反応がありませんでした」

「で、その命令はなんだ?」

「捕獲。邪魔するものは排除。小柳の証言から、おそらく子供を拉致するプログラムが入っていたのでしょう」

「となると、子供を使って何かをやるってことか」

「しかも、あのオートマタは量産品です。暗殺部隊所属経験のある小柳でさえ60体と立ち回って相打ちになって入院です。たまたま私が近くにいたから助かったものの、もし発見が遅れたら手遅れになっていたでしょう」

「量産品ってことは、工場でもあるのかな?」

「おそらくそうでしょう。私の想像通りならかなり厄介な事態になります」

「しかも、相手が確実に我々を攻撃するとは限らない。魔力を逆探知できるやつが必要だな。それに、おそらく魔法使いが相手になる。魔法なんか使えるやつはお前を除けばうちの勢力には誰もいないぞ」

「いえ。いますよ。あの4人なら」

「あの4人?まさか」

「彼女達ならある程度は対処できるでしょう」

そういうと、小橋川は書類を出す。

書類には4人のデータが載っていた。

中里由紀(なかざと ゆき)

川口弓子(かわぐち ゆみこ)

酒井宏美(さかい ひろみ)

赤坂志穂(あかさか しほ)


「この4人、確か悪魔と闘ったことがあったな」

「はい。今、私の使いの者が彼女達を日本に呼び戻すように各地に散っています」

「まさか海外にいるのか?」

「はい。この4人、バラバラに海外に行っています。出国はほんの数ヶ月前です」

「で、何日かかるんだ?」

「見つけ次第すぐに呼び戻すことになってます。まだなんの連絡もないので、逐次報告いたします」

「わかった。焦るなと言いたいところだが早くしろ。決して雑魚とは言えないやつがやられたんだ。並の奴らじゃ確実にすぐにやられる。なんとかしろよ」

「わかりました」


1週間後

薬師寺家の屋敷

小橋川は4人を座敷に招いていた。

「で、あんたが私達を呼び戻したってわけ?」

と、弓子。

「そういうことです」

「あんたらは前に徳島で私たちを見殺しにしようとした割には、随分と都合の良い使い方ですね。何の嫌味ですか?」

と、由紀。

「よしなよ。あれは私たちも悪いのよ」

と、志穂。

「由紀。怒っても仕方ない。それにこの人、人間じゃない。私達なんか簡単にひねりつぶせちゃう存在よ」

と、宏美がいう。

「私が人間じゃないことがなぜわかるのですか?」

小橋川は表情こそ変えなかったものの疑問を浮かべる。

「簡単よ。私は魔力を探知できる。あなたの魔力は人間のそれじゃない。おそらくドラゴンのそれ。したがって人間ではない」

「お見事。流石は魔女ですね。それも地獄から舞い戻った」

「私たちが地獄から舞い戻ったってなんで知ってるんですか?」

「薬師寺家の諜報部隊は私の直轄です。調べようと思えば調べられますよ。例えば、川口弓子さん。あなたはピッキングと銃の天才。しかもメカニックにも長けてて、手先が器用で裁縫も得意と聞く」

弓子は思わず口を開けた。

「中里由紀さん。あなたは男装の麗人だ。しかもハッキングと近接戦闘も得意。しかし嫉妬心が強く受けた仇を忘れない」

由紀は口を閉ざした。

「赤坂志穂さん。あなたに関してはなぜ薬師寺家のカリキュラムを突破できたのかがわからない。臆病でチキンハートで、表情が顔に出る。その上交渉以外の得意なことはあまりない。だけど仲間思いで、いざというときにはなんとか乗り越えてきた」

志穂は顔をひくつかせた。

「酒井宏美さん。あなたは冷徹で、非道なことをなさるが、本当は仲間思いでいざとなったら自分を犠牲にする。その気になれば色仕掛けもできるから水野さんにすごく気に入られている」

宏美は眉一つ動かさなかった。

「本当はただの仲良し4人組として生きて行きたかったでしょうけど、小学生の頃から薬師寺の里で育った以上、この薬師寺家の掟はわかってますね」

「当然だよ。むしろ私は見捨てたはずの4人を都合よく呼び戻したことについて誠意を見せてほしいけどね」

由紀は不満そうな顔をしながらいう。

「由紀、もういいでしょ?」

志穂が由紀をなだめる。

「由紀、これ以上は本当にやめて。やめないならあんたの身柄を水野さんに預けてもいいんだよ。あのサイコじみた女好きサキュバスと一夜を共に過ごしたい?」

宏美が冷徹に由紀を脅す。

「確かに、私どもに不義理があったことは謝ります。しかし、今回の案件は対魔術師です。太刀打ちできるのは貴方達4人しかいません。なんとか理解してくれませんか」

と、小橋川がいう。

「あなたがたの気持ちもわからないわけではないです。しかし、あの命令を出したのはあなたの部下でしょう。部下の不始末の尻拭いはしたんですか?私たちが悪魔と相討ちになって地獄に落ちて、そこから舞い戻ってくるまでどれだけ大変だったか」

と、由紀がいう。

「ご安心ください。あの部下は仕置しました」

「はい?」

「ですから、あの部下は保身に走り、掟を破る裏切りがありましたので、薬師寺の元締と私が直接仕置しました」

「そうですか。わかりました」


その頃

都内某所のビルの3階では、薬師寺家代表者の名代とロイヤルダークソサエティとの交渉が行われていた。

「では、あなた方ロイヤルダークソサエティには何も隠し事はないということですね」

「その通りです。ただ、部下の不始末があれば、必ず仕置を依頼します」

「その言葉、女王陛下の前でも誓えますか」

「はい」

「我々には対魔術師のノウハウはありません。始祖六家でも霧生家の者だけが対処できるでしょうが、人的リソースには限りがあります」

「つまり我々に対魔術師戦の手ほどきをしろということか」

「そうです。そのかわり、我々はロイヤルダークソサエティと協力関係を築くこととします」


その時。


パァン!パァン!パァン!


銃声が3発鳴り渡る。


「銃撃だ!床に伏せろ!」

すると、いつの間にか多くのオートマタが押し寄せる。

「ハジキを持ったオートマタなんか聞いたことねえよ!」

いつの間にかオートマタとの銃撃戦が始まる。

「メーデー!メーデー!メーデー!こちらは阿部孝一。銃を持ったオートマタと交戦中。至急援護を求む。繰り返す。至急援護を求む」

阿部は手持ちの無線で援護を求めた。

「おい。ハジキはあるか?」

「あるわけないでしょ!」

「こっちはコルトガバメントが二丁。予備の弾は96発。敵は何体いるかわからない。生き残るには魔法で応戦しろ」

「そんな…」


その時。

「オルァァァア!!」

覆面を被った女のドロップキックでオートマタが数台破壊される。

「今のは…いったい…」

「助けに来ました!」

「あなたは…」

「説明はあと。地下駐車場までダッシュしてください。地下駐車場で仲間が車で待ってます。ここは3階。運が良ければエンカウントせずにここから脱出できます。そこのロイヤルダークソサエティの人と一緒にね」

そういうと、3人は階段に向かって走る。

「やっぱりいやがった。なめんな」

そういうと、オートマタに素早く飛び蹴りを浴びせる。

「極力戦わずに、地下駐車場まで降りてください」

地下駐車場に続く階段には、大量のオートマタがいた。

「どうすんだよこれ!」

「まかせて」

そういうと、覆面の女はボディアタックでオートマタを片付ける。

「爆弾でも使えばよかったんじゃねえのか?」

「派手にやったらオートマタが集まってきます。急いでください」


地下駐車場

「あの車です。急いで!」

そういうと、3人は急いでワゴン車に乗り込んだ。

「派手にぶっ飛ばすよ」

「せめて道交法は守ってください」

3人は都内某所のビルの地下駐車場から脱出する。


「これからどこに行くんだ」

「薬師寺邸です。ここなら安全です」

「車に発信器なんかつけられてねえだろうな」

「それは大丈夫です。仮につけられていても、防衛体制は万全です。すでに手は打ってあります」


彼らを乗せた車は、薬師寺家の邸宅へと向かっていった。



つづく

次回の更新は未定です。

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