第10章①:暴かれた嘘——揺らぐ侯爵家の威信
ベルフォート家の応接間には、張りつめたような静けさが漂っていた。
ギルド本部から派遣された調査官が二名、重々しい書類を机に置く。
ルミナは背筋を伸ばし、父エドワードの隣に控える。
その向かいには、ラフォール侯爵家の当主と——レオン。
「……調査の結果、“魔力撹乱”は自然現象ではなく、人為的に起こされたものだと判明しました」
調査官の言葉に、室内の空気がわずかに揺れた。
ルミナは静かに息を吸い込む。
やっぱり——誰かが意図的に仕掛けたのだ。
調査官は続ける。
「さらに、使用された魔道具は……“ベルフォート家のルミナ嬢が作ったものに似せて作られた粗悪な偽物”でした」
エドワードが眉をひそめ、アレクシス兄が軽く目を細める。
カイルは微動だにしないが、わずかに殺気が走る——彼の怒りは静かで深い。
調査官は、淡々と証拠品の魔道具を机に置いた。
「そして、最も決定的なのはこれです。
魔道具の内部から、“ラフォール侯爵家の工房”で使われている魔力量測斑が検出されました」
その場の視線が、一斉にレオンへ向いた。
「なっ……! ば、馬鹿な! こんなもの、ベルフォート家の捏造に決まっている!!」
レオンは勢いよく立ち上がり、机を叩く。
だが、その目には動揺が滲んでいた。
アレクシス兄はすっと立ち上がり、冷たい声音で言い放つ。
「……作品を捏造なんて、僕が許すわけないだろう?
それに、うちの工房でラフォール侯爵家の工房”で使われている魔力量測斑を刻印するなんていくら天才のルミナでも不可能なことぐらい誰でもわかる」
カイルは静かに視線だけ向けた。
「嘘を吐くのは……愚策だ」
レオンの顔がみるみる青ざめる。
ラフォール侯爵が、息子へと低く問いかけた。
「レオン……説明せよ」
「ち、違う! 俺は……そんな……! ベルフォート家が俺を陥れようとして……!」
支離滅裂な弁解が続く。
侯爵の表情には、薄い不信と——失望。
その光景を、ルミナは静かに見つめていた。
心の中で、何かが冷たく沈んでいく。
──あなたは、ここまで浅い人だったのね。
レオンの自滅の始まりを告げるように、調査官の言葉が落ちた。
「本日中に、さらに詳しい調査報告書を提出します。
証拠は揃っています。あとは……ラフォール侯爵家の判断次第です」




