7.得意分野
「三年生の文系の生徒は、基本中学校から高校二年生までで習ったことを復習するだけだから、新しい事は習わないの。どう?石松さんにとっては簡単でしょう?」
桜井先生が持って来てくれた数学の問題冊子に一通り目を通してみて思ったのは、想像していた三倍……いや、五倍ぐらい簡単ってことで。だから驚いて、思わず聞いてしまう。
「こんなに簡単で、大丈夫なんですか?」
「ふふっ、文系だもの。数学は最低限で良いのよ。どうかしら、赤羽ちゃんに教えられそう?」
「はい。これぐらいなら全然大丈夫です」
「良かったわ。流石、石松さん」
ニコッと笑う先生に私も安心して笑みを返すと同時、扉が勢い良く開き赤羽先輩が入ってくる。
相変わらず入ってきてすぐ私を睨んで、ついで先生をも睨み、いつも通り不機嫌に私の隣へと座る。
そしてスマホを弄り出そうとしたタイミングで、先生が声をかける。
「赤羽ちゃん。勉強しないと、卒業出来ないわよ?」
「うるせぇ」
「あら、私にそんな口聞くなんて傷ついちゃうわ。今回は私と石松さんが赤羽ちゃんに勉強を教えてあげるから、勉強しましょう?」
赤羽先輩に怯むことなんて一切せずに、ニコッとしたまま言葉を言い終わると首を傾げる先生。
でも、赤羽先輩はスルーして特に何も言わず、そんな先輩に先生の雰囲気が少し変わって、声が重くなる。
「赤羽ちゃん、お返事は?」
「チッ。やんねーよ」
「ふふっ、分かったわ。それじゃ、今から勉強をしましょうか。今日は数学。石松さんが教えてくれるわ」
赤羽先輩の返事をガン無視で、数学冊子の最初のページを開いてあげると、次いでシャーペンを準備して、勉強が始まる。
「最初は中学校の復習からね。『式の展開と因数分解』懐かしいわ。赤羽ちゃん、やってみましょうか」
にっこりと笑ってカウンターに頬杖を付く先生に、赤羽先輩は相変わらずの無反応。
そんな状況に戸惑っていると、先生から不意に笑みがなくなり、人生で一番の恐怖を感じる。
「赤羽ちゃん、命令よ。勉強しなさい」
先生の一言に赤羽先輩はスマホを弄る手を止めて一瞬固まった後、不機嫌ながらも渋々スマホを収めて、シャーペンを手に取る。
「ふふっ、良い子ね。それじゃまずは自分で解いてみて、赤羽ちゃん」
「……チッ」
先輩の小さな舌打ちが響いた後、シャーペンで文字を書く音が時々聞こえだし、私も数学の問題を解き始める。
やがて私は数分で一ページ目の問題を全て解き、まだかかりそうな先輩を静かに待った。
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