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ミルクとの生活

 ミルクがこの家に来た翌日、俺は現在朝ごはんを作っている彼女を眺めていた。


「ご飯できましたよー」


 朝ごはんのメニューは焼き魚と味噌汁、そして米だ。

 味噌とかだしとかはミルクのアイテムボックスに入っていた。他にも、2、3週間分の食料ぐらいは入っているそうだ。


「「いただきます」」


 焼き魚を一口食べる。

⋯⋯うま。

 昨日分かったことだが、ミルクは料理がとても上手い。

 なんでも、家では幼い頃からミルクが料理を作っており、そのおかげで料理の腕が上がったらしい。

 焼き魚にぱさつきは一切なく、ふっくらとしていて柔らかい。

 味噌汁を啜る。

 口に入ると同時にだしの風味が香り、味噌の濃さもちょうどいい。

 自分の作るものよりも格段に美味しいミルク作のご飯に舌鼓を打ちながら、ゆっくりと食べ進めていった。


「ごちそうさまでした」


 俺は手を合わせながら言う。

 ミルクは既に食べ終わっており、キッチンで食器を洗っている。

 ミルクに食器を渡してから、椅子に座ってこの後何をするか考える。

 うーん。何しよう。

 外を散策してみてもいいが、外に行ったとて何かがあるわけでもない。

 そうだ。今HP(ハウスポイント)ってどのくらい貯まってるんだろ。

 ウィンドウを開いて見てみる。


――――――――――――――――――――――――――――――


現在のHP 12


――――――――――――――――――――――――――――――


 1週間連続で家にいたボーナスも含めて、12ポイント貯まっていた。

 12ポイントじゃ買えるやつもそんなにないだろうし、別に今求めてる物も無いしなぁ。

 ウィンドウショッピング的な感じで、機能を見ていると、


「何見てるんですか?」


と洗い物を終えたミルクが話しかけてきた。


「この家の機能だよ」


「機能?」


「この家は俺のスキルで召喚した家だから、機能を追加できるんだ。」


「へぇ~。どんな機能があるんですか?」


「一緒に見てみるか?」


「はい!」


 ミルクが俺の近くに来て、ウィンドウを覗き込む。


「このWi-Fiっていうのはなんですか?」


「スマホっていうのを使うために必要な物だよ」


「スマホというのはなんですか?」


 むむむ。困ったな。

 反応をみる感じ、スマホはこの世界にはないらしい。

 俺が召喚者っていうのはなるべく伏せて置きたいし⋯⋯。


「俺の故郷で使われている、魔法具の名前だよ」


「へぇ~。リツさんは持ってるんですか?」


 アニメとかでよく見る魔法具があるのかどうかは賭けだったが、反応的にあるみたいだ。無事乗り切れた!


「いや、故郷に置いてきてるからね。今は持ってない」


「リツさんの故郷って、どんなところなんですか?」


 前言撤回。乗り切れてなかった。さて、どう返すか。質問で返してみるか。


「地図にものってないような田舎だよ。ミルクの故郷はどんなところなんだ?」


「私は、イスカ国という国の山奥に実家があります。でも、わけあってこの森に来たんです⋯⋯」


 やらかした、と思った。

 なぜなら、そう話した彼女の顔が、今にも泣き出してしまいそうなほど弱々しいものだったから。


「あー。話したくないんなら、無理に話さなくてもいいぞ?」


「ありがとうございます⋯⋯。話せる時が来たら、話しますね」


⋯⋯。まずい!沈黙だ!

 ここは何か話題を振らねば。


「きょ、今日のお昼ご飯って何が出るんだ?」


「今日のお昼ご飯は、まだ決まっていませんが、お肉を使った料理にするつもりですよ。」


 いつも通りに戻った声で、ミルクが言う。


「今日は肉なのか!」


「はい。ずいぶんと嬉しそうですね」


「肉は好きだからな。それに、ミルクの料理は何でも美味い」


「光栄です」


 笑った表情でミルクが言う。

 俺も彼女に笑みを返す。


「っと、そろそろお昼ご飯の準備してきますね」


「ああ」


◇◆◇◆◇◆


 やがて、ミルクが家に来てから3日が経った。

 そう、今日はミルクがこの家を出ていく日だ。

 ミルクは、ドアの前で俺に言う。


「リツさん。レッドウルフから助けていただいただけでなく、私の無理なお願いも聞いてくれて、本当にありがとうございました。この恩は忘れません」


「これぐらい全然何でも無いし、料理も美味しかったから、こちらこそ感謝したいくらい」


 料理を褒められて嬉しかったのか、顔に笑みを浮かべながらミルクは言う。


「そう言っていただけると、嬉しいです。」


 ミルクはドアを開け外に出る。

 そして俺の方に体を向け、少し寂しそうに言う。


「3日間、本当にありがとうございました。」


 ミルクは、こちらに顔を向けたままドアを閉める―――


「ちょっと待って」


 俺は、気づいたらそう言っていた。

 ドアを閉める直前、ちらっと見えた彼女の顔が、実家の話をした時のような、悲しい顔をしてたから。


「最後に、君の家の話をしてくれないかな」


 ミルクは少し考えてから、話しだした―――

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