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朝七時四分発上り電車三両目

作者: 黄色

朝、七時四分発の上り電車の三両目一番前のドアから入って左手前の一番端に彼女はいつも座っている。




彼女に気付いたのは高校に入学して電車通学を始めてすぐだった。

ここらへんじゃ有名な中高一貫のお嬢様学校のセーラー服を着て、教科書をいつも読んでいる。

下を向いているため、始めは気付かなかったが、ふと顔を上げたときに小学校が一緒だった彼女だと気付いた。

中学から私立に行った彼女とは三年ぶりだった。

小学校のときは髪も短く、男子と変わらない服装だった彼女も三年でずいぶんと女らしくなっていた。

けれど彼女のその透明できれいな雰囲気は変わらないままだった。


彼女から一つ席を開けた場所にいつも座る。

彼女に気付いたときに隣りに座ろうかと悩んだが、小学校のときに気まずいまま分かれたのを思い出し、座る勇気がなかった。

毎朝彼女の前を通り、いつもの場所に座っているが彼女がこっちを見たことはない。

確か彼女の家の最寄り駅は自分の駅のひとつ前だ。

電車に乗ってすぐ教科書を開いているのか、すぐに着く次の駅では顔を上げない。

そんな彼女と一つ席を開けた場所に座り始めて、一緒の電車で通学するようになってそろそろ1年だ。

彼女はいまだに俺に気付いた様子はない。




あっ、彼女だ。


二年生になった始業式の日、午後から入学式のため部活もなく、珍しく学校が終わってすぐ帰ろうと駅に向かった。

改札に入り、ホームに向かう階段の上に彼女がいた。

部活のため帰りが遅い俺は帰りの電車で彼女と一緒になったのは初めてだ。

ちょうど階段を上り終わると電車がホームに入ってきて、彼女がいつもの車両に乗り込むところだった。

同じドアから電車に乗ると彼女はいつもの入ってすぐの端の席に座っていた。

電車内は今日が始業式だったためか、俺と同じように下校しようとする高校生で席が半分以上埋まっている。

そんな中彼女の隣りは空いていた。



小学校以来の近い距離で彼女を見ていた。

朝の電車では教科書を開いているところしか見たことなかったが、今日は表紙にカバーをかけた文庫本を読んでいる。

あいかわらず電車は彼女にとって本を読む場所らしい。

小学生の時はたいして変わらなかった身長もこの四年で差が開いたようだ。

隣りに座る彼女の肩は俺の肩よりだいぶ下にあった。

斜め下で真剣にページの文字を追っている彼女の顔をついじっと見てしまう自分を心の中で必死に戒め、カバンから友人に借りた漫画を取り出して読むことにした。

しかし続きがすごく気になっていた漫画にも関わらず、隣りにいる彼女の方が気になって内容が何も頭に入ってこなかった。


内容の理解できない漫画をぱらぱらとめくりつつ、隣りを意識しないようにしていると突然肩に重みがかかってきた。

驚いて隣りを見ると文庫本に手をかけたまま、彼女が眠っていた。

電車内の電光掲示板を見るともうじき自分の最寄り駅である。

電車の速度が遅くなり、そろそろ降りる準備をしなければいけないが、動転するばかりで声がかけられない。

ぐるぐると葛藤しているうちに駅に着き、ぞろぞろと他の乗客が降りていく。

彼女は眠ったままで起こせないうちに電車の扉は閉まってしまった。

仕方ないので次の次の終点まで乗って折り返してくることにして、彼女に肩を貸すことにした。


次の駅までの短い時間、今まで見れなかった彼女の顔を眺められた。

こちらの気持ちを見透かすようにじっと見つめてくる瞳は長いまつげに縁取られたまぶたに隠れていて、起きていると大人びていた顔が眠っているとずいぶんと幼く見えた。

小学生のころより少し伸びた髪はふわふわと柔らかそうで顔の周りを覆っている。

この柔らかな髪に触れてみたい衝動にかられ、知らないうちに手が伸びていた。


しかし、手が届く直前にぱちと彼女の目が開いた。


目が合い、思わず手が固まってしまったが彼女は気付かず、「あ、すみません」と慌てることなく俺から離れていった。

動けないでいる俺の隣りで彼女は文庫をしまい、立ち上がった。

そのときにちらとこちらを見たような気がしたが、俺が彼女を見たときにはカバンを肩にかけ、電車を降りるためにドアに向かって行くところだった。

ちょうど電車が駅に着いたようだった。


そのまま俺は終点まで乗って折り返して自分の最寄り駅で電車を降りた。




次の日。

七時四分発三両目の一番前のドアからいつものように電車に乗る。

彼女は変わることなくいつもの席に座って、教科書を読んでいた。

そんな彼女を確認していつもの席に座ろうと彼女の前を通ると、


「おはよ」


びっくりして彼女の方を見ると変わらず目線は教科書に向かっていた。


ドキドキと鳴る胸を必死に抑えつつ、彼女の二つ隣りのいつもの席に座る。

彼女の隣りに座る人はいつも数駅先から乗ってくる。




明日から隣りに座って大丈夫かなと思いつつ、三十分の通学電車が楽しくなりそうな予感がした。

意外と電車で本読んでると周り見ないよねという経験から。

ついでに小学校の初恋復活とかかわいいよねーとか素直になれないツンデレヘタレ少年とにぶちん女の子とかかわいいよなーとかなんかそんなのこめてこめられなかった話です。

しかし一年見てるだけってどんだけヘタレだよ!って思いますね^▽^

いつか女の子視点とか続きが書けたらいいなー

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