第十八話
冒険者ギルド。
それは王都、領都、町、村、少し人口の多い場所なら出張所から本店までどこでも見かける冒険者にとってなくてはならない所。
大概、人通りの多い大きな道に面していたり、主要な門の近くにあったりする。
それは領都ファーネフィでも例外ではなく、一番大きく人通りの多い門の近くに建っていた。
「まったく昨日の報告は散々だったわ」
冒険者ギルドに対して『貸し』が作れたと思ったら即使わされるなんて。
今思えばドルグセンのやつ、私だけに『貸し』を作らせる気だったのかもしれない。そう考えればあそこで貸し借り無しに出来たのは良かったのしれない。
ま、あれはあれでもいい経験をしたと割り切るしかないか。
物事に対しては引き出しが多くないと交渉では不利になるってことね。
私はファーネフィを拠点として本格的にソロ活動を始めるつもりだ。
昨日の晩、リズ姉さんには軽く話して今日の午前中はゆっくりして午後から冒険者ギルドに向かうっていう話をした。リズ姉さんもちょうど遅番だったからちょうどいいねって話していたんだけど、どうにも落ち着かなくてかなり早めに屋敷を出た。
本当は《メサイア》と《剣》の性能を試し斬りしようと思っていたんだけど、依頼という目的も無いのに魔物を狩るのはなんか違う気がしたので冒険者ギルドに行くことにした。
勝手知ったるファーネフィの町なんだけど、冒険者ギルドとなるとブロンから出入りを禁じられていたから実際に入るのは登録以来二回目なのよね。
話だけは職員であるリズ姉さんからたびたび聞いているから雰囲気はわかっているつもり。
なんでもファーネフィは面倒見のいい引退した冒険者が新人を優しく指導してあげてるアットホームな雰囲気でいっぱいの冒険者ギルドなんだって。
おっと、そうこうしている間に着いちゃったね。
私は少しドキドキしながら格式の高そうな扉を押し開く。
「……めぇら、リズの姐さんに恥かかせんじゃねーぞコラァッ!」
「「「サー、イエッサーッ!」」」
「てめぇらみたいなゴミ屑冒険者達を一人前のゴミにしてくれたのは誰だぁ!?」
「「「サー、イエッサーッ! ブロンの叔父貴にリズの姐さんですッ!」」」
「午後から来られるリズの姐さんの妹さんにはどういう態度で出迎えるんだったか!? そこのゴミうんこ野郎! 言ってみろッ!」
「サー、イエッ——」
「口がゴミくせぇ! 喋るなっ! 次、お前ッ!」
「サー、イエッサーッ! 妹さんには絶対服従、永世忠心で接する所存で——ぐぶぅッ!」
「こんの、ゴミ虫が! リズの姐さんも妹さんも普通の対応を御所望されておられるんだ、お前は肥溜めのクソゴミ以下の存在だ! 罰として腕立て百回、始めぇッ!」
「サー、イエッサーッ!」
「……………………………」
上半身ハダカ(女性はシャツ)で正座させられている冒険者達にそれを厳つい老齢の冒険者が指導?している。
入口から受付までの道は開いているがその左右に等間隔で綺麗に並んでいる様はまるで規律の厳しいことで有名なこの国の第一騎士団のようだ。
リズ姉さん絡みで問答のようなことをして一人の若い冒険者が蹴られたのを見て、私はそっと入口を閉じた。
「あーうん。私、まだ疲れているのかも。向こうの通りにあるカフェで午後までゆっくりしてよっと」
私は目の前の建物から回れ右してカフェへと向かう。
町並みを行き交う人々はいつもと同じ。
人族や獣人族などで賑わっている。
そんな中、冒険者にしては年若そうに見える少女が一人、曲がり角から出て私の先を歩いていくのを思わず二度見した。
あまり見かけない珍しい緑色の髪。
チラリと見えた横顔は幼さが伺えたが背丈から察するに私の一つか二つ下位の年齢だと思われる。
装備自体は比較的よく見かける動きやすい軽装の類。
しかし、その下に着ている服装が少し変わっていた。
普通冒険者というものは、装備にはお金をかけるがその下に着ている服にはあまり拘らない。大概、動き易ければ良いと考えている者が多い。
なのにあの少女は下の服装の方が装備よりも上等なのだ。
なんで見ただけで服装が上等なのがわかるかって?
私もその服のブランドをよく買いに行かされるから。
高級店だけあってフリルやレースの使い方が上手く、短目のスカートの流行をファーネフィに流行せたのもあの店。女子が好きな使い方を心得ているのだと思う。
買いに来る客層は貴族か豪商の関係者くらい。
なので装備と服装の差が明らかにちぐはぐ。
しかし何より私の目を引いたのが彼女の胸を貫いている黒い剣の形をした謎のモヤ。
冒険者特有の好奇心が刺激されてとても気になる。
正体はわからない。
周りの様子を見る限りあの黒いモヤが見えているのはどうやら私だけらしい。
ここは大通りで何人もの人が彼女とすれ違っているが誰も振り返ることすらしない。
見えないと言えば、今私が腰に佩いてる《メサイア》もそうだ。
私には少しばかり大きめな上にこの人の目を惹く見た目。
町中では持ち歩かない事も考えたが何があるかわからない冒険者にとってあの性能は破格だ。
百人に聞いても百人が離したくないと答えるだろう。もちろん私もその一人。
というわけで少し私には大きいけど、例の外套は羽織らず、軽装で《メサイア》だけを佩いて外出している。と言うのもファーネフィに戻って来たときに門で顔見知りの衛兵さんに特に何も言われなかったのだ。何か言われるかとドキドキしていたら肩透かしを食らったのでもしかしたらと思い、こうして何も隠さなかったのだけど案の定、誰も興味を示さない。当然、声もかけてこない。
この感覚、何となくわかる。
初めて私が《メサイア》を見た時に似ている。
あの時の私は祭壇の上にある《メサイア》の存在を知っていてそれを調べようと意識していた。だからまだ認識出来ていた。
しかし、今周りにいる人たちは違う。
誰も私の事なんて気にしていないし、《メサイア》の存在を意識していない。気が付かない。
試しに《メサイア》を頭の上に掲げてみたが反応無し。まるで路傍の石ころだったり、風に舞う葉っぱを見るような目で見られるだけだ。
これらから察するに《メサイア》にはかなり強い認識阻害の効果があると思われる。
しかもそれは任意で私自身にも及ぶことがわかった。
例えばお店で買い物をする時、《メサイア》に触れていなければ普通に気付いてもらえ会話出来る。しかし《メサイア》にしばらく触れていると大声を出しても気付いてもらえない。店員に触れても視界を塞ぐように前に立っても『何か触れた』『前が見えづらい』程度の認識で終わる。
色々と思うところはあるけど町中でも気軽に持ち歩ける、というのはとても助かる。
ふと、気がつけば目的のカフェまであと少しと言う所まで来ていた。
オープンテラスには優雅にお茶を楽しむ女性達が見える。
しかし前を歩くあの少女のことが気になっている私はカフェを素通り。
カフェはいつでも行けるし、逃げやしない。
けどあの少女は今を逃すともう会えない気がするんだよね。
それになんだかトラブルの匂いがする。乙女の感がそう言っている。
って胸にあんなのがブッ刺さっていたらなんかあるよね、絶対。
「ふふっ」
私は何かに巻き込まれる事を期待しつつ、このままある程度の距離を維持して少女の後をつけてみることにした。
しばらく行くと少女は武器や防具を扱っている店が立ち並ぶ商業エリアへと進んでいく。
そしてこのファーネフィでも一番品揃えがいいと評判の武器屋『ドラゴンデストロイ』へ入っていった。
「やっぱり武器か」
向かっている方向から何となくそうだと思っていた。
普通、冒険者はよほどのことがない限り自らの武器は肌身離さず持ち歩くものだ。
だけど少女は冒険者がよく着ている軽装の防具こそ身に付けていたが武器については見当たらなかった。
軽装なのでナイフなどの小型の武器を隠し持っているのかもしれない。
しかしあのように武器屋を訪れていることから武器が必要なのだろう。何らかの理由で武器を失ってしまったのかもしれない。
ごく稀に武器屋じゃないけど武器を並べて日がな一日眺めて恍惚の表情を浮かべる変わった人もいるみたいだけど。
さて、私も少し時間を置いて入ってみるかな。
「ふーん」
ファーネフィ一番の品揃えって聞いてたけどこの程度か。
正直言ってちょっと期待外れかも。
板張りの床をキイキイ踏み鳴らしながら店内を散策する。
一回りしたところ、店主の後ろの棚には魔剣が陳列されている。
が、どれもこれも屋敷の地下で整理した武器に見劣りするものばかり。
使えそうなものを強いて挙げるなら店主の真後ろに厳重に飾ってある私の元愛剣フェアリーカットくらいだ。その節は大変お世話になりました。
店内でそれらの魔剣を羨望の眼差しで眺める数人の冒険者。
見た目だけで判断するのは軽率ではあるが、とてもそれらの魔剣を購入出来る財力もアテも甲斐性も無さそう。
そうやって眺めている時間があるのであれば、迷宮に行って一匹でもいいから魔物を倒したほうが有用な時間の過ごし方だと思うよ?
それはさておき、件の少女を探してみると驚いた事にこの店で最安値の剣が置かれている特売コーナーにいた。
大量生産の鋳造の剣や鍛冶屋見習いが練習用に作った剣など申し訳程度に剣の形をした剣が傘立てのような筒へひとまとめに投げ入れられている。
少女は真剣な眼差しでそれら一本一本の品定めを行っているようだった。
私からすれば、その程度の質であれば正直どれを選んでも大差は無いように思う。が強いて言えば鍛冶屋見習いが打ったらしい右斜め前の剣がおすすめだと思う。
うーん、やっていることはまるでストーカーね。
可愛い少女だとは思うけど、私は別にそっちの趣味があるわけでもない。
あの黒い剣のモヤが気になるだけ。
気になるけど、今のところ何もおかしな事は起こっていない。
まぁ、見かけて早々起こるはずもないか。
もうしばらく様子を見てみるか、と店内を物色するフリを続ける。
すると少女が私が心の中でおすすめの剣を持って店主の方に歩き出した。おそらく精算に向かったのだろう。
それを見て一足先に出口を目指したところ——
「おいおい、お嬢ちゃんそんな剣止めとけ止めとけ」
「そんな素人に毛の生えたようななまくら剣買ったってすぐ折れちまうぜ?」
「オイラの剣ならいつだってガチガチになるし、終わるまで折れないよぉ?」
「それこそ止めとけ、短過ぎて使いもんに何ねぇよ。キャハハハ!」
「え? え? え?」
突然の事に私の足が出口の前でピタリと止まる。
振り返れば魔剣を見ていた客の一部、パーティーを組んでいると思わしき男達が少女を囲むように声をかけていた。
何が言いたいのかいまいち分からないがとりあえず自分の店の商品をバカにされて店主は御怒りのご様子だ。
「まあ、なんだ。剣が欲しいなら俺たちがもっと良い剣やるから。だから、な? わかるだろ? 俺達について来いよ」
「そーそー、その剣の百倍良い剣を宿に置いているんだって。そんなのじゃダメだって」
「えっと……その、あの」
「見た感じまだ一つ星だろ? 一人前になるように手取り足取り腰取り、懇切丁寧しっかりねっとり、ウブなねんねから卒業させてやんよ」
男の一人が少女の肩に馴れ馴れしく手を回す。
またしても己が店の商品を貶された店主は口の端をピクピクさせて今にも爆発しそうな様子。
「じゃ、そんな剣は『ぽーい』して。さ、イこうか?」
「てめぇら——」
「あんたらふざけんじゃないわよッ!!」
気がつけば、あまりの横暴さに店主を押し退け私が怒鳴っていた。
突然の私の剣幕に男達、少女、そして店主もポカンと口を開け放っている。
「剣を餌にして如何にも初心者そうな女の子を無理矢理誘うなんて恥を知りなさい、恥を!」
「なんだオメー?」
「小汚ねえ外套にそんな冴えねえ武器で俺達三つ星の冒険者に歯向かうんじゃねぇよ!」
「あの、わ、私は大丈夫ですから」
そんな声と体を震わせながらそんなことを言われても説得力がない。ここは申し訳ないがお節介を焼かせてもらおう。
「一応聞くけどあんた達、ファーネフィの冒険者?」
「は? ちげーよ。俺達は生粋の王都出身だ! こんな田舎くせー町の冒険者のはずがないだろうが!」
「ここには王都で受けた依頼で来てんだよ! お前みたいな田舎くせー冒険者は黙ってママのおっぱいでも吸ってな!」
「オメー星いくつだ? そんな田舎くせー装備しか出来ないんじゃせいぜい二つ星ってとこじゃないのか! あ!?」
あんた達が誘っていたその子は装備や行動からするとその『田舎くさい冒険者』なんだと思うけど?
こういう出身と星の数でマウントを取ろうとしてくる奴らには言っても無駄なんでしょうね。
「そうよ、ニつ星だけど文句ある? とりあえずこれ以上を望むなら外で話しましょ。どうやらそろそろ後ろの人が限界みたい」
少女に向かってチョイチョイと手招きをして二人で先に武器屋の外へと向かった。
「あん? 後ろ? ひ、ひぃ」
「おまえら、店ん中でいい加減にしろ! 騒ぐんなら外でやりやがれッ!!」
「ちっ、出るぞ」
店の外に出た途端、少女を抱えて逃走しても良かったけど、そうすると『田舎くせー冒険者は逃げるのが得意』とか王都で言われそうなので止めといた。
「いい度胸してんじゃねぇか。今なら泣いて謝れば許してやるぜ?」
「は! 店主に追い出されたくせにじょーだん言わないで。そういうのはあんたらみたいな存在だけで十分、間に合ってるわ」
「っのクソあまぁ!」
「オイラの剣の突きを後ろから喰らわせて、ひぃひぃ言わせてやる!」
「「……きんも〜」」
私と少女がハモって引く。
あとそこの背の低いお前ッ!
引いてる女子二人を見て興奮するなッ!
腰を振るなッ!
ヨダレを垂らすなッ!
もはや指摘することすら穢らわしい。
やっぱり店を出て速攻で撒けばよかった。
「もうさっさと終わらせるわよ。かかってきなさい。ハンデよ、私は素手でいい。あんたらは腰にぶら下げているの抜いてもいいわよ」
こんな奴ら相手に武器を抜いたら穢れる。まだ素手の方がマシ。手なら洗えば済むからね。
「はぁ? 俺達相手に素手だって? 笑わせてくれるねぇ」
「あ〜ぁ、なるほどそうかそうか。『ヌいてもいい』ってそういうワケね」
「何だよっ、こんな天下の往来で『ヌいて』くれるってか!? うひょぉぉ、オイラそんなプレイ初めてだよ、タマんねぇな! 脱ぐ脱ぐ、オイラ脱いじゃう!」
「ひっ!? そこ、服を脱ぐなッ! 武器を抜いてもいいって言ったの! ひゃ!? だから全部脱ごうとするなっての! ……もういい、話になんないこのヘンタイ共」
身を屈め、素早く男達の懐に飛び込んだ私は服を脱ぎ始めた男の顎に掌底を、勝手な妄想に耽っている男の鳩尾に一撃を、一人だけまともに剣を抜き放ち斬りかかってきた男の首裏に手刀を叩き込み、沈黙させた。
「…………ふぁっ!?」
男三人が崩れ落ちたのを見て少女が正気を取り戻し、駆け寄ってくる。
「おねーさん大丈夫ですか!? 怪我してませんか!?」
いやいや、私の周りに男が三人倒れているんだからどー見ても私は大丈夫でしょうよ。
まあ、心配してもらえるのは素直に嬉しいけどね。
振り向いた私がニコリと微笑むと少女は胸に手を当てて安心した表情をする。
「はぁ、よかったです。あ、私はエイジス・デ……いえ、エイジスと申します」
家名持ちじゃないの? 言い淀んだのは気になるけど、言わないってことは何か事情があるんでしょうね。
「エルセティよ。武器屋でタチの悪いナンパに会うなんて災難だったわね」
「いえ、おかげで助かりました。ありがとうございます」
気品を漂わせながら深々と頭を下げるエイジスと名乗った少女。
改めて正面から見ると少しウェーブのかかった緑髪に均整のとれた幼げな容姿。どちらかといえば珍しい髪の色でどこかで見たような記憶があるがそれがどこだったかは思い出せない。
彼女はさっきの騒動の所為で目的だった剣は買えずじまい。
なら、どうするか。
こうする。
「こいつのが一番良さそうね。ほい」
倒れている三人の中で唯一まともだった男の剣を取り上げてエイジスに手渡す。
「え? これは? いいんですか?」
「いいのいいの。天下の往来でいたいけな美少女相手に三人がかりで一方的にしかも剣まで抜いたのよ? こんなの通報されて投獄されてもおかしくないわよ。それを剣一本で許してあげるんだから私ってば、なーんて優しいのかしら」
「えっと、でもそれは……」
「大丈夫だ、嬢ちゃん。そっちの嬢ちゃんの言う通り、先に武器を抜いたのは三人組だ。喧嘩までなら両成敗で不問だったんだが、武器を抜いたのはさすがに不味い。衛兵呼ばれてもしょーがねぇよ。なんなら俺が証人になってやるぞ」
一部始終を店先で見ていた店主もこう言ってくれているんだからなんの心配もない。
せっかくだから残りの剣も……いややめた、なんか変な汁とか付いてそう。
しかし気になったエイジスの黒いモヤの事はわからないままか。本人も気にしてないというか、影響無いみたい。
こっそり近づいたり触れたりしてみたけど変化は無し。
ふむ、とりあえずよくわからないことがわかったってところか。
気になるけど、今はこれ以上は何も起こりそうに無いからもう少し一緒に行動して様子を見たいんだけど、こっちから強引にいく方法もあるけどここは——
「それじゃ、私はこれで」
「あ、あの!」
「ん?」
「こ、この後のご予定は!? お時間とかありませんか?」
おけ、釣れた。
こういう純朴そうな女の子なら助けた相手が見返りも求めず引いたら申し訳なさで引き留めると思った。
「お昼ご飯食べてから冒険者ギルドに行く予定よ」
「それなら、お、お昼ご一緒しませんか! えと、あの、お、お礼がしたいんです!」
可愛い。
何というか、耳まで顔を真っ赤にしてプルプル震えながら、いかにも勇気を振り絞って言いました的な感じが小動物みたいで可愛すぎる。
元々断るつもりなんて無かったけど、これは断ろうにも断れないほどの可愛さね。
「ふふっ、いいわよ。ちょうどお昼ご飯を一人で食べるのは寂しいなと思っていたところなの。あ、ご飯代は私が持つからこっちがお店決めてもいい?」
「え? お店はもちろん構いませんが食事代は私が——」
私はエイジスの唇に人差し指を軽くあてて塞いだ。
「いーのいーの。可愛い女の子に良いところを見せたいのよ、お姉さんは」
「わかりました……エルセティお姉さん」
武器屋の店主に迷惑料として数枚の銀貨を握らせた後、私とエイジスはお昼を食べに向かった。