12.甘々
桜井先生と話している時も、赤羽先輩は少しだけ優しくなった。
不機嫌そうな顔をすることも、毒を吐くことも減り、会話が続く。そんな赤羽先輩を見て私もなんだか嬉しく、ずっと笑みを浮かべ続ける。
「それと、赤羽ちゃん。今回のテスト、赤点回避おめでとう。勉強を教えてくれた石松さんにお礼を言わないとね。ありがとう」
「いえ、気にしないで下さい」
「そう?ふふっ、でもこの調子なら赤羽ちゃんは卒業出来るかも」
「そんなにやばいんですか?」
「やめろ。やばくねーよ、別に」
「あら、怒られちゃった。でもちょっと先生、安心したわ」
柔らかく笑う先生と嫌そうな顔をする赤羽先輩と三人で会話をし、放課後の図書室の時間は流れていった。
◆
「それじゃ、さようなら。鍵は私がやっておくわ」
「はい」
放課後が終わり、手を振る先生に私だけ手を振り返して、先に出た赤羽先輩の後を歩いて行く。
こんなに楽しい気持ちで学校を出る日が来るなんて、昔の私は考えもしなかったなと心を浮かせながら靴箱に着き、上履きから靴に履き替えて校舎を出る。
時間は六時前。まだ辺りは明るくて、グラウンドを見れば運動部が楽しそうに片付けを終わらしている。
私には似合わない光景だからかつい眺めてしまい、校門ギリギリで前を向く。
そして校門出た瞬間、少し柔らかい声がかかる。
「おい、この後暇か?」
「えっ?あっ、暇です。先輩」
校門の横の塀に寄りかかった赤羽先輩の声が聞こえて、視線を向けながら返事をすると、スマホを収めて私に近付き平然と言われる。
「ついて来い」
「は、はい」
何かをされるのだろうかと私はドキドキしながらも、返事をした手前ついて行かないなんて事も出来ず、私は赤羽先輩の後ろをずっと付いていく。
来たことのない道。見たことのない景色。誰かと一緒に歩く事。
全部が新鮮で私は辺りを見渡しながら十分程歩いて行く。
そうして赤羽先輩が一軒のカフェの扉を開けて中へと入っていき、何もされませんようにと祈りながら私もカバンをぎゅっと握って中へ。
「何名様でしょうか?」
「二だ」
「二名様ですね、かしこまりました。こちらへどうぞ」
すんなりと席に案内され赤羽先輩が座り、向かいに私が座る。
「あ、あの……今から何するんですか?」
カバンを床に置いて、私は今から何をされるんだろうかと少し怯えながら頬杖を付いてスマホを弄りだそうとしている赤羽先輩に聞くと、何を言ってるんだ?と言う顔をされたあと言葉が返ってくる。
「ケーキを食べるんだよ。奢ってやるから、好きに頼め」
「えっ?えっーと、どうして……」
「勉強のお礼だ。それと……」
言いづらそうに言葉に詰まった赤羽先輩は、私の方をチラッと見て頬を掻きながら小さな声で続きを言った。
「泣かした詫びだ」
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