決意
なんやかんやあって、俺達は今借金取り&勇者達に囲まれている。
借金取り達はミルクからお金を取り立てるためにこの街まで探しに来ていて、勇者達は俺と同時に召喚された人達だ。
後は言わなくても分かるだろ⋯⋯?
てか、マジでどうしましょうかねこの状況。
準備はしてきたし、最悪逃げる事も出来るけど⋯⋯
「よぉミルク。久し振りじゃねぇか」
よし逃げようそうしよう。
悪党の決まり文句みたいなセリフを吐いた借金取りから逃げるため、俺は【複製】を発動させ、俺とミルクが中心となる位置で家の複製を創り出した。
【家召喚】で家を建てた時とは違い、複製はポンッとすぐに出てきた。
狙い通り、俺達は家の中、奴らは外にいるようだ。
ともかく、これで逃げる準備は整った。
大勢に目撃されないよう【縮小】で家を小さくしてから、【飛行】で飛び立つ。
「待て!」
叫ぶ勇者を無視し、豆粒サイズまで小さくなった家は、高く高く昇っていく。
やがて、借金取りも勇者も届かない遥か上空までやって来た。
「ミルク、大丈夫か?」
「はい⋯⋯。全然大丈夫です⋯⋯」
そういうミルクの足は僅かに震えていた。
「強がらなくていい。怖かっただろ?」
「⋯⋯はい。すごく」
⋯⋯いつもは元気なミルクの声に覇気がない。
昔のトラウマが蘇ったのだろう。
今は休ませた方が良さそうだ。
「ミルク。部屋で休んだ方がいい。今日の目的は果たせたし、疲れる事もあったから、一度休憩しよう」
「分かりました。ちょっと休んできますね」
そう言ってミルクは部屋へと消えていった。
少しすると、小さく泣き声が聞こえてきた。
やはり、トラウマを思い出してしまったんだろう。
何か元気づける方法は⋯⋯
そうだ。街で何か買ってこよう。
勇者達はまだいるだろうが⋯⋯ローブを着て注意深く周りを見ていれば大丈夫だろう。
俺はもう一つの複製を出し、下へと降りていった。
数分後、俺は無事に下へと降り、街に入る事に成功していた。
俺が生きている事がバレたから、てっきり大規模な捜索でもされてるものかと思ってたが、どうやらそんな事はなかったらしい。
普通に街に入れたし、勇者達の姿も見当たらない。とはいえ油断は禁物だ。常に周りを警戒しながら歩こう。
俺は大通りに出て何か良いものがないかと探し始める。
キョロキョロしながら探していると、アクセサリー店っぽいお店を見つけた。
入ってみると、色んな宝石が使われた色んなアクセサリーが置いてある。
どれも綺麗で、見惚れていると、ふと値札が目に入った。
それを見て思い出す。
そうだ。今俺お金ないんだった。
俺は複製を出してすぐに帰った。
ちょっと落ち込みながら家に帰って、ミルクの様子を見に行ってみる。
ベッドの中で寝ていて、しばらくは起きなさそうだ。
元気づけるためのアクセサリーも買えなかったし、せめて今日のお昼ご飯は俺がつくろう⋯⋯
ガチャッという音に部屋の方を見ると、ミルクが起きてきていた。
「おはようございます⋯⋯」
「おはよう。ご飯食べる?」
「はい⋯⋯」
「ちょっと待っててね。今用意するから」
俺がそう言うと、ミルクはソファに座りぼーっとし始めた。
お昼ご飯はミルクが起きてから食べようと決めていたので、冷蔵庫から俺の分も一緒に取り出す。
テーブルまで運んで、俺とミルクの前に置く。
「今日はちょっと豪華にしてみたぞ」
ミルクの元気がなくて心配だったので少しでも元気づけようと海鮮丼にしてみた。
ちなみに【食料自動追加】のランクが上がったため、食材が一日ごとに好きなタイミングで得られるようになって、その度に食材を変えられるようになった。正直言って神です。
こっちにも魚を生で食べる文化があるか心配だったが、ミルクが目を輝かせ始めたので、多分あると思う。
俺は自分の海鮮丼に醤油をかけ、ミルクにも醤油を手渡す。
ミルクも醤油をかけたのを確認してから、二人で手を合わせる。
「「いただきます」」
俺はまずマグロを食べてみる。
⋯⋯うま。
久し振りに食べたお刺身が美味しすぎる。
そのせいで箸が進み、あっという間に食べ終わってしまった。
「ごちそうさまでした」
ミルクを見ると、まだ美味しそうに海鮮丼を食べていたので、先にキッチンで食器を洗い始める。
ちょうど自分の分が洗い終わったところでミルクが食器を持ってきたので、食器を受け取って洗う。
「ありがとうございます」
さっきまで元気がなかった声も、いつも通りになったし、元気になってくれたようだ。
食器を洗い終わって、俺は部屋に入る。ミルクは現在リビングだ。
今回街に行ってみて分かった。
これからもあの街に普通に行ったら、いつか必ず捕まってしまう。
だから決めた。
もうあの街には、二度と行かない。
いつの間にか3月になっててビビりました⋯⋯




