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僕たちはモブ、ノー巻き込まれ。

高校から入学してくる外部生には格別の注意が必要だ。

奴らには三つの種類があるからな。

一つは、能力が定まらず危険性がないからと放置されていたタイプ。

これは、大抵が弱い力しかないが、成長してから能力が定まったということは制御の方法を知らないということで暴走を起こす危険性があるから注意が必要だ。

二つ目は、希少な能力を持つことが多い、名家と呼ばれる家に生まれたタイプ。

このタイプは、力も能力も安定していて制御の方法も完璧だ。その家に継がれる能力をもっていることから希少な存在でもある。

だけど、大概そういう奴は自惚れているし、自分が中心じゃないと気がすまないお坊ちゃま、お嬢ちゃまだ。周囲を我侭で疲弊させるし、怪我でもさせようものなら、名家の力で圧力をかけてくる。絶対に近づかないよう注意が必要だ。

最後は、自分の能力を小さい頃から自覚して、学園から逃れ続けたタイプ。

一番注意が必要なのはこれだ。能力者ってのは物心ついたあたりから探し出される。そんな頃から、周囲の目を欺けるほど力の制御ができていたってことになる。しかも、高校に入るまで逃げ続けられたってんだから実力は推し量れるってもんだ。

そんな奴らが何で高校には入学するのか。

企んでいることがあるか、純粋に諦めたのか。見極める必要がある。




僕が尊敬してた先輩のありがたいお言葉だった。

3つ年上のその先輩は今は大学部へと進んで能力の研究をしている。

先輩が高校入学のさいは、二つ目のタイプの外部生がきて多大な被害をもたらしたと噂された。

噂だけだったのは、情報操作に優れた能力を持つ生徒が高等部以外にその情報が漏れることがないよう能力を酷使したからだ。

その能力者は、力の使いすぎで倒れ、未だに島内にある病院から出ることができないそうだ。


先輩は、僕が所属する「ハロウィンクラブ」の大先輩だ。

悪戯とコスプレが主な活動内容。

なんでも、悪戯好きな彼氏とコスプレ好きな彼女が一緒にクラブ活動をしたいからと結成した部活らしい。今では規定人数に達しているにも関わらず同好会扱い、活動内容に沿った健全な活動をしているにも関わらず教師や生徒たちから睨まれ恐れられる闇の部活動となってしまったが、入部希望者が途切れることのない隠れ人気部となっている。


そんな「ハロウィンクラブ」は、上記の先輩の教えを元に代々自分たちの代に入学してくる外部生の情報を密かに集めるのが新年度が始まる際の重要活動としている。


僕たちの代は、そんな調査の結果・・・

最悪だった・・・


何が最悪か。

それは、三つのタイプが全部そろっているということ。そして、タイプを重複している生徒がいること。

調査結果を報告したところ、会員全員が頭を抱えてしまった。

そして、同じクラスになる会員が様子を探り、注意を怠らないことにした。

それしか、対応策が思い浮かばなかったともいう・・・


僕と同じF組には三人も配属された。

他にも会員がいるから、一人でということではないのが唯一の救いか・・・

そして、実習班には外部生と同じ班になるよう、来栖先生が配置してくれた。

先生は「ハロウィンクラブ」のOB。

創始者と同じ世代で、雷を操るアニメキャラクター(正義の味方)のコスプレをして、電撃で生徒たちに嫌われていた教師を追い掛け回したと伝説に残っている人だ。

ただ、それぞれ一人ずつを分けようとしたら、ある筋から琴音ちゃんと后ちゃんを同じ班にと言われたらしく、彼女たちは僕と一緒の班になったらしい。

何それ、すっごく気になる。

けど、聞いたらいけないと来栖先生の目が言っていたから、僕は何にも聞かないことにした。


ドキドキ 鳴り響く心臓の音を聞きながら、僕は二人に話しかけた。

すると、二人ともとっても良い子みたいで安心したんだ。


后ちゃんと琴音ちゃんは、三つ目のタイプだった。

能力を隠して暮らしていた中、任務中だったアレク先輩たちに見つかってしまったらしい。

二人の情報はそれしか分からなかった。

でも、話してみて分かった。二人は注意する必要はないって。

それに、あの清水先輩とアレク先輩にとって二人が特別に思っている様子で、深く踏み込んではいけないと報告する必要が出てきた。

誰に対しても心を開かず表情を変えることも少ない風紀委員長の清水先輩。

誰にでも平等で接するけど特別を作らなかった薔薇寮寮長のアレク先輩。

二人とも、それを否定しないし、学園の誰もが知っていることだった。

その二人が、二人に対しては笑うし、自分から話しかけるし・・・

・・・・・・もしかして、二人は先輩たちの逆鱗になるかもしれないって

多分、僕たち全員が分かった。

これは、「ハロウィンクラブ」だけじゃなくて、生徒全員に伝達しないといけない情報だ。


さっき合流することになった西塚たちの班に配置されたのは、氷川智穂さん。

彼女は、一つ目と二つ目。

氷川は、華道の家柄で地王や樹王の系統の能力者を代々輩出してきた名家。その本家の生まれだ。

でも、彼女は幼い頃に本家から出されて能力者ではない遠縁の家に預けられたらしい。

詳しいことまでは調べられなかったけど、二つ目みたいな注意が必要な子ではないだろうっていうことは彼女と接してみて確信した、というのは会員仲間の慶介から言われた。

彼女の能力は「自分の周りにある能力をかき消すこと」らしいから、今まで気づかれることがなかった、ただそれだけの理由でも納得できることだし・・・

ただ、この能力はまだまだ謎が多くて危険だっていうのが気になるね。


もう一人、藤巻陽太ふじまき はるたは一つ目のタイプ。

まだ、同じ班になった会員、近藤瑞希こんどうみずきの話を聞いていないから本当のところは分からないけど、彼もそんなに注意する必要はないんじゃないかな。

「鉄をも握り千切る腕力」っていうのも制御の方法を覚えれば、そんなに危険なものでもないし。

ただ、いきなりそんな能力を知ってしまって心が不安定らしいけど、

それも能力者ばかりのこの学園にいれば、そのうちに慣れてしまうだろうしね。



本当に注意しなくちゃいけないのは、B組になってくれたから本当に良かった。

それなら、僕がそんなに関係しなくていいしね。

あれは駄目。絶対に駄目だ。

最強最悪に悪条件が重なった外部生だ。

情報を確認した先輩が、悪夢の再来だって言っていたから確実だね。


氷川美智


氷川智穂さんの双子の姉。

遠縁に預けられた彼女と違って、名家であることを誇る本家で大事に大事に育てられた愛娘。

有り余る強力な力を持っているけど、それを能力という形になさない不安定なもの。


誰も知らないと思っているみたいだけど、

僕たち「ハロウィンクラブ」の調査能力は、言っておくけど有能だよ?


傲慢で我侭で、自分が一番じゃないと、皆が自分を愛していないと気がすまない性格なんてお見通しだ。





まったく、僕の高校生活、退屈しなくてすみそうだよね。


極力、関わりたくなんてないけど・・・

でも、それはそれで、とっても面白いことになりそうだね。



「涼」


近づいてきた慶介が笑っている。


「悪い顔だよ」


うるさいよ。

そういうお前だって、腹黒がにじみ出る悪い顔じゃないか。



要と孝典、保が苦々しく笑って、肩を竦めあっているのが見えるけど、

それはそれで、面白い。




志都美がすごい目でこちらを一瞬睨んできたのも分かってる。

小さく「最低な屑野郎」っていっているのも聞こえたよ。

本当、ギャルみたいなその格好止めたらいいのに。

外見で損している奴だよね、志都美って

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