第7章①:光羽の魔導姫、宿舎での朝
銀色の髪を朝日が照らす。ルミナ・ベルフォートは自室の小さな机に向かい、新作魔道具の改良に没頭していた。窓から柔らかい光が差し込み、緑の瞳は真剣そのもの。昨日の討伐と魔道具の暴走は、彼女にとって反省と学びの瞬間だった。
「……やっぱりここの符号の向きが微妙かしら」
小さな声でつぶやき、羽根型の魔道具を風魔法で浮かせ、光の球を試運転する。
静かな朝。だが、軽いノックの音が室内に響いた。
「……失礼、ルミナ。朝から、仕事か?」
ルミナは顔を上げる。ドアの前には、鋭い眼光のカイル・アッシュフィールドが立っていた。副ギルドマスターとしての威厳を漂わせつつも、その目には少しの心配が見える。
「……カイル様。おはようございます」
ルミナは軽くお辞儀をし、机の上の魔道具を整理しながら答える。
「無理してないか? 昨日の戦闘、けっこう危なかったぞ」
カイルは部屋に一歩踏み込み、距離を保ったまま彼女を見守る。
「大丈夫です。こうして改良すれば、次は暴走しません」
ルミナの声には自信と軽い挑戦心が混ざる。無鉄砲で好奇心旺盛な彼女を、カイルはいつも少しだけ心配していた。
「手伝おうか?」
無理に口を出すのではなく、見守る距離での申し出。ルミナは少し微笑み、手を止めて顔を上げた。
「ありがとうございます。でも、今回は自分でやってみます」
その真剣さに、カイルは頷く。内心、少し胸が高鳴った。彼女の独立心が、無茶をしてでも挑戦する姿が、手強くも魅力的に映る。
しばらく沈黙が続く。ルミナは魔道具を調整し、カイルは黙って横で観察する。軽い風が窓から入り、二人の間に柔らかい静寂が漂った。
「……無茶するなよ」
小さな声でカイルが呟く。ルミナはくすりと笑った。
「無茶じゃないです。挑戦です」
そして、彼女はまた手を動かす。カイルはその様子を見つめながら、少しだけ安心しつつ、守りたい気持ちが膨らんでいく。
午前の光の中、二人の時間は穏やかに流れた。ルミナは魔道具の改善点をメモし、カイルは静かに見守る。距離は保たれているが、互いの存在が心地よく、少しずつ距離を縮める予感だけが部屋に満ちていた。




