第10章③:ラフォール侯爵家の決断
ラフォール侯爵は、重く厳しい眼差しで息子を見据えた。
「レオン・ド・ラフォール。
お前は本日をもって、“ラフォール侯爵家から廃嫡”する。今この時から貴様は平民となる。屋敷からも出ていくように」
レオンが絶叫する。
「そんな……そんな俺が平民なんて、馬鹿な!!
俺は悪くない! あの女が——!」
「黙れ」
侯爵の一喝で、レオンは凍りつく。
「まだルミナ嬢に責任を押し付けるか。
お前は侯爵家の名を汚し、ギルドに泥を塗り、ベルフォート伯爵家の娘を侮辱した。
もはや、弁明の余地などない」
侯爵夫人は涙を流し、家族の空気は絶望に染まっていた。
「ラフォール侯爵家は、ベルフォート家へ正式に謝罪、償いをする。
ギルドにも然るべき償いを行う」
レオンは従者たちにさえ背を向けられ、屋敷の外へ追放される。
“元”嫡男へ向ける視線は、哀れみとも軽蔑ともつかない。
そのとき——
「……娘を侮辱した報いだ」
静かなエドワードの声が、鋭く響いた。
普段穏やかなベルフォート伯爵の怒気に、レオンは震え、言葉を失った。
アレクシス兄も冷ややかに告げる。
「研究材料にしなくてよかったな、レオン。
人間として扱ってもらえただけ、僥倖だよ」
軽い調子なのに、妙に怖い。
そして——帰り道。
月明かりの下、ルミナとカイルは並んで歩く。
「……終わりましたね」
「君はもう、誰にも傷つけさせない」
カイルはそっとルミナを抱きしめ、額へ口づけた。
それは優しくて、温かくて、
“新しい未来”の始まりを感じさせるものだった。




