彼岸花に似たあなたへ
読みに来てくれてありがとうございます。
この話は、自分で書いているのに、なぜか胸が苦しくなりました。
文章は上手くないし、正解も分かりません。
けど気持ちを込めて書きました。
少しでも何感じてもらえたら嬉しいです。
良かったら読んでください。
彼と出会ったのは、16歳の春。
好きになってはいけない人を、
私は好きになってしまった。
彼は高校2年生、クラスが一緒の翠くん。
初めて見た日から、
気になって頭から離れない、
私に衝撃を与えた人だった。
翠くんは素行が悪く、学校に来ても
先生には暴言を吐き、
周りの生徒からも避けられていた。
初めて私が話しかけたのは、
好きになって2ヶ月が経った昼休み。
勇気を振り絞って、彼に近づき聞いた。
「翠くん、なんで笑わないの?」
どうしても気になって、
初めてかけた言葉に私は後悔した。
「は??」
翠くんからの返事に、
私は、そうなるよね…
と自分に呆れて、ため息をついた。
「ごめん。ずっと気になってた。
翠くん、誰といてもずっと怒ってるし、
なんか悲しそうな顔してるよ」
「知らねーよ。関係ないだろ。てか誰だよ」
「私は同じクラスの雪羽。
今さらなんだけど、これからよろしくね」
翠くんは、不貞腐れたような顔でそっぽを向き、
机に顔を伏せた。
これが、彼と初めて交わした会話だった。
それから私は、毎日翠くんに話しかけ続けた。
「翠くん、今日一緒に帰らない?」
「なんなんだよ、お前は」
返ってくる返事は、ずっと冷たいまま。
けど、翠くんがなんでずっと怒っているのか、
笑わないのかが気になって、
いつの間にか私は、話しかけるために学校に来ていた。
⸻
それから数日後。
中庭に続く階段を、
一人で降りている時だった。
私の目の前に見えた光景は、
階段の真ん中を歩いている小さなダンゴムシに、
彼が話しかけている姿だった。
「こんな所にいたら、踏まれちゃうよ」
そう言いながら、
そっと端に寄せてあげていた。
その姿は、
私には優しい心を持った子供のように見えた。
翠くんが私に気づき、
焦って、見たこともない動きをしながら、
恥ずかしそうにしていた。
「翠くん、やっぱり優しいんだね。本当は」
「このこと言ったら……お前、しらねーよ」
私は思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだよ」
「いつも怖い顔してるから、
私が想像してた以上に優しい人だったなって思って……」
「……」
「翠くん、私と付き合ってくれませんか?」
私は、思わず告白してしまっていた。
「……え? なんで俺なんだよ。付き合わねーよ!」
彼はそう言って走って行ってしまった。
振られたはずなのに、
私はそんな翠くんを見る日々が、楽しくて仕方なかった。
翠くんに話しかけ続けるようになり、
少しずつだけど、心を開いてくれているように感じていた。
いつの間にか、高校二年生も少しずつ終わりに近づいていた。
秋の心地よい風が、放課後の教室の窓を通り抜けている。
今日こそ、絶対に翠くんと帰る。
そう意気込んで、私は彼に近づいた。
「翠くん! 今日一緒に帰るよ」
断られると分かっていた私は、彼の腕を引っ張り、急いで階段を駆け下りた。
「おい!」
彼の声を無視して、私は校門の外まで強行突破した。
「はあ……疲れたね。ごめんね、無理やり。
こうでもしないと、無理だと思ったから」
「雪羽、しつこい。毎日。なんで俺なんだって」
初めて名前を呼んでくれて、胸が熱くなった。
でも、それを気づかれないように、私は平気なふりをした。
「翠くんを見た日からずっと好きなの!
私にも理由は分からないけど、
ずっと気になっちゃうんだよね」
「……お願いだから、やめてくれよ」
歩きながら下を向く翠くんは、
今にも泣き出しそうな顔をしているように、私には見えた。
彼を見ると、胸がざわつく。
出会った日から、ずっと変わらない。
「少し、公園にでも寄って帰ろう」
私はそう言って、二人で並んで、夕方の静かな住宅街を歩いた。
⸻
「あ!」
「あ……」
同時に声を上げて、私たちは目を合わせた。
自動販売機の横に、
一輪の彼岸花が咲いていた。
彼も、同じものを見ていた。
翠くんは、彼岸花の前にしゃがみ込み、
人差し指でそっと花びらを撫でた。
「可哀想に。お前も一人なんだな」
私は、その背中を後ろから見つめていた。
なぜか、右目から涙がこぼれていることに気づいて、驚いた。
慌てて拭いてから、彼の隣へ駆け寄る。
「雪羽、彼岸花すき?」
そう聞きながら、まだ花に触れている。
「私が、一番好きな花だよ」
彼は、ニコッと笑った。
「よかったな。お前、好きだってさ」
その一言一言が、胸に響く。
「翠くんは、彼岸花好きなの?」
「好きだよ。
嫌われても強く生きてるから。
かっこいいよ、こいつは」
「私も、そう思ってた」
「雪羽にそっくりじゃん」
そう言って、また笑った。
私の鼓動は、どんどん早くなっていく。
「翠くん。
私のこと、好きになるまで、
ずっと待ってるから。考えてほしい」
気づいたら、そんな言葉が口からこぼれていた。
さっきまで笑っていた翠くんの表情が、少し曇る。
「俺も……本当は」
「え?」
「いや、なんでもない。もう帰ろう」
言いかけた言葉を飲み込むように、彼は歩き出した。
「今日はありがとな。
高校生活、いい思い出が初めてできたわ」
あんなに冷たかった彼の、
優しさを、こんな近くで感じられる。
嬉しいはずなのに、
胸の奥が少し痛くて、体が震えていた。
「そんな顔するなよ。
また明日、学校でな」
「ありがとう。翠くん、またね」
翠くんと少しずつ近づいていく日々が、
現実なのか分からなくなるくらい、
嬉しくてたまらなかった。
家に帰ってからも、
寝る直前まで、ずっと翠くんのことを考えてしまう。
――恋って、こんなにあたたかいんだ。
そう思う自分が恥ずかしくて、
布団に顔をうずめたまま、
いつの間にか眠っていた。
⸻
朝、目を覚まして支度をしながら、
今日も翠くんに会えることが楽しみで仕方なかった。
いつもより少し早足で、学校へ向かう。
教室に入ると、
いつも遅刻してくるはずの翠くんが、
すでに席に座っていた。
「翠くん、おはよう!
なんで今日、間に合ってるの?」
「うるさいな。いいだろ、たまには」
少しずつ、優しくなっていく口調。
それを見るたびに、
自然と口元がゆるんでしまう。
「なに、にやにやしてんだよ」
「べつに!なんか嬉しかったからさ」
朝の何気ない会話が、
私にとっては宝物だった。
そんな時、かすかに耳に入ってきた声。
「……なに、あの二人。
嫌われ者同士? ははっ」
私は、机の下でぎゅっと拳を握りしめた。
私はいい。
せめて、翠くんに聞こえないでほしい。
そう願った。
「お前らさ。
陰口叩くなら、直接言えよ。
てか俺、こいつとなんの関係もねーから」
翠くんが、私を守ろうとしてくれていることは分かっていた。
それでも、胸が痛んだ。
「いや、私、翠くんが好きだから!
私がしつこく話しかけてるだけだから、
ほっといてよ」
教室は、静まり返った。
私は、ずっと一人で生きてきた。
今さら、嫌われることなんて怖くない。
……そう言い聞かせている自分が、苦しかった。
強がって笑うほど、手は震えていた。
「はあ……めんどくさい。雪羽、こいよ」
腕をつかまれ、気づいた時には走っていた。
翠くんがよくサボる、中庭へ続く階段。
そこで、彼は私の腕を離した。
「強がんなくていいよ。
俺のためなんかに、その時間、無駄だから」
「何が無駄なの?
翠くんが悪く言われるの、私は嫌だよ。
自分が言われた方がマシ!」
思わず、声が震えた。
「いいんだって……本当に。
俺は、お前と付き合わないって言ってんだろ。
それが、俺の答えなんだよ」
「お前」と呼ばれたのは、久しぶりだった。
それだけで、
また遠くに行ってしまった気がして、涙がこぼれた。
「……だって、本当に好きになっちゃったんだもん」
翠くんは、私の頬を伝った涙を、
右手でそっと拭いながら言った。
「泣かないでくれよ……頼むから」
その目は、
今まで見たことがないくらい、悲しそうだった。
足元には、あの日、翠くんが助けてあげていたダンゴムシが歩いていた。
「こんな時に……お前は。
危ないって言っただろ」
苦しそうな顔を隠すように、
ダンゴムシに話しかけながら、
そっと端に寄せてあげる。
その後ろ姿を見た瞬間、
私は、気づいたら翠くんを抱きしめていた。
「……どうしたんだよ」
「今だけでいいから……
翠くんが、悲しそうだから」
そう言って、私はしばらく腕を離さなかった。
でも、
彼は抱き返してはくれなかった。
そのまま、一日が過ぎていった。
⸻
土日を挟んで、次の月曜日。
翠くんは、教室にいなかった。
一日中、探しても見つからない。
それから一週間が経っても、翠くんは来なかった。
胸の鼓動が、ずっと早いまま。
「あの日のせいで……
避けられてるのかな」
そんな考えが、頭から離れなかった。
⸻
そして、三週間後の火曜日。
ホームルームの時間。
先生の表情が、いつもと違っていた。
(……やめて)
嫌な予感がして、体が震え出す。
「……春本翠くんですが。
しばらく欠席が続いていました。
昨日、病院で亡くなったと、
ご家族から連絡がありました。
もう、学校に戻ってくることはありません」
言葉が、
黒板に叩きつけられたみたいに、頭に響いた。
何を言われたのか分からない。
……はずなのに。
分かってしまった自分が、嫌だった。
吐き気が止まらず、
私は教室を飛び出した。
息をすることも忘れるくらい、私は走り続けた。
どこにも、もういない。
そんなことは分かっているのに、
一緒に帰ったあの帰り道を、
ひとりで歩き続けた。
気づいたら、
足は自然と、あの場所へ向かっていた。
一緒に見た、
彼岸花が咲いていた場所。
そこで、私は立ち止まった。
そこには、もう。
あの日のように綺麗な花は、なかった。
ただ、冷たい風だけが吹いていた。
私は、その場に崩れ落ちた。
足から力が抜けて、
地面に膝をつく。
ふと、
自動販売機の下に、
何かが挟まっているのが目に入った。
一枚の、大きな紙。
半分に折られて、そっと置かれていた。
胸が、ざわつく。
震える手で、それを拾い、ゆっくり開いた。
そこには、
大きな彼岸花の絵が描かれていた。
下手くそで、
色鉛筆で塗ったみたいな、真っ赤な花。
その下に、小さな文字があった。
「ありがとう。楽しかった。
けど、これは変わらない。
雪羽のことは、好きじゃない。
これは本心だからな。
彼岸花が大好きだったのは、
嘘じゃないけどな!」
読み終えた瞬間、
涙があふれ出した。
止まらなかった。
翠くんが、たった一人で
嫌われ者でいることを選んでいたと知り、
呼吸ができなくなるほど、泣いた。
「……彼岸花が大好きだった、って。
私のこと、彼岸花にそっくりって言ってたじゃん……うそつき」
声は、風に消えていった。
苦しくて、
涙が止まらないのに。
それでも、不思議と、
胸の奥が、暖かい。
まるで、
まだここに、翠くんがいるみたいに。
「大好きだよ」
強くて美しい、彼岸花にまた会えますように。
ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます。
自分で書きながら、苦しくなる事があるんだな。
と実感しました。
自分は、器用ではないけれど思った事をそのまま書きました。
少しでもいいなと思ってくれる方がいたらすごく嬉しいです。




