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おかしな森①

おかしくないか、この森


広い、広すぎる…

よく冒険ものの映画に出てくる原生林みたいな・・・

この奥に古代遺跡があっても、私は驚かないぞ・・・


一歩、島の西を占める森の中に足を踏み入れると、外から見た風景とは一変した恐竜が出てきそうな広大な原生林が広がっていた。




登校初日

琴音と一緒に寮を出て登校し教室に入ると、登校していたクラスメート全員の視線を浴びるという転校生が必ず受ける洗礼を受けた。

成績や能力と家柄で決まるクラスの最下位、成績不良者や能力が弱い生徒や素行不良が集められたF組にいるだけあって、個性あふれる面々だ。その全員となると、ちょっと怖い・・・。

だけど、まぁ・・・それもそうだろうな。

大半の能力者の子供は小学校に上がる前には力を保有していることに周囲が気づくし、十才までには能力が確定する。なんでも、血に流れる王の記憶から系統が覚醒し、覚醒した子供の経験や知識から適した能力が確定するんだそうだ。私の場合、覚醒してから確定するまでの間に銃器マニアな兄のような人に付き合って、そういう映画を見まくっていたのが原因らしい。覚えてないけど・・・

私は孤児院出身だ。OB・OGが残した物や寄付した物が娯楽できるものだったから、銃器マニアの持ち物も大事な娯楽になった。もちろん、ゲームの中のきみもそうだった。后は中等部から入学して、ゲーム開始までの間に大事な家だった孤児院が能力者の事件によって壊滅していた。その廃墟に立った后は壊れ、いろいろあった末に戦闘狂になったとネタばれ上等サイトに書いてあったな。

そんな后に転生した私は、まだ記憶が戻る前だったにも関わらず廃墟になったホームという悪夢を見続け、本能なのかなんなのか能力を隠すようになって無事小等部・中等部入学から逃げ切り、事件の犯人を琴音と一緒に締め上げることに成功して浮かれていたところで、別の事件に巻き込まれて高等部入学となったわけで・・・

そんな、高等部から入学なんていうのは珍事なんだそうだ。

今年も高等部入学はたった5人だそうだ。その全部がゲーム関係者なんだよね。

転校生っていうのも間違えじゃない。

琴音がいなかったら、ぼっちで泣いてたかもな私。


「はいはい。皆さん席に静かにしてください。」

琴音と空いている並びの席に座り待っていると手を叩きながら教師が入ってきた。

クラスメートたちもしゃべるのを止めて自分の席についていく。

教師が来るまで十数分、やっぱり誰も話しかけてはこなかった。

でも、チラチラこちらを見てくる視線を感じたので、ちょーっとイラついた。

「担任の来栖修司です。能力は電撃です。

 問題を起こすと電撃を食らわせますので、

………良い子にしてくださいね。」

にっこり、虫も殺さないような顔して、えらい事いう担任だ。

でも、大丈夫。私は戦闘狂じゃないもんね。ドキドキ

教室を見回すと、どうも真面目ではなさそうな子も大人しく席について静かにしているってことは・・・よし、この先生には極力逆らわないようにしよっと

「皆さん、いい子で先生は嬉しいです。

 では、早速ですが皆さん移動しましょう。

場所は西の森の入り口です。

 そこで軽い実習をします。これからの実習や任務にむけての予行練習のようなものなので、真剣にお願いします。」

これが、琴音が言ってたドッキリ実習か。

確か、五人一組の班で上級生の随員が一人。

基本、これからの校外実習や任務はこの班員でやっていく。随員はその都度変わるけど、班員とは上手くやらないといけない。変な騒動を起こして目立ちたくないしね。

「班員は五人、そこに指導役として上級生が一人つきます。

 森の中では異形が住み着いていますし、指導役にならなかった上級生が敵として攻撃してきます。

 班で協力して、指導役の先輩の言うことをよく聞くように。

 班員を確認後森の入り口に速やかに移動するように。」

そういうと、来栖先生は黒板に一枚の紙を貼り付けて教室を出て行く。

生徒の方も、さっさと黒板に集まって班員で纏まっていく。

いやいや、おいおい。

このクラス、五人の外部組中四人いますけど?

その紹介も、説明もなしなわけ・・・西の森の入り口って何処よ・・・

ほら、席についたまま呆然としている藤巻陽太と氷川智穂がいるよ。

あっ声かけられてる。

あれが班員の子たちかな

ってことは、私や琴音にもそろそろ・・・

「えっと、二人が六衡さんと萩野さん?」

きたこれ。

「そうだよ。君は私と琴音、どっちの班員?」

声をかけてくれたのは、背の高い眼鏡の優男。190近くないかな。バスケ部かバレー部か。

「僕は大場涼おおば すずむ。君たち二人の同班だよ。

よろしく。」

なんと!私と琴音は同じ班だなんて。

なんらかの作為が働いてるな、これは。

だって、普通は外部生はそれぞれを振り分けて溶け込めるようにするものだし。

「それで、こっちが平井要ひらい かなめでF組五班になる。

 人数上、僕たちは四人班になるんだって。」

よっと涼の後ろで手を上げているのは、ちょっと制服を着崩したプリン頭の目つきの悪い男。涼より頭一つ分背が低いけど、威圧感は半端ないな。主に目つきのせいで。

典型的な不良だぁ。プリン頭なんて久々に見た気がする。

「私は、六衡后ろくひら きみ。よろしくね。」

萩野琴音おぎの ことねです。どうぞ、よろしくお願いします。」

「名前で呼んでもいい?これから仲良くしよってことで」

私が首を傾げて聞いてみると、いいよと笑顔で了承された。

要の方も口元を上げて、かまわねぇって言ってくれた。硬派ってやつだね。

「それじゃあ、移動しようか。あんまり遅いと先生に電撃食らわされるし、あれ痛いんだよ」

「真面目そうなのにされたことあるんだ?」

「こいつの見た目に騙されたら痛い目みるぞ、六衡。

 悪戯が過ぎてB組からF組に落されるような奴だ、涼は。」

能力が弱いからだと思ったら、まさかの素行不良組でしたか。

見た目優男で悪って定番といえば定番だけど・・・

「ちょっと遊んだだけで先生に泣きつくんだもん、お坊ちゃまには困ったものだよね」

つまり、B組にいる家柄組をいびり倒したってことですか、涼さん?

「僕の能力は、数分先の可能性を視て選択する。冥王に属するものだよ。

 それで、ちょっと転ばせたりしただけでこれなんだもん。」

「たち悪。私のは、銃器を生み出す能力。夢王と空王に属するダブル。

 風に属する探知能力と夢に属する仮想を現実にする能力を合わせたものって言われたけど、

 よく分からない。」

「確かに、理論とか構成とか研究者が言うことって訳分かんないことが多いよね。」

「俺は人狼だ。」

「!犬耳は!?」

人狼や吸血鬼などの『獣王の末裔』って言われる異種族は人の目から隠れるように暮らしていることが多い。だから、要が私にとって初めて出会った異種族だ。

「初対面でそんなこと言われたのは初めてだよ。誰が見せるか」

思わず、もふもふの犬耳と尻尾を想像して凝視したら頭をはたかれた。

「きみ、失礼なことしたら駄目じゃない。

 ごめんね、要君。きみが馬鹿なことしようとしたら、思いっきり指導していいから」

琴音がひどい。

「私の能力は、人の視界を借り受けること。対象は一キロ以内。

 でも、相手に気づかれて拒絶されたら駄目な弱いものよ。迷惑をかけてしまうかもしれないけど、

 努力は怠らないつもり。よろしくね。」

「そんなことないよ、琴音ちゃん。僕のだって、数分先の可能性だからね。

 でも、協力すれば良い感じの班になるよ。琴音ちゃんが偵察、僕が誘導、要が前衛、后ちゃんが後衛」

確かに。琴音が視界を借りることで敵を見つけ、涼が可能性を弄って行動を誘導して追い込み、私が銃器で奇襲をかけて、要が特攻する。なかなか、良い班じゃないかな。

でも、一つ大問題が・・・(汗)

「一つ宣言しておくけど。

 私、銃をまともに撃てないから。流れ弾には要注意!!」

腰に手を当て胸をそらしてドヤ顔をしてみた。

「・・・了解。大丈夫。練習すれば上手くなれるよ」

あれぇ?涼の顔がスパルタママみたいになってる。

見上げる首を下ろして目を背けることにした。


あれこれ話している内に、あぁら不思議。

森の入り口に到着しました。

すでに一年全員が到着したみたいで、ちょっとした広場も狭く感じる。

一クラス25人前後の6クラス、+上級生だからまぁまぁの人数だね。

「こんだけの人数が入ったら、森の中ごちゃごちゃしない?」

隣にいる涼を見上げる。首が痛い。

「ちょっとした仕掛けがあるんだよ、この森。入ったら驚くよ。」

「涼と要は入ったことあるの?」

「中等部の時に数回ね。もちろん先生の引率ありで皆で固まってだけど」

涼の言葉が止まり、驚いた顔で前方を凝視した。

顔を向けた私の顔にも、同じものが浮かんでいることだろう。

「F組の五班は君たちかな」

どっしりと落ち着いた腰に響く渋い声音、シワ一つない制服に精悍な顔立ち、固く結ばれた口元に浮かぶ小さな笑み

風紀委員長 清水晶人。

文武両道、真面目系大和男子

空間を操る能力を用いて闘う映像に悶える乙女多数、その渋く男気溢れる立ち姿に悶える乙女系男子多数。映像化では、その声は渋さと色気を合わせた有名処の声優が務め、何度鼻を押さえたことか…

一番好きなキャラでしたが、なにか?

「まっまさか…僕たちの随員って…清水先輩ですか…」

「そうだ。不足か?」

「まさか!?そんな訳ないじゃないですか…むしろ過分ですよ…」

ちらっと見れば、要も目を見開いて驚いてる。

周囲にいた他の班も驚いて固まっているみたいだ。

「そうか。ならば早速だが、森に入ろう。」

「えっ?」

「本来ならば自己紹介をしてからのスタートという流れだが、

実際に動きながらの方が理解もしやすいだろう。いくぞ。」


そうして、私たちは一足早く森に足を進めた。



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