二等辺三角形
夕闇迫る放課後の教室で男が三人立っていた。
一人は大きな袋を抱えて動揺しており、もう一人は哀れみを込めてその少年を見ており、もう一人はいやらしい笑みを顔に張り付かせていた。
数分間、教室では誰一人話そうとはしなかったが、
我慢が出来なかったのか動揺していた少年が、泣きそうになりながら叫んだ。
「なして俺が、こないなことせなあかんの!!?」
「諦めーや、悠太。罰ゲームなんやから着ないとボコられんで。」
「せやかて、淳!俺の、これ着た姿見て、皆笑うんやろ!?」
「悠太…」
「さーて、悠太くん。お着替えして来てもらいましょうか?」
「立田きーもーいーわっ!」
「生意気なことゆうてると脱がすぞ。ど」
「立田様すみません!着替えます着替えますから!」
「わかればえぇんや」
動揺していた少年、悠太は隣りの教室に袋を持って飛び込んだ。
そもそも、賭けを言い出したのは立田だった。
それは些細な賭けで、負けた者は女装するというそれで、淳か立田が負けて大爆笑するはずだったのだが…最終的に負けたのは悠太だった。
悠太は大きな溜め息を一つつくと思いきって袋を開けてみた。
これは『悠太の罰ゲームのために』立田がわざわざ買ってもって来たものだ。
それを見て思わず悠太は、あまりの屈辱に拳を震わし吠えた。
「なんじゃこりゃぁあぁあっっっっ!!!!」
袋を掴み、二人がいる教室の扉を勢いよく開けた。
そして立田めがけて袋を投げた。それを軽々避ける立田。
悠太の中で何かがキレた。
「立田!!!お前、俺になんてもの着せようとしてんだよ!!!俺は男なんだ!!!ラムちゃんのそれとか、俺胸ないから!!!セーラー服もスカート短すぎだろが!ミニスカは好きだけど、俺は長袖膝丈がよかったっっっっ!!」
「悠太くん。罰ゲームに拒否権はない。」
「帰るっっっっ!!」
悠太は鞄を引っ掴むとダッシュで廊下を走って行った。
「悠太、可哀相。」
「ほざけ。淳も楽しんでたやないか。」
「ラムちゃんは、ウケ狙いやってんけどね。陸、また株下がったな。」
「また上がるわ。」
「陸の自意識過剰」
「淳、油断してると奪うぞ。」
「やってみぃや。悠太は俺に一途や。」
「友達としてな。」
立田はニヤリと笑う。
「やなやつ。」
淳もニヤリと笑う。
知らないのは、悠太のみ。