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上手くいかせない

「あ、あの・・・」


彼女が現れたのは、琴音たちがアレクたちを引き連れて后と清水先輩の下へ戻ろうと木々の間を進んだ時だった。草木の間から現れた彼女は、おびえたようにオドオドとその桜色の髪を弄り、しかし桜色の目はしっかりとアレクだけを見ていた。

潤んだ上目遣いの目を向ける美少女。

大概の男は胸を高鳴らせるものだろう。


「君は?なぜ、一人なんだ?」


「あっ、B組3班の氷川美智です。班の子たちと逸れちゃって・・・

 わたし・・・心細くて・・・」

グス 口元を押さえ涙ぐむ美少女。

普通ならば、男たちの視線を一身に集める光景だ。

美智もそのことをしっかり理解している。

なぜなら、この世界に生まれてから今まで、家族たちを、親戚たちを、美智が接する社会を虜にして、お姫様として君臨してきたのだから。

美智は知っていた。

この世界が美智の為の、美智がヒロインの世界なのだと。

今までも、これからも、美智以外が注目が集まることなんてあってはいけないことなんだ。


「そうか、なら君の班を探そう」


えっ?

なんで?なんでよ?

『大丈夫だ。俺と一緒なら、怖いことはないだろ』

そういって、美智の涙を拭いてくれる場面じゃない。

それで、消えた班員を探すんでしょ?


「清水は妖精王系統の能力を持っている。

 この森の中も把握することが出来るだろう。奴に頼もう。」


「ちょうど、清水先輩と后ちゃんのところに行く所ですもんね。

 良かったね、氷川さん?」

涼がアレクの横へと進みでて、美智に笑いかける。

自然な形で、アレクの隣にいた琴音を自分の後ろへと下がらせるとその姿を隠した。

戸惑いながらも、不穏な光を集める美智の視線から。

その考えを察してくれた琴音は大人しく、一番後ろにいた志都美と智穂の元へゆっくりと、気づかれないように下がっていく、三人の前には慶介たちが立ち塞いだ。

涼たちには、ちゃんと見えていた。

美智が現れてた途端に怯えて震える智穂の姿

そして、笑っているアレクの目に笑みが宿っていないことを


「まずは清水に連絡を入れよう。」

アレクが携帯を取り出し操作を始めた。

アレクの視線が自分から外れ画面へと移った瞬間、美智の顔が一瞬だけ歪んだ。

それは、自分の思い通りに動かない状況への苛立ちだった。

 

「あぁ俺だ。」


「そうだ。どうする」


「分かった。」


携帯を閉まったアレクは、美智には視線を戻さず、背後にいる涼たちを振り向いた。


そんなモブなんか見ないで、

美智を見なさいよ!!


ありありと何を思っているか分かる美智の表情に、琴音たちの目の前、男たちの一番後ろに陣取っていた要が笑いを堪えきれずにいた。

もちろん、美智からは分からないようにしているようだったが、涼たちには抑えきれずに漏れたくぐもった笑い声で気づいたし、真後ろにいる志都美は呆れ果て、口元を抑える要の足に蹴りをいれた。

それは、自分や琴音に支えられていないと立っているのも難しいほどに怯えている智穂への気遣いだった。


「清水たちがこちらに来ている。

 后は気を失ったそうだ。」


「きみが!!?」

「えっ?何があったんですか?」

「ぴんぴんしてたぞ、さっきまで?」


アレクの言葉にF組5班のメンバーは驚き、声を張り上げた。

后を直接しらない志都美や智穂たちも心配気にアレクを窺っている。


「心配はない。

 蜘蛛の姿をした異形が現れて、錯乱した后が能力を乱発、そのせいで力が枯渇したそうだ。

 まぁ、言ってみれば自業自得だな」

「・・・きみ、蜘蛛嫌いだから・・・」

苦笑して告げたそれに、親友である后の弱点、そして、それに関わることで后が起こした過去のあれこれを思い出し、琴音はホッと息をつくと同時に困った顔を、向けられた全員へと返した。

意味がよく分からず説明を求めて琴音に視線を向けた涼たちも、呆れ顔になって、それでも安心した途端に込み上げてくるものを吐き出した。

「ぷっ

 あはははは

 嫌いだからって銃、乱発しちゃうの?」

「えっ、何?六衡さんって、そんな能力なの?

 あっぶねー」

「・・・清水先輩は大丈夫なんすか?」

涼は腹を抱えて大笑い、

要は后の射撃能力の欠如と錯乱状態ということで、何度か流れ弾を喰らいそうになった経験者としてアレクに清水の安否を尋ねた。その顔は渋く歪めている。

「大丈夫だ。空間を遮断して防いだんだろう。

 このまま進めば自然と合流するだろう。

 ・・・・そうすれば、君の班もすぐに見つけれるな、氷川」

「えっ・・えぇ・・・ありがとうございます、アレク先輩・・・」

自分が無視され進んでいく状況に呆然としていた美智だが、流石にアレクに話しかけられると我に返り笑

顔を作った。それは、庇護欲を誘うように作られてものだが、この場にいる誰にも効くことはなかった。





なんで、

美智がいるのに、

モブになんて目をやるのよ

それに

なんで

なんで、お邪魔虫がこんなところにいるの?

女神ちゃんが言ってたわ。

双子の妹と、気持ち悪いあの女と、戦闘狂なんていわれてた狂った女はお邪魔主だって

あいつは、私の世界を壊そうとするって

あいつは、私の世界を奪おうとするって

あいつは、あいつは・・・


ピシっ


大丈夫

大丈夫よ、

だって、女神ちゃんが言っていたもの

みんな、私の為のものだって


まだ、二つしかルート攻略してないのに転生しちゃったけど


そうよ、だからだもの

これは、私の知らないルートに入ったからなの

全部 全部 逆ハーエンドの為のシナリオなのよ

私には女神ちゃんがついているもの

この世界は私のものだもの

私の邪魔する悪い子たちは女神ちゃんの言うとおり、早く排除しなきゃ

でも・・・私に嫌な思いをさせたんだもの

苦しくて、怖くて、

そんな風に排除してやらなきゃ






 そうよ

 排除しなくちゃね

 アナタの邪魔になるものは

 ワタシの大切な計画の

 邪魔になるんだから


后「ちょっと!

  私がアホな子みたいな扱いになってるんですけど!!?」

晶人「でも、蜘蛛苦手なのは本当でしょ?」

后「なんで、あんたが知ってるのさ」

晶人「なんでも知ってるよ、后のことは」

后「・・・・・・・助けて~琴音。変態がいるぅ~」


琴音「・・・なんだか、きみに呼ばれたような・・・」

アレク「・・・助けを呼んでいるのかもな・・・」

琴音「何か言いました、アレク先輩?」

アレク「いや」


志都美「ねぇねぇ。六衡さんって蜘蛛見たらどんな反応なの?」

琴音「・・・小さい頃だと・・・あれを出そうとしたわね、駆除するのに」

涼「あれって?」

琴音「・・・・・・核爆弾・・・・」

保「ド○○○んかよ!!!」


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