15.お礼
本を取り席につく。すると今日はすぐに図書室の扉が開いて、赤羽先輩と桜井先生が一緒に中へ。
そんな珍しい光景に驚いていると、桜井先生が微笑みながら私に話しかけてくる。
「今日は、石松さんもクラスで体育祭の競技を決めたかしら?」
「はい。決めましたけど……」
「ふふっ、石松さんは何にしたの?」
「障害物競争です」
「あら、そうなの。赤羽ちゃん、一緒じゃなくて残念ね」
私の言葉を聞いて、桜井先生はわぞとらしく残念がりいつもの様に私の隣に座った赤羽先輩に話を振る。
それに嫌そうな顔をして、赤羽先輩は言葉を返す。
「別になんとも思わねーよ」
「本当かしら?」
「本当だよ、うるせーな」
「あ、あの、赤羽先輩がやる競技って何なんですか?」
「……リレーだよ」
なんとなく流れで聞いた私の質問に、赤羽先輩はチラッと私に視線をやった後少し優しく答えてくれる。
そんな声に私が思わず笑うと、桜井先生が喜々としてカウンターに頬杖を付き微笑む。
「ふふっ。本当、仲良くなったわね。安心したわ」
「……あっそ」
返事に困って作り笑いを浮かべると、赤羽先輩が雑に言葉を返し静かな時間が流れる。
それから少し経って桜井先生は頬杖を付くのをやめて、言ってくる。
「それじゃ私は戻るから。後は二人で仲良くね」
手を振って出ていく桜井先生に私だけ手を振り返して、赤羽先輩と二人っきりに。
それに私は肩の力を抜いて本に視線を戻すと、赤羽先輩がため息を吐いて椅子に深く持たれる。
「はぁー……何なんだよ。今日は一段と面倒くさいかったな」
「そ、そうですか?」
「そーだよ」
先程とは違って棘のない声色で話してくれる赤羽先輩が嬉しくて、心をドキドキさせながら図書室での時間を過ごす。
そうしてあっという間に放課後を知らせる音楽が流れ始めて、そそくさと私は本を戻して外へ。
遅れて赤羽先輩が図書室に鍵をかけて私がいつもの様に歩き出そうとすると、不意に後ろから声がかかる。
「麗羽。今日、鍵やってくんねーか?」
「は、はいっ!」
名前を呼ばれたから取り敢えず何も考えずに返事をすると、頼んだと、赤羽先輩が少し笑って返事をし、鍵を投げてきたので私はオロオロしながらもなんとかキャッチする。
「職員室に行って、あいつ呼べば良いからな」
「わ、分かりました」
私の返事を聞き赤羽先輩は歩き始め階段を降りていってしまう。
最初の方は聞いてなかったけど、大体鍵を桜井先生に返せば良いんだと察して私はドキドキしながら階段を降りて、一階の職員室へ。
「し、失礼します」
扉をノックして開けながら中へ。それからすぐに中を見渡して桜井先生を見つけ呼ぶ。
「桜井先生。あの、鍵を返しに来ました」
私の声を聞いて桜井先生は少し驚きながらも、私の方へ来てくれる。
「赤羽ちゃんにやれって言われたのかしら?」
「はい。頼むって……」
「そう……今日私がしつこく絡んだからかしらね?」
鍵を受け取った桜井先生は首をかしげながらそんな事を。
「なんでしつこく絡んだんですか?」
それに私が思わず聞くと、桜井先生は笑って言う。
「今日クラスの子から聞いたのよ。ちょっと前に赤羽ちゃんと石松さんがカフェで一緒にお茶してたって。それで仲良くなったわねー、ってずっと言ってたの」
「そ、そうなんですか……」
なんだか恥ずかしくて、視線を逸していると桜井先生はまた笑って言ってくる。
「ふふっ、これからも赤羽ちゃんをよろしくね」
「はいっ!」
手を振った桜井先生に私は手を振り返して、職員室をあとにして靴箱へと向かう。
そんな道すがら赤羽先輩が私を待ってくれたりはしないだろうかなと、好都合な事を考えて少し辺りを見渡す。
でも案の定いなくって私は心の中でがっかりしながは、靴を履き替え校舎の外に出る。その瞬間、
「麗羽」
「はいっ!」
門の方から赤羽先輩に名前を呼ばれて、私は嬉しくなりながら走って向かうと、みかんのジュースと甘い紅茶を差し出される。
「これお礼だ。どっちか好きな方選んでくれ」
きっと学校の中にある自動販売機で買ってくれたんだと嬉しく思いながら、私は少し迷ってみかんのジュースを手にとって、お礼を言う。
「ありがとうございます、赤羽先輩!」
「……おう。また、当番の日な。じゃ」
私のお礼に一瞬なぜか赤羽先輩は固まりながらも、手を軽く振ってきたので振り返し赤羽先輩を見送る。
そして私は冷たいみかんのジュースを大切に抱えてバス停まで歩き、丁度来たバスに嬉しくて嬉しくて、興奮しながら乗り込んだ。
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投稿が不定期でごめんなさい。もうちょっとしたら安定すると思うのでそれまではどうかお許しを……