第10章②:嫉妬と執着——レオン・ド・ラフォールの本性
「レオン、もう取り繕うな」
ラフォール侯爵の声は、怒号ではなかった。
静かで、だからこそ逃げ場のない声だった。
レオンは震え、だが口を開く。
「俺は……悪くない……!
あいつが……ルミナが……!」
「……私?」
ルミナが静かに問い返すと、レオンの瞳に、狂気じみた焦りが宿った。
「そうだ!
お前は、俺の後ろで笑ってるだけで十分だったんだ!!
伯爵家程度の娘が、ギルドで評価されて……っ、俺より先に称賛されるなんて許せるわけないだろ!」
室内が凍りつく。
侯爵夫人が手を口元に当て、目に涙を浮かべた。
レオンは止まらない。
「婚約破棄してやったのに、ギルドで活躍? ふざけるな、恥なんだよ!
だから……少し痛い目を見れば、お前も大人しくなると思っただけだ!」
——それが、動機。
ルミナを貶め、自分が“上だ”と証明するためだけの。
なんて、浅はかで。
なんて、醜くて。
なんて……哀れ。
ルミナはゆっくりと立ち上がった。
「……あなたの後ろに下がるために、私は魔道具を作っているわけではありません」
レオンの目が揺れた。
「私の人生は、あなたの見栄の飾りではありません。
私の魔道具も、私の努力も……あなたの嫉妬心の犠牲になるためのものではない」
レオンは言葉を失ったように口を開け閉めした。
侯爵は深く息を吐き、静かに言う。
「……よく分かった。レオン、お前は——」
「ま、待ってくれ父上! 俺は……俺は……っ!」




