邂逅
「よし!完成!」
ウィンドウを見て出来栄えを確認するが、なかなか良く出来たと思う。
ついでにマップを確認すると、そろそろ目的地に着くというところだったので、ミルクのいるリビングに戻る。
「あっ。リツさん!何かやってたみたいですけど、終わったんですか?」
「ああ。時間は掛かったけど、その分いい出来だよ。」
「何か作ってたんですか?」
「それについては後で話すよ。多分そろそろ⋯⋯」
そこまで言った所で、ピコン!という音が脳内に響く。
ウィンドウを確認すると、『目的地に到着しました!』という文字が表示されていた。
「着いたみたいだ」
「いよいよですね⋯⋯」
ミルクが緊張した面持ちで窓の外を見る。
「ここからは俺が直接運転するから、討伐対象のモンスターがいたら教えてくれ」
「はいっ!」
それから数分後。
「リツさん!いました!」
「どこだ?」
「あそこです!」
窓の外を覗き込んで探していると、ミルクが指差して教えてくれた。
確かにそこにいたのは討伐対象のモンスターだが、どこか妙だ。
情報によると、このモンスターは人間に似た社会性のモンスターだったはず。
つまり、狩りなどで外出する時は、チームを作って動くはずなんだ。
それなのに、あの個体はチームどころか味方の一人も連れていない。
違和感を感じた俺はこの事をミルクにも話し、あの個体を尾けてみる事にした。
"それ"の通り道は、全て死体で溢れていた。
"それ"は、キングゴブリン種の突然変異。
キングゴブリン種とは、通常のゴブリンがより強化された種のみで交配を続けた結果生まれた、ゴブリン種の上位種である。
ただでさえ強力なキングゴブリン種の、突然変異。それはまさしく、"最強"だった。
同じ巣のキングゴブリンの集団を、僅か5分で惨殺。
その直後に来たキングゴブリン討伐の依頼を受けたパーティーも、同じく5分で殲滅。
血に飢え、様々なモンスターの巣を襲い、全滅させたらまた次の巣。
そんな調子で20を超える巣を潰しても、ゴブリンには傷一つ付いていない。
そのゴブリンは強すぎた。この地域のモンスターでは全く太刀打ち出来ないほどに。
もっと強いモンスターがいる地域――――例えば、ダンジョンの下層にいるモンスターなら、このゴブリンと対等に闘えるモンスターもいただろう。
だが、この地域においては、このゴブリンは頂点に君臨していた。
とはいえ、このゴブリンはあくまで突然変異。普通のゴブリンより劣っているところもある。
それは知能。ゴブリンの最も目立ち、最も警戒される特徴である知能がないのだ。
同じ巣の仲間であるキングゴブリンを惨殺したのも、これが原因である。
このゴブリンは、目に入るモンスター全てを殺戮する、災害のようなものと化していた。
「うわぁ⋯⋯」
目の前の惨状を見たミルクが、青い顔で小さな悲鳴を上げた。
俺達がさっき見つけたモンスター――――パートナーライオンを尾けた先に、パートナーライオンの大量の死体が転がっていたからだ。
「どうしてこんなことに⋯⋯」
「状況をみるに、とんでもなく強いモンスターが、巣を襲ったんだろう。そうじゃなきゃ、死体の傷や、残っている足跡に説明がつかない。」
周りには、パートナーライオン達が食べるための食料(他のモンスターの死体)が置いてある場所があったり、住処となるいくつかの穴が掘られてたりしている。
ここがパートナーライオンの巣と見て間違いないだろう。
さっきの個体は、俺達が目の前の惨状に呆然としているうちに、どこかへ消えてしまった。
恐らくあの個体もこの巣に住んでいた個体だったと思うが、一体どこに行ったんだ?
「リツさん!」
「どうした?」
「ちょっと来てください!」
何かないかと巣を歩き回っていたミルクの所に行ってみると、異様に肥大したパートナーライオンの死体があった。
「どうして一匹だけこんな死体があるんでしょうか⋯⋯?」
「パートナーライオンの性質に、仲間が殺されると強くなる、というものがある。それで強くなったんだと思う」
ミルクがパートナーライオンの死体に合掌しているのを見ていると、かすかにドン!という音がした。
「ミルク、今何か聞こえなかったか?」
「え?何か聞こえましたか?」
ミルクには聞こえていない⋯⋯。もしかしてと思いウィンドウを開いてみるも何も表示されていない。
気の所為か⋯⋯?と思っていると、またドン!という音が聞こえた。今度ははっきりと。
「聞こえました!」
「何の音だ?」
ドン!ドン!と立て続けに音が鳴り、少しづつだが近づいてきている気がする。
「多分ですけど⋯⋯足音?」
次の瞬間、グオオオオオォォォォォ!!!!という唸り声が聞こえた。それもすぐ近くで。
続いて、木が薙ぎ倒される音。近づいて来ている!
俺達は音が聞こえて来た方を固唾を飲んで見守る。
ついに"それ"が、俺達の前に姿を現した―――――




