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夢と神

やだ

行っちゃやだ



あぁ、これは夢だ

まだ小学校に上がる前

よく面倒をみてくれた義兄が引き取られていったときのだ。

あの頃、力を使い始めていた私に近寄れたのは二人の義兄たちだけだった。

その二人の義兄たちが私と同じ能力者だったからだ。

私にガンアクションのアニメやら映画を見せた義兄のいっちゃんと

意地悪くて、でもたちの悪いいじめっ子からは絶対に守ってくれた義兄のあっくん。

二人ともすぐにいなくなっちゃた。

能力者はすぐに引き取ってくれる人が見つかる。

その能力の系統で血縁が見つかったり、能力をもつ子供を取り込もうとする家だったり。

いっちゃんは後者の、あっくんは前者の、家に引き取られていった。

そう考えると私、というか六衡后って不思議だな。

一応能力者なのに引き取られることもなく成長してるんだから。


元気かなぁ、二人とも。

琴音と一緒に、二人にはよく遊んでもらったし、力の使い方も教わった。

時々、こんな風に夢に出てきて、会いたいと思うんだ。






ていうか、私なんで夢を見てんの?






確か、氷川美智が二度目の暴走をして・・・

あの氷川美智は怖かった。

焦点の合わない目でブツブツと世界を否定する姿。


なんでよ。

ここはゲームでしょ。

私はヒロインでしょ。

なんで、皆、私を置いていくのよ。

私を守りなさいよ。

私を心配しなさいよ。


彼女は信じている。

この世界が自分を中心にしたゲームの世界だって。

・・・そう信じ込まされている、あの女神に。

『夢』を司る夜の神

ゲームの全てをクリアした時に判明する、全ての黒幕。

世界を壊して、全てをやり直そうとする狂った神

氷川美智は手帳を通して女神からアドバイスをもらっていた。

あの神は人を惑わして操ることが得意だから、彼女は協力関係だと思っているだろうけど、きっと駒にされているんだろうなぁ



「そう、彼女はあれのいいお人形だろうね」


げっ


「げっ

 とは何だ。

 ご主人様のご尊顔をご拝見できて感無量ですと、咽び泣くくらいしたらどうだ。」


いやいや、なんか日本語おかしいって、おっさん


「日本人じゃないから、日本語おかしくてもいいんだよ。」


金髪に青い目

真っ白なスーツを身に纏った、にやにや笑う優男

知らない奴が見たら、漫画に出てくるような王子様のその後って感じだ。

こんなんでも、裏社会を牛耳っているヤバイ人なんだよね。


「っていうか、何しにきたの?」

暇を見つけちゃあ人の夢に割り込んで琴音のこととか聞いてくるんだけど、今日は違うような気がする。

「何って、死にそうになってるから助けに来てやったのに冷たいな。」

「死にそう?」

「なんだ、覚えてないのか?」


えっと、暴走した氷川美智が怖かった、ところまでは覚えてるんだけど・・・


「お前は、間近で起こった暴走から可愛い琴音と氷川智穂を庇って負傷。

 すぐに森の外へと退避したが、少し傷が深い上に意識不明の状態だったんだよ。」

「えっと・・・?」

「俺がお前の中に入って干渉してやったから傷はすぐに塞がったが、

 『夢王』の使い魔状態のあの女の力のせいで魂の方も不安定になっているから、それを癒している。

 それが、今の現在だ。」

つまり、結構どころか確実に生命の危機じゃん・・・

「あ・・・ありがとう?でも、琴音は大丈夫だったんでしょ?」

「お、ま、え、は!

 僕の琴音を守って、よくやったと僕が褒めに、褒美に助けてやろうと来たとでも?」

おぉ、王子様スマイルのくせに異様に怖い気配を撒き散らしますか。

おっさんの周囲に黒いもやみたいなのが出てきているのは勘違いだと、いいなぁ・・・

「お前があの時にすべきだったのはねぇ

 僕の名を呼ぶことだ。」

えっ

まさか・・・

「そしたら、パパありがとう、かっこいいって可愛い琴音が抱きついてきたことだろう。

 なのに、そのチャンスを消し去ってくれたんだよ、お前は!」


・・・私のことを心配してくれたのかと思った。 

あぁそうですね。初対面で攻撃してくるような可愛げのないガキなんて可愛い娘の傍に置きたくないくらいに嫌っていることはしってますよ~だ。

いっつも、それで喧嘩になって琴音に怒られている。

そんなことも忘れて、一瞬ウルッってしちゃったじゃないか。

あぁ損した!!


「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまでとはな!

 いいか、今後このようなことがあったら間違えないことだ。

 お前は、僕の名前を呼べばいいんだ!僕の使い魔なんだからな!」

 

わかったら、さっさと起きて琴音を安心させろ!

可愛い琴音の泣き顔も可愛くてしょうがないが、僕はあの子の笑顔が好きなんだからな!







6歳になるかならないくらいだろう。

幼い子供の姿になっていた后の姿が空間に溶け込むように消えていった。

それまでに見ていた子供の頃の思い出を見ていたせいで自分の姿が子供になっていることに、あれは気づいていたのか、いないのか・・・


「哀れな人形だ。

 そして、可愛くない人形だ。」


あれが見ていなかった方角に、空ろな目で佇む少女がいた。

后が言う、前世にあったというゲームでは美少女という設定だったらしいが、これの何処が美しいのか。

見てくれはいいかもしれないが、その心根が滲み出ているようにその周囲は真っ黒に薄汚れている。

そして、その色は『空王』の中に刻まれた初代である風の神の記憶にあるものと同じだった。

狂った夜の神『夢王』の色。

見ているだけで気分が悪く、嫌悪だけが浮かんでくるその色と気配は、その少女に完全に同化している。


「消してしまおうか。

 可愛い、私の娘たちに害なすしかないのだから・・・」 


「やめなさい。

 それは私の玩具。

 邪魔するな。」


こちらを睨む、ピンク色の少女

ぼろぼろになったウサギのぬいぐるみを抱きしめたその姿は庇護欲を誘うが、その目はどろどろと澱んでいる上に、恨めしそうなその色は恐怖を通りこして哀れみと嘲笑を生む。


「邪魔ねぇ。

 それは、我々の台詞だ。

 とうの昔に置き去られた過去の遺物ごときが無闇に世界を乱すな。

 今を生きるものたちの邪魔をするな」


『空王』は、その血で神の力と代々の記憶を継ぐ。

始まりである風の神は、歴代の『空王』の中で眠り続けている。

時折目覚めることもあるが、それは本当に世界が危うい時だけだ。

最近、その彼が時折話しかけてくる。

この目の前の幼子のことを

それだけ危険だということだ、この『夢王』の狂気は。


「生意気よ。

 紛い物の癖に。

 神たる私の前に立つことさえ不遜な存在の癖に。」

「紛い物ね。

 世界にまぎれることも出来ずに、置き捨てられただけの癖に。

 歩みを止めた化石は偉そうにするだけは上手いことだな。」


おっと重圧が増したな。

身体が重い。

さすがに、夢という領域では『夢王』には敵うわけがない。

完全に夢が閉ざされる前に退散するとしよう。


「今はまだ時ではない。

 不用意な干渉で世界を壊したくはないからね、僕は。

 でも、首を洗っているといい。

 お前の愚かな願いは、夢であるしかないのだからな」





さぁ、帰る前に可愛い琴音にあっていこう。

后を目覚めさせたのが僕だと気づいているだろう。

だから、きっと僕を抱きしめて出迎えてくれるはずだ。


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