第1章:光羽の魔導姫、辺境伯領へ
婚約破棄の知らせは、ルミナの胸に深い穴を開けた。
侯爵家の元婚約者レオン・ド・ラフォールは、嘲笑を浮かべながら告げた。
「君は口うるさく、魔道具に夢中で、女としてもはしたない。他にもっと品行方正で魅力的な女性がいる」
その言葉を反芻しながら、ルミナは深呼吸する。怒りも、羞恥も、失望も混ざり合うが、その奥で静かな炎が灯った。
「……私の人生は、私のものですわ。誰のものでもない」
銀色の髪が風になびき、緑色の瞳に決意の光が宿る。伯爵家の令嬢としての矜持と、研究者としての誇りが、ルミナを前に押し出した。
彼女が向かったのは、辺境伯領の冒険者ギルド。ここでなら、魔道具の実験を行いながら、自分の実力を証明できる。
道中、村や城下町を歩きながら、ルミナは心の中で冒険の計画を練る。風魔法やシールド魔法の訓練、そして新たな魔道具の試作――すべてが、レオンの屈辱に対する反撃のためでもあった。
街道沿いの広場で、人々が集まる噂の場面を見かける。大柄な男性が、剣を構え、若い冒険者たちを指導している姿だった。
「……あの人は確か辺境伯家の次男の……」
ルミナは目を細める。背筋がぴんと伸びたその姿、筋骨隆々の腕、鋭い眼光――まさに魔道具の実験を試す相手として理想的だと直感した。
「ふふ……あの方なら、私の魔道具の能力を試すには最適ですわ」
心の中で密かに頷き、ルミナは胸の高鳴りに気づく。筋肉質で美丈夫な体つきに、研究者としての興味だけでなく、なぜか胸がざわつく感覚も混ざった。
やがてルミナは、ギルドの門前に立つ。大きな木製の扉の向こうに、数多の冒険者たちが行き交い、活気と熱気に満ちていた。
「さあ、ここからが私の冒険ですの」
小さく息を吐き、銀髪を揺らしながら一歩を踏み出す。
光羽の魔導姫――ルミナ・ベルフォートの冒険が、今、始まろうとしていた。




