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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第2章
20/61

第19話


時はエクスターミネート・オペレーションの末期に遡る。

〜〜〜〜〜〜

諸田と晴海は大量に転がる死体を見ていた。

「どうだい?この国は退屈しないだろ?これだけの愚か者がいるんだからさ。そして、助けを求める女性も多い。まあ、フェミニストを自称する犬にも劣る人間のクズもいるけどな。それでもお前は、助けを求める女性のためのシェルターを運営するのか?」


「もちろんよ。それがあなたたちのためになるなら」

明らかに私欲の混じってそうな発言だが、諸田は無視した。


「それはそうと、諸田さん。この世界は剣も魔法もいらないはずじゃないの?」

「魔法ってのは人殺しに役立つものだよ。一度に10人殺すときはマシンガンよりも正確で、しかも証拠も出ない。魔法で心臓が止まっても実証できないからね」

「物騒なこと言うわね。警察なんでしょ?あなた」

「警察は警察でも秘密警察との二足のわらじだからね。人殺しの命令があれば従うまでよ」


「警察庁情報調査局ってのは恐ろしいね。子供だろうと警察官でも殺すんだから」

「ただ殺すのは簡単だが、致死量の血液を抜き取ったり、臓器を摘出するのも大変なんだぜ」

「それは依頼があればってこと?」

「ブラッドバンクは今もなお生きてるし、臓器売買のマーケットは数知れないってことよ」

「まるでチャイナね」

「血液や臓器に異常があればそのまま殺してるが、だいたいの若い者は健康だ。だから大変なんだ」


〜〜〜〜〜〜

さて、話を戻そう。



「バカな…なぜあの蹴りが入らない…」

「(まさか…)奈央ッ!一旦距離を取れ!」

敏夫は奈央に叫びつつ指示を出す。

「親父、どういうことだよ」

「あれはおそらく改造人間だ。生半可な攻撃は入らない。蹴った感触はどうだ?」

「生身を蹴った感触じゃなかった」

「じゃあ私の出番かしら?」

「ダメだ」

と、敏夫は葵を止める。

「どうして?」

「お前のフレアは周りへのコラテラルダメージが大きすぎる。ましてや、この状況下でまともにやったら俺らまで黒コゲになる」

「じゃあ肉弾戦かな。3対1で」

「いや、4対1だ」

宮城が横から口を挟む。

「いいや。5対1よ」

晴海も参戦を決める。


「いつから私1人だと思った?」

見渡すと相手もいつの間にか5人になっていた。

「わざわざ卑怯者呼ばわりされないようにしてくれてありがとう。だが、俺らは例え女子供が相手でも、容赦なくやっつけるぜ」


奈央がそういうと、戦いが始まった。

いつになく激しいラッシュ。

「(おもしれえ。やっぱり戦いはこうじゃないと)」

血湧き肉踊る奈央。

「(相手にもならないけど、少し遊んであげようかしら)」

余裕綽々の葵。

「(こりゃ苦戦しそうかもね)」

宮城と晴海の共通認識。

そして敏夫は無心で戦う。


30分後…

薬師寺陣営で戦えるのは奈央、葵、敏夫の3人。

宮城と晴海は長引く戦いで辛くも勝利したものの、体力の消耗が激しく、座り込んでしまった。

一方の相手方はボスを殺した女1人。

「やってくれるじゃん。でもこれならどう?」

そういうと、女は薬を飲んでバケモノと化した。

「クソ外道が。人間としての知性も失ったか」

「バケモノに人間の知性なんかあるか、離れろ!」


「親父、どうするんだよ。いくら過酷な訓練積んできたとはいえ、あんなサイクロプスとシュ○ックを足して2で割ったようなバケモン、どうやって倒すんだよ」

そう言いながらも、奈央は攻撃を食い止める。

「せめて、あの刀さえあれば…」

敏夫が力なく言うと…


「お嬢様!!」

小橋川が窓を突き破り突入してきた。


「小橋川、どうしてここが?」

「説明は後です。それより、この刀を」

小橋川の手には妖刀『血鬼(けっき)』が握られていた。

「小橋川、勝手なことをするんじゃない」

「奥様、説教は後でたくさん聞きます。お嬢様、早くあのバケモノをこの刀で」

「わかった。わざわざ遠くまでありがとう」

「小橋川、お前も戦え。頭数は多いほうがいい」

「承知しました」


「さて、これで6対1だ」

こうして、戦いが再度始まった。

鈍重な見た目に似合わぬ俊敏な動きに薬師寺ファミリー(プラス2)は翻弄される。

しかし、妖刀の前には流石の怪物もなすすべなく一刀両断された。


「ふう…倒したんだよな」

「首を切り落として、さらに残った胴体が真っ二つだぞ。生きられるわけがない」

「そうだよな」


「お嬢様、流石です」

「いや、今回はひとえに小橋川の心配性のおかげだよ。あそこで刀を持ってきてなかったら、下手したら死んでたかもしれない」

「お褒め頂き光栄です。私はこれで」

そういうと、小橋川は妖刀を持って飛び立った。


「小橋川って何者なんだ?少なくとも人間じゃないでしょ」

「私達の家に使える使用人だ。君らの御察しの通り、人間ではない。あれは龍だ。それも奈央をあそこまで育ててくれた功労者だよ」

「そうだったのね」

「じゃ、私らも日本に戻るよ。なにせ私らは貴方達と違って、密入国だからね。バレないうちに帰るよ。また会おう」

そういうと、宮城と晴海はどこかに行ってしまった。

「それじゃ、私たちも帰りましょうか」

「一旦サンフランシスコに行って、金門橋見物でもしようかね」

「ふざけたこと言わないでさっさと帰るわよ」

「はい」



その頃、日本の薬師寺家には、とある組織の人間が訪れていた。

「弱ったなあ、旦那様は留守だし、奈央様もいない、小橋川さんもいないのに加えて、英語を話せる人が今出払ってるんだよな」

「どうしたの?」

「川島さん。なぜここに?」

「今日は一旦戻る予定の日よ。それより、何この外国人」

「話す言葉が英語だってことはわかるんですけど、今いる人は誰も英語がわからないんで、困ってたんですよ」

「そう。私が相手するから」

「川島さん。英語話せるんですか?」

「メイドのたしなみよ」

そう言うと、川島は外国人のもとに歩いていった。


(ここからの数行の会話は本来なら英語ですが、わかりやすさを重視し、日本語表記とさせていただきます)

「何の御用ですか」

「いつまで待たせるつもり?」

「申し訳ありません。英語を話せる者が誰もいませんでしたので」

「そうですか。で、こちらの用件ですが、薬師寺敏夫さんはおられますか?」

「今日はこちらにはおりません。事前にアポイントを取っていただかないと困ります」

「そう。いつになったら帰ってこれるの?」

「いつになるかはわかりません」

「だったら、この手紙を渡していただけますか」

「わかりました」

(日本語表記の英会話終わり)


会話が終わると、外国人は去っていった。

「何だったんですか、この人」

「さあね。わからないわ」


その頃

「極東の島国のドラゴンか」

「薬師寺ファミリーが気になりますか?」

「ああ。とても気になるよ。うまくすれば、地球の危機の救世主となりうる」

「それより、我々に実業家の広田が接触を試みているのは本当か?」

「まだ噂の範疇ですので、なんとも言えません。しかし、広田が動いているのは事実です」

「そうか。いよいよ近づいてしまったのだな。あの日を超えるものが」


つづく


次回更新は未定です。

気長にお待ちください。

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