6.変えたい
赤羽先輩に胸ぐらを掴まれた日から時間は流れ、また図書委員の当番の日に。
来るなと言われたけど、私はちゃんと返事をしてないからと自分に言い聞かせて図書室へと入る。
「……誰もいない」
ぐるっと中を見渡して見ると、今日は誰もおらず私は本を手に取りカウンターへ腰を下ろす。
そして数分本を読んでいると扉が開き、赤羽先輩が私を睨んで隣に。
最初は緊張してドキドキしていたけど、別に何かを言われるわけでもなく、いつも通り不機嫌そうにスマホを弄り出し、気まずい空気が流れる。
何か言った方が良いのだろうか。でもなんて言えば……私は結局答えが分からず考えるのをやめて本を読む事に集中し、お互いに一言も話さず放課後を終わらせる音楽が。
結局、今度は本を借りに来た仲の良い女子二人以外に人は来ず、赤羽先輩は終始不機嫌で、図書室を出て私は家へと帰る。
三日に一回ではあるけれど、憂鬱な放課後。私は正直ちょっと図書委員を辞めたいなと思い始めていて、一人ため息を溢す。
仲良くなれればそれに越したことはない。でも無理そうで、私は肩を落としもう一度ため息を吐いた。
◆
月が変わった。四月から五月に。赤羽先輩は私の胸ぐらを掴んで以来、何も言わず何もしてこない。
平和、と言うには遠い気がするけどなんだか仕事には慣れて、気が楽にはなった気はする。
でも、このまま一年同じなのはどこか気に食わなくって……
「桜井先生。私、赤羽先輩とちょっとだけでも良いので、仲良くなりたいです」
放課後、仕事をしにいつもの様に図書室に行くといた桜井先生に自分でも驚いてしまうぐらいすんなりと迷う事なく相談してみる。
私の言葉に先生は驚いた様に目を見開いた後、優しく嬉しそうに笑い私の頭を撫でると一瞬考えて答えてくれる。
「そうね……もうすぐテストがあるでしょ?赤羽ちゃん、いつも成績がギリギリだから勉強を教えてあげるってのはどうかしら?」
「えっ?でも、私と学年が違いますよね?私が勉強を教えるなんて、無理ですよ」
先輩なんだから二年生か三年生な訳で、それなら私は分からない。先生もそれぐらいは分かっているはずで……どうしてそんな事を急に言ったのだろうかと怪訝な視線を送ると、先生は首を横に振って言う。
「全部って訳じゃないわ。数学の成績が一番悪いから、数学だけを教えてほしいの。それに赤羽ちゃんは文系だから、難しい数学はやってないわ。どうかしら?取り敢えず問題冊子を持ってくるから、それを見て決めて頂戴」
「分かりました」
先生の言葉を聞いて、数学は得意なので頑張って理解して、ちょっとは教えれたら良いなと淡い期待を抱きながら私は先生を見送った。
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