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后の保護者が・・・

ぽかぽかと暖かい、日当たりのいいベンチ

料理上手な琴音が作ったお弁当

自己主張の激しいお腹を刺激しまくる、焼けた味噌の匂い


そんな状態の中、私は隣に座っている琴音に身体を向けて、お弁当と箸を落ちないように琴音との間に置いてから、ベンチの上に正座して琴音の言葉を待っています。



「あのね、きみ。」

「はい。」

「貴女が大きな怪我をしたから、保護者に連絡をしなくてはいけないということになったの。ここは教育機関だし、授業中での事だから、それは当たり前のことよね?」

聞かれるであろう事を歩きながら予想していたのだが、そのどれにも当て嵌まらない琴音の言葉に一瞬頭が動きを止めた。

「それは、そうだよね。ってことは、院長先生に連絡行っちゃったんだよね?心配させちゃったかな?後で電話しておかないと・・・」

寮付きの高校に上がるってことで孤児院は卒院したことにしてあるのだが、保護者の欄には確か院長先生の名前を使わせてもらった気がする。

だとしたら、大怪我を負ったと連絡を受けた優しい院長先生が心配しているだろうなぁと心苦しくなる。いや、昔からやんちゃばかりしていたから、またあの子はって怒っているかも知れない。電話したら、そのままお説教タイムかな?

「いいえ。院長先生の所へは連絡していないの。」

えっ?

いや、いやいや?

私、ちゃんと入学する時の書類に記入したよ?まだ、痴呆は入ってないから大丈夫だと思うんだけど・・・?

驚いている私に、続けて投下される琴音の暴露。

「きみの書類にはね、家の住所はあったけど電話番号は無かったのですって。

だから、緊急連絡先に連絡を入れたそうなの。」

あれれ?

そんなアホなうっかり、やっちゃってましたか・・・

でも、緊急連絡先って?そんなところ書いたっけ、私。外に連絡が必要な場所って院長先生くらいしか無いし・・・

つい最近書いたはずの書類を思い出そうと、無い頭を捻って首を傾げる。

「ねぇ、きみ。

どうして、緊急連絡先が、私の父になっているのかしら?」


あの、おっさんの仕業か!!


私が書いた筈は無い!だって、あのおっさんは人の夢に出てきたり、頭に直接話しかけてきたりで連絡先なんて知りようが無いし!

「琴音には内緒だからね?嫌われたくないし!」って可愛い子ぶってた癖に、何してくれてんの!?


「連絡を受けてやってきたのは、父の傍で見たことがある人だったの。

 側近のクロドさんだったわ。

 あちらから挨拶してくださったから間違えのはずもないわよね。」


隠しておきたいのなら、顔バレしている人を送らないでくれます?

駄目だ。

ごまかせるわけがない。

これを、私のせいにしたら、組合に訴えてやる!組合が何処にあるのかわからないけど。あっ!掲示板の面々に訴えればいいのか?


「ねぇ、きみ。何で?」

頭の中がグルグルと、何かいい言い訳がないかと頑張っている。けれど、何にも浮かんできません。助けて下さいって、誰に助けを求めてるんだろう、私。

「使い魔って、何のこと?」


撃沈。

けーおーまけ・・・


「えっ・・・と、それは何処で・・・なんで・・・・あの、ですねぇ・・・」

多分、今の私を言葉で表現するなら、漫画とかでデフォルメされている政治家の謝罪会見じゃないかな。

琴音のことは大切な親友だと思っているから、何もかもを話してしまってもいいとも思う。だけど、前世の話とか、ゲームでの私や琴音の事とかを知っていると話したら、嫌われるんじゃないかと思うと踏み切れない。だって、勝手に琴音の秘密を知っているってことだし・・・


ぐちゃぐちゃの頭を回転させても、いい考えなんて浮かんではこない。


「・・・ごめんね、きみ。」

何を言っていいのか迷っている時に、先に琴音が謝られて、「もう近づかないで」とか「友達じゃない」とか、そんな言葉が続くのかと悪い方向に考えてしまって、涙が出そうになった。


「お父さんから聞き出したの。

お父さんが無理矢理、使い魔の契約を結ばせたんですって?気づいてあげられなくて、ごめんね。あの人は、ちゃんと叱っておいたから。あんなのの娘だけど、まだ友達でいてくれる?」


思わず、いやだ!って言いそうになった。

でも、真っ白な頭に染み込んできた琴音の言葉は想像していたものとは間逆で、口から出そうになった言葉を慌てて飲み込んだ。

「えっと、聞き出したって・・・」

「クロドさんから話を聞いた後に呼び出したの。

適性があって、きみを使い魔にすれば私の様子を何時でも観察出来ると思ったって白状したわ。もう、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、あそこまではた迷惑な馬鹿な人だとは思わなかった。」

確かに、半年前に使い魔にされたと時に、マジでそう言われたんだけど・・・。

私、琴音に嫌われてない?

「こ、こっちこそ、ゴメン!あいつに言われて、琴音の写真とか様子とか回してた!

本当にごめんなさい!お願いだから、嫌いにならないで!!」

奴に言われて横流ししていた件を白状して、琴音に許しを請う。

「きみは悪くないわ。全部お父さんが契約を盾にして命令していたんだから。皆が言っていたわ。契約を断ることは無理だったって。」

確かに問答無用だったけど・・・。部下に売られたのか、哀れおっさん。あそこの側近の人たちって、あの人に忠誠誓ってる筈なのに、面白そうだと思うと何でもするからな。今回のも、娘に怒られてしょげてる様子をニヤニヤ観察しているんだろうなぁ・・・

「安心してね。しばらくは大人しくしている筈だから。しばらく顔見たくないって言っておいたし、お母さんにも御爺様にも連絡しておいたから。」

琴音の母親ながら、おっさんとは犬猿の仲な人と、頭が上がらない先代に、溺愛している娘の快心の一撃に、今頃仕事も手に就かずに落ち込んでいるであろう姿を思い浮かべて、心の中で手を合わせておいた。

「でも、適性って?適性持ちなんて滅多にいないから、つい。って言い訳をしていたわ。」

「え・・・・っと・・・」

何だか、琴音なら大丈夫な気がしてきた。

よし。

なるようになれ、だよね。琴音が友達じゃないっていっても、私が諦めずに友達だって言っていればいいんだよ。執念深さは、ゲームの中の六衡后で証明済みさ。


前世の記憶があること。

それが適性ってやつであること。

他にも、王の使い魔って存在が校内にいるってこと。

それだけと琴音に説明した。

やっぱり、ゲームの中の話までは怖くて出来なかったけど。


「そうだったの。じゃあ、学校の中で時々見かけた変な気配をしている人が、その使い魔の人なのかしら。」

こちらがあんなに悩んだことが馬鹿みたいに思えるくらい、あっさりと受け入れてくれた琴音が、入学してから時々感じていた違和感のような気配のことを教えてくれた。

「今度、どの人から感じるか教えてくれる?」

「分かったわ。きみも、父から何か言われたとか、何かしなきゃいけないって時はちゃんと教えて頂戴。ただ心配しているだけよりも、私にも手伝わせて欲しいから。」

『夢王』だとか、氷川美智のこととかを考えれば、そんな危険なことに巻き込みたくないとは思った。だけど、琴音の申し出が嬉しくて、分かったと頷いてしまった。



更新の合間が開いてしまい申し訳ありません。

これからは月曜日に更新出来る様にしたいと思います。


次回は27日(月)に更新します。

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