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レイン・シャーク  作者: 西武球場亭内野指定席
第2章
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第18話

「で、警察庁情報調査局の乙坂さんが一体何の用だい?」

「話は同居人の山本みゆきの件よ」

「ふーん。俺は何も知らねえよ。あいつはただの同居人だよ」

「あなたには聞いてない」

その態度に祐介は少し腹を立てた。


「で、山本さん。あなたには殺人の疑いがあるけど、何か心当たりはあるかしら?」

「……」

「ノーコメントってことは認めるってこと?」

「愚問ね。話す価値もないわ」

と、みゆきは乙坂を小馬鹿にして笑った。


「もういいか?何もねえならこれから俺たち行くところがあるんだよ」

「いえ、私はあなたを監視するよう義務付けられています。私は仕事の都合であなたを監視しなければならないのです」

「てめえの仕事の内容を喋っていいのかよ」

祐介は乙坂をなじった。

「どのみち見つかった段階で計画は変更しなければなりませんので」

「じゃあ俺たちが潔白だってこと認めさせてやるからついてこいよ」


そういうと、祐介は電話をした。

相手は誰かはわからない。


数分後…

「わかった、明日行くからよろしく」

そういうと祐介は通話を終えた。


「みゆき、今日は泊まりだ」

「まさかそういうホテル?」

「お前がいいならと言いたいところだが、あそこのいかにも女らしさを全開にしているけど彼氏もいないような女が「リア充は死ね!!」って言いそうになるからやめてあげような」

祐介はみゆきの悪ノリに乗った。


「てめえら私が警察官って知っての発言か?」

「しかも彼氏もいないような女」

みゆきの悪ノリに乙坂は少しキレた。


「山本みゆき、話がある。悪いけど女同士の話だから男のお前は席を外してくれないかね」

「ああ。俺らがイチャイチャするのに耐えられずにキレそうか。では遠慮なく」

祐介は乙坂を煽りつつ席を外す。


「まったく、なんなんだあいつは」

「ああいう人だから。あの人は。でも義理深い人」

「ノロケ話は聞きたくないの。聞きたいのはあなたのこと。あなた裏社会に関わってきたでしょ」

「質問が下手ね。仮に関わっていたとしても言えないから」

「正直に行こうよ」

「私だって完全なる素人じゃないよ。あなたのことは調べようと思えば調べられる。それだけのネットワークがあるってことだけは言っておくよ。ここの支払いよろしく」

そういうと、みゆきは立ち上がって出て行った。

乙坂は体良く伝票を押し付けられた。

支払い額は3200円。


翌日

「まったく、どうやって俺らが泊まったホテルを見つけやがったんだ?」

「そこは、警察の力と女のカンだよ」

「まあいいや。今日は俺の知り合いと会う約束をしてるから。ついてきてもいいけど、覚悟はあるか?」

「どういうこと?」

「行けばわかる」


東京の新宿から1時間半ほど電車に揺られたりバスに揺られたり歩いたりして、たどり着いたのは大きな研究所だった。

大城戸(おおきど)理化学研究所

ここは日本では数少ない最先端技術研究が行われている研究所である。

この研究所一帯は国の特区に指定されており、世界各国の研究者達も研究を行う。


「大城戸理化学研究所第五ラボ。ここが今日俺が会う約束をしている人の研究室だ」

そういうと、祐介はインターホンを押した。


「姉様、お客さんですわ」

「京子、開けてあげなさい」


「よっ」

「来ましたね。広田のパシリと同居人」

「来ましたね。薬師寺の元カレと同居人」

「相変わらず口が悪いな、大城戸姉妹。それから君らの発言には事実に基づかないものがある。訂正しなさい」

「軽い冗談よ」

「そう、軽い冗談よ」


「この2人は誰ですか?」

と、乙坂がきく。

「研究者の大城戸姉妹だよ。姉は理香子、妹は京子。今風に言えば、リケジョかな」

「気安く下の名前で呼ばないでくださいますか」

「気安く下の名前で呼ぶことを許した覚えはありませんが。ところでそこのボンテージがすごく似合いそうな女は誰ですか?」

「私は警察庁情報調査局の乙坂。今はそこにいる雨谷祐介の監視をしている」


「姉様、この女山本の同居人を寝取るつもりよ」

「京子、この女略奪愛を狙ってるわよ」

姉妹は乙坂を見るなり毒舌を全開にした。


「君ら本当に口が悪いな」

「乙坂、私の同居人寝取ったらどうなるかわかってるよね?略奪愛なんて警察官、いや、人間がやることじゃないわ」

と、みゆきがいう。

「出会って2日の人間を寝取るやつがいるか!」

乙坂は怒りながらツッコミを入れる。


「まったく、警察の堅物女はこれだから嫌よ」

「冗談が通じないんだから」

「そんなんだから彼氏もいないのよ」

理香子、京子、みゆきの3人が意気投合して乙坂をなじる。


「で、私に見せたいのはこんな口の悪い研究者か?」

「それだけの理由で誘ったわけじゃねえよ。始祖六家序列第1位諸田家の傀儡組織たる警察庁情報調査局の乙坂姫子さん?」

その言葉に乙坂は眉をひそめる。


「わずか数時間でここまで調べるなんて流石ね。始祖六家序列第4位薬師寺家のパトロンの武蔵ホールディングス代表取締役である広田武蔵のパシリの雨谷さん?」

「パシリってのは聞き捨てならねえな。確かにパシリかもしれないが、仕事でやってんだよ。それに、あんたも上の人間に使われてるのは一緒だろ?」

「警察は組織で動いているからね」

「あんたら警察庁情報調査局は警察の中では異色だろ。警察官を裁く警察官で、今も秘密警察同然のことやってんだろ?」

「その質問には答えられないねえ。守秘義務があるからさ」

「そうだよなぁ。エクスターミネート・オペレーションの時に悪徳警察官を皆殺しにしたなんてことが事実なら大変だよな。でも、事実なら俺は感謝するよ。痴漢冤罪加害者やその家族も売国奴を殺すついでに皆殺しにして財産全部奪い取ったって話なんだから」


「何が言いたい?」

「俺はあくまでも、君らみたいに汚れ仕事を直接やるようなことはしてないさ。みゆきも何もしてない」

バルカン半島の自称穏健派並みの大嘘である。

「それに私はユウスケに命を助けてもらった恩義がある。それも2度も。恩を仇で返したら人として終わりだから」


「あとさ、私らのことも忘れてない?私らも始祖六家なんだけど」

「始祖六家…まさか…」

「うちは始祖六家序列第6位大城戸家。科学技術の進歩は人殺しの技術の進歩でもある。キリングドローンのオオキドって言えばわかるかしら?」


始祖六家の人間がキリングドローンを知らないわけがない。

正式名称は汎用犯罪人殺戮機動兵器。

搭載武器の高い攻撃力や、搭載されたAIの残忍性や残酷度合い、ヒグマなどの大物の野獣ですら一撃で殺戮できるほどの高い殺傷能力は日本のみならず世界各国の諜報機関の知るところとなったが、現行のキリングドローンには大量の機密があることや、国際条約に抵触する可能性があることなどを理由に大城戸家は政府はおろか始祖六家にも情報の全部を公開していない。


「姉様、非公開部分は喋ってはなりませんよ」

「京子はいつでも冷静ね。さすがは私の妹」

「お褒め頂き光栄です」


「わかっただろ?俺やみゆきはあくまでも始祖六家に関わる身分の者。汚れ仕事も犯罪もやってねえんだわ。始祖六家がてめえのとこの大切な仕事を外注するかよ?」

と、祐介が偉そうにいう。

「理解したけど、納得はしてないわよ」

「いい度胸だ。それでこそ警察官らしい。今度薬師寺さんにも会わせてやる。薬師寺さんは手合わせの相手を探してるんだよ。相手になるかい?」

「死にたくはないね。私もそこまで無謀じゃない」

と、乙坂がいう。


「そういうこと言ってる人ほど無謀なことをするのよ」

「で、敵に捕まって尋問される」

「痺れ薬を飲まされて好き勝手されたり」

「女が嫌がることをフルコースでやられたり」

「いっそ殺せとか言いそうね」

大城戸姉妹は好き勝手にものを言う。


「勝手言われて黙ってるほど私も気が長い方ではないよ」

「軽い冗談よ」

「軽い冗談ですよ」


その頃、アメリカでは


「ここが組織のアジトね」

「ここを潰せば終わりだよな」

「そうだ。これでまだ第2第3のアジトがあるなんて言われてりゃ世話ねえぜ」

「親父、どうする?正面突破?奇襲?」

「こういうのは正面突破でいくのがいいだろう」


こうして薬師寺ファミリー(プラス2)は最後の戦いに挑む。


「アンタが最後の敵?ボスはどこだい?」

「……」

「言わねえなら吐かせるまでよ」

「ボスは…私が殺した」

「おや?随分と物分かりがいいじゃねえか」

「あなた方は敵。今から殺してあげる」

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」




つづく

Q. どうして3人分の伝票で3200円もするんですか?

A. みゆきがケーキを何個も食うから。


次回もお楽しみに。

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