8.優しい先生
「それじゃ丸付けをするわね」
赤羽先輩が問題を最後まで解き終わると、先生はすぐに問題冊子を取り、答えを見ながら丁寧に丸を付けていく。
「ふふっ、赤羽ちゃんは十八点。石松さんは百点よ」
先生から返された問題冊子を見てみると、百点と書かれた横に可愛い猫が優しく笑っている絵が描かれていて、嬉しいなと眺めていると先生から声がかかる。
「それじゃ、石松さん。赤羽ちゃんが間違えた所を教えてあげて」
「あっ、は、はい」
ドキドキしながらも横を向くと、思いっ切り赤羽先輩に睨まれて思わず視線を逸らす。
本当に大丈夫だろうか。普通に手を出されそうな気がするけど……
「赤羽ちゃん、ほらほら。ちゃんと勉強を教えて貰いなさい。石松さんも寄って寄って」
「は、はい」
「……チッ」
何故か物凄く楽しそうな先生の言葉に赤羽先輩の方へと寄ると、嫌そうな顔をして舌打ちをされる。
それに私は傷付きながらも、赤羽先輩の問題冊子を覗くと十八点だけあって酷く点数の横には怒った猫がいる。
私は取り敢えず緊張しながらも意を決して、間違えている箇所の解説をしていく。
「えっーと、まずこのページでいる式の展開の公式は三つあって……」
◆
誰かに勉強を教えた事が今までで一回もないので中々難しいけれど、自分では出来るだけ分かりやすく、しっかりと公式も書いて教えているつもり。
だけど赤羽先輩は私の説明を聞いていないようで、やればやるほど心が苦しくなって、なんだか泣きそうになる。
「最後の因数分解の問題に使う公式はこれで……」
それでも私は途中で投げ出す事なく説明を終えて、赤羽先輩をチラッと見ると思いっ切り目が合って、私は急いで元の場所へと戻る。
「赤羽ちゃん、どうかしら?凄く分かりやすい説明だったけど、理解出来た?」
「知らねぇよ。大体、説明が長過ぎ。下手だな人に教えるの」
ヘラヘラとこっちを見て言う赤羽先輩の言葉に心が結構抉られて過去一傷付く。頑張ったのに……
「無駄なく丁寧な説明だったわよ。赤羽ちゃん。そのヘラヘラした顔、今すぐやめなさい」
「……チッ」
先生の怒った声に赤羽先輩は静かになり、図書室に気まずい空気が流れる。
こういう誰かが怒られた後の空気は凄く居心地が悪い。それに心が傷付いてるのも相まって、顔を上げるのすら億劫で視線を下に向けてスカートを握っていると、不意に誰かに頭を撫でられる。
「よく頑張ったわね、石松さん。赤羽ちゃんが全部悪いんだから、気にしなくていいわ。次もまた、赤羽ちゃんに勉強を教えてくれるかしら?」
空気が変わる程の優しい声と手の感触に私は顔を上げて、久しぶりに人に褒められ顔を赤くする。
そして私は単純な人間だから、やって良かったなと思い赤羽先輩にはいい迷惑かもしれないけど頷いた。
「はい」
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