第十七話
「……あーこいつぁヤバい」
祭壇の上に閉じ込めていた氷の塊が無くなり、剥き出しになっていた《鞘》。
それを一目見た時に思わず出た感想がそれだった。
いったい何がヤバいというのか?
考えても見て欲しい。
普通どんな武具でも初めて見た場合の感想は何かしらあるものだ。
すなわち、
・強そう、弱そう
・かっこいい、カッコ悪い
・豪華、貧相
・使えそう、使えなさそう
・危なそう、安全性が高そう
・期待、不安
・装飾が綺麗、安っぽい
・神々しい、圧倒的光源
・禍々しい、悪魔的突起
・厳つい、たおやか
・すごい魔力を感じる、全く魔力を感じない等
そういう感想らしい感想が全く、一切、これっぽっちも出てこなかった。
いや、出てこないと言うよりも気を抜くと目の前にソレがあることすら忘れそうになる。
私自身、この迷宮からの帰り道を出現させるという目的がなければきっと何の興味も持たず、路傍の石程度の認識でスルーしていたかもしれない。
もしすぐに帰り道が示されていたなら《鞘》なんてまるっと無視してそちらに直行していただろう。
それほどまでにこの目の前にある《鞘》からは存在感が感じられない。
こんな悪意の塊のような迷宮の最深部に祀られていたモノだというのに。
なのでこの《鞘》は色んな意味でヤバい代物、だと感じたのだ。
「実際、ここまで来るのにあんなに苦労してこんな存在感が感じられない《鞘》が一つ手に入るだけってホント、この迷宮は最初から最後までイカれてるわ。ドルグセンのやつ、こんな面倒な迷宮の調査をさせやがって! 実入りも魔石くらいだし報告の時に絶対に文句言ってやる!」
はぁー、それにしても疲れた。
《鞘》の目の前まで近づいても何もないし現れないし、これはもう『取っていい』ってことでしょうね。
でもそうなると新たな問題が。
いや、今の私には問題しかないし、今更か。
とりあえず《鞘》を持って帰るにしても今咥えている剣、パンドラをどうするか。
他の剣は折れたり砕けたりしているから気持ちとしては複雑だけどここに放置するしかない。
帰りの身の安全を守るために武器があるのと無いのでは安心感が違う。
しかし今の私はパンドラと《鞘》を同時には咥えられない。
パンドラは咥えたままだとそのうち私もガチデスみたく影響がでるし。かと言って《鞘》だけ持って帰っても、ねえ?
んーどうしよどうしよ…………あ、そうか。簡単じゃない。
パンドラをこの《鞘》に入れて持って帰ればいいのか。そうすればパンドラに触れなくてすむし、《鞘》も持って帰れる。
《鞘》の角度的にもちょうど入れやすい角度だし。あとはパンドラがすんなりと入ってくれれば助かるんだけどー。ぱっと見、行けそうなんだけどさてさてどうかな?
膝立ちの上半身だけを使って口に咥えたパンドラを《鞘》に収め、今度は《鞘》を口に咥えて持ち上げる。
「いったぁっ!?」
口を起点に全身へ痺れるような痛み一瞬走った直後、口に咥えた《鞘》が輝き始め、収めたパンドラまで輝きが伝播していく。
「ひぁ、眩し!」
あまりの光量に光を遮りたかったが折れた手ではかなわないうえに口元が光っているので仕方なく目を強く閉じる。
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
輝きが収まったようだったのでそっと目を開けた私は先ほどの状況の違いに戸惑いを隠せなかった。
「……えっ……」
つい先程まで何の感想も抱かなかった《鞘》が眩いばかりの金色に輝き、見た事もない素晴らしい装飾が施されている。
そしてパンドラだった真っ黒い剣があった場所には一点の曇りも無い清純で高潔な白く気高い《剣》が収まっていた。
「……何、これ……」
あまりの出来事に呆然として咥えていたことを忘れ、思わず《鞘》を落としてしまう。
想像だにしなかった出来事に続く言葉が見つからず、足元に落ちている《鞘》と《剣》をただただ呆然と見つめていた。
え? パンドラは? どこ行ったの?
何で鍔もなかった黒い剣が伝説の幻獣の一部を思い起こさせるような鍔を持つ真っ白い《剣》になっているの?
突然起こったこと想定外の事態に一旦落ち着こうとふと顔を上げると祭壇の向こう側、祭壇以外に何も無かった部屋の一番奥の壁が開かれて階段が現れていたことに気付いた。
「これまでみたいな扉はないし、登り階段だからさすがに『帰り道』ってことでいい、のよね?」
階段の先にこれ以上何か罠とかがあったり、ガチデスクラスの敵がいたらさすがにお手上げ。だからと言って簡単に死ぬつもりもないけど。
とりあえず私は落としていた《鞘》を咥え直し、壊れていない左膝と左手を駆使して、這うように背負い袋の所まで行き、荷物をまとめて階段を登り始めた。
すると登り始めてすぐ違和感を感じた。
いや、気付いたと言う方が正解だろう。
右肘が、左脛が、右膝がそして左の手のひら、指が治りかけていた。
私は夢でも見ているのだろうか?
つい先程まで激痛を伴っていた四肢から痛みが緩和されている上に折れていた骨がほぼ元通りになっている。
自然治癒力が比較的高い獣人族だってこんな短期間で治るなんてあり得ない。
「いったいどうして……はっ!?」
治りかけの左手で何気なく《鞘》を持ったところ左手に残っていた痛みが急速になくなっていく。
左手の痛みが完全になくなると今度は右手右足左足それぞれの痛みがゆっくりとなくなっていき、ついには完全に治ってしまった。
「この《鞘》の力、なの?」
よく見れば四肢だけでなく体中のあちこちにあった細かい傷や擦り傷等も全てなくなっていた。
仮にこれほどの怪我を教会で治してもらうとすれば一ヶ月はベッドに寝たままだし、安くても一般市民の四年分くらいの寄付金を要求されたに違いない。
……どういう仕組みだかわからないけど、どうやらこの《鞘》に触れていると怪我が治るみたいね。
怪我を治す、回復効果のある魔剣、いや鞘か。という事は魔鞘? いやいやそんなの古今東西聞いたことがないぞ。
というかこの《鞘》、今思い返せば光る前から、いや最初からこの姿をしていた……ような? 今はこんなに存在感があるのになんでさっきまで何の存在感も感じなかったのだろう?
そうこうしている考えていると呼吸が楽になり、尽きていた魔力がかなり回復していることに気付いた。
「身体が治ったら今度は魔力と体力が癒やされていく。これがこの《鞘》の能力なのだとしたら恐ろしいまでの性能ね」
はっきり言って即死しない限り無敵なんじゃないだろうか?
とにかくこの性能、今の私にはものすごく助かったのは確かだ。
こうなると気になってくるのはパンドラが変化した《剣》だ。
全快した体で引き続き階段を登りながら《鞘》から《剣》を引き抜いてみる。
スラリと伸びた真っ白い《剣》を頭上に掲げ、軽く振り下ろしてみるが何も起こらない。
この《剣》も先程同様に何かあると思うけど、今のところ何をどうしていいか、サッパリわからない。
仕方ない、また今度ゆっくりと試してみよう。
そうこうしているうちに上り階段も遥か先に光が見えてきた。
「やった! きっと出口ね!」
出口を見つけた喜びあまり駆け出す私。
出口と思われる光がだんだんと強くなり、あと数段登れば外に出られると言うところで足元の階段が音を立てて沈んだ。
「あ。なんか嫌〜な予感……」
こういうときの悪い予感は案外当たるもので私の足元にあった階段が縦に半分に割れてたと思ったら横にスライドしてお馴染みの落とし穴が現れた。
「くっ!」
手に持っていた抜き身の《剣》を壁に突き刺し、何とか落下は免れた。
「最後の最後で油断したところを落とそうったってそうはいかないんだから!」
そしてしばらくそのままでいるとスライドして消えた階段が元に戻っていったのでこの罠のスイッチだと思われる段を避けて階段へと降り立ち、外に向かって一気に飛び出した。
「あぁ、お日様って素晴らしいなぁ」
数十時間ぶりのお日様の光を一頻り感激した後、私は現在地を確かめるため辺りを見回す。
なんとなく見たことのある景色だなと思い、麓の方を見るとあの、岩の下を這いつくばって進んだ迷宮の入口があった。
「なるほど、ここに繋がっているのか」
切り立った崖の壁面とか火山の火口みたいな変な場所に出なくて良かったと心から思った。
「結局、調査に来たのに踏破しちゃったかぁ。ま、結果オーライかな」
そして私はファーネフィへと戻ってきた。
ビアキの北山黒亭で宿泊の精算をし、ファーネフィに着いてから亜竜馬の返却も行った。
「そんなに日は経ってないのに何だかすごく懐かしい感じがする。内容的がとっても濃かったもんね。あ〜、とりあえずお風呂に入ってサッパリしたいわぁ」
そんな事を言いながら屋敷の玄関を開けて自室へ向かう。
夕方に戻ってきたので厨房の方から香ばしく食欲を唆るいい匂いがエントランスまで漂ってきている。
ん〜今日の夕食は何だろう?
迷宮では日持ちのするパサパサなものしか食べていなかったので暖かい料理がとても恋しいのよね。
よし、決めた!
まずはささっと着替えてつまみ食いに行こう!
「…………んで、なんであんたがそこいるの?」
「おやおやエルセティ、戻ったか。迷宮の調査の進み具合はどうだ? 順調か?」
「順調も何も、踏破しちゃったから戻ってきたのよ」
というか、なんでドルグセンが元ブロンの執務室、今は私の自室の机で仕事してんのよ。
しっかり鍵を掛けておいたはずなんですけど?
「おぉさすがはエルセティ、仕事が早い。ん? あぁ、ここで仕事をしていると冒険者ギルドの余計な雑務に追われなくて快適なんだよ、ハッハッハ」
何が『ハッハッハ』よ。
今頃、副ギルマスが心労で禿げ散らかしているんじゃない? 会った事ないから知らんけど。
まあ、いいわ。
聞いている限りドルグセンの気まぐれさは今に始まった事じゃないらしいし、放っておこう。
それにドルグセンがここにいるのは私にとってもある意味、都合がいいし。
「……とりあえず着替えたいから出て行って」
「あぁ、かなりボロボロだものな。苦戦したことごよくわかる身なりだな。しかし私はお前の貧相な身体には興味が無い。お前は対象外なのだ。だから私のことは気にするな」
「私が気にするのよッ! さっさと出て行け、このエロフギルマスッ!!」
ポイっとドルグセンを叩き出すと、地下室に降りて自室用のモコモコ室内着に着替えようとして、手を止める。
一応、この後ドルグセン、腐ってもこのファーネフィのギルドマスターに依頼の報告を行うのだからモコモコ室内着は不味いか。
とりあえず無難で地味目で動きやすい外出着にしておこう。
背嚢の整理は明日にするとして、さっさと面倒なことは終わらせよう、そうしよう。
部屋の外で書類の束を見ていたドルグセンに着替え終わった事を伝えた後、私の部屋に舞い戻ろうとするドルグセンの首根っこを捕まえて応接室のソファーに案内し、何があったかを報告する。
本来ならこれは冒険者ギルドの受付カウンターもしくはギルドマスターの執務室で行うべき内容だがドルグセン自身もここで依頼して来たのだからこれぐらいは許されるだろう。
「ふむふむ、なるほどな。私の読みではもう少しかかると思っていたが思っていたより手際が良かったな」
「手際が良いも何も。奥に進んだら引き戻せないタイプの迷宮だったの。進むしかなかったの」
ドルグセンは今日の屋敷家事当番が入れてくれたお茶を一飲みすると言葉を続ける。
「仕方がなかったとはいえ、結果的に迷宮を踏破したのだからもっと誇ってもいいと思うぞ。で、迷宮から出た後に『崩壊した』のは確かか?」
私はコクリと頷く。
そう、私が現れた帰り道で戻って外に出て、さあ帰ろうとその場を離れた時、迷宮は音を立てて崩壊。入り口、帰り道共に崩れ落ちてもう一度入ることは叶わなくなった。
いや、入る気なんてさらさら無かったけど。
「……やはりな」
「え?」
「あぁ、いや何、最初に発見した冒険者やエルセティが言っていただろう、『迷宮には魔物がいなかった』と」
「前半はそうね。私が二回目調査しに行った後半はいたわよ」
「長い間、訪問する者がおらず迷宮内で魔物による魔力の循環が出来なくなったり、魔力の循環システム自体に異常が発生した場合、今回のように魔物自体がいなくなることがある。それは迷宮自体が『終わる』前触れだと言われている」
ドルグセンの話だと外部からの新しい魔力を取り込めなくなり、循環出来なくなった迷宮は魔力が枯渇してひっそりと自然消滅する場合がほとんどらしい。
だが、稀に残りの魔力を起爆剤に迷宮爆発を引き起こすこともあるらしい。
過去にはそれで周辺の地形が変わったり、町中にあったために約半分が消し飛んだ町もあるのだとか。
「つまり、何? 私の冒険者として再出発、ソロデビューをそんな危険なところに行かせたってこと?」
腕を組み、目を閉じて聞いていたけど自分のこめかみがピクピクしているのがわかる。
「言っただろう。エルセティの実力なら出来る、と。事実、こんなにも早く依頼を完了してくれた。いやぁ、私の目に狂いは無かったよ」
軽ーく流して終わらそうとしないでよ。
依頼を受ける時にも思ったけど、内容が怪しかったし、強引だった。
冷静になって考えれば一つ星の冒険者、ましてやソロがやる内容じゃないのよね。
けど、それを受けたのも私。
調査が踏破になって、結果的に危険な迷宮を一つ潰せたのだ。
良し、としよう。
「ま、いいわ。ドルグセンギルドマスター? 今回の依頼の結果、危険な迷宮の安全かつ円滑な処理を行った事については『貸し』一つって事で」
「私としては想定外の出来事に関しては相応の報酬金のアップで頼みたいところなのだが……ダメかね?」
「ダメね」
お金はブロンの遺産があるので正直困っていない。
あるに越したことはないけど贅沢せず、簡素な生活を心掛ければ一生生活出来る分くらいの財はある。
今これといって欲しいものがあるわけでもないので困ったときに頼れるよう『貸し』にしておくのが無難だろう。
「仕方がない。無理な依頼を持ちかけたのはこちらだからな」
意外。
肩をすくめてあっさりと『貸し』を認めたわね。正直、もっと渋るかと思っていた。
「さて、それでは残りの処理をしようではないか。この度の依頼は成功、と言うことで完了した。報酬は金貨十枚。迷宮内で手に入った品物についてはエルセティに所有権がある」
チラリとソファーにかけてある《鞘》と《剣》に目が向けられた。
どちらもこれまでのブロンが所有したことがない品物。ドルグセンが気になるのも仕方ない。
「……」
「……」
説明しろってこと?
お断りね。
冒険者相手に素性や得意な戦法や武器の詳細等を訊ねるのはマナー違反でしょ。
迂闊にも情報を渡してしまうと回り回って敵に自分の弱点や苦手な事を教えてしまうことになるかもしれない。
冒険者ギルドのギルドマスターであれば当然知っているであろう事項だ。
……なんてね。実際は私もよくわかっていないから説明のしようがない。
ま、明らかに今回の依頼で手に入った物なんだから最初の取り決めの通り、所有権は私にある。つまり説明するしないも私の自由ってこと。
だからなのか、ドルグセンは私が自分から話し始めるのを待っているように見えたが少しすると何故か話を進めた。
「……《メサイア》」
「何それ?」
「いや、なに。話を聞く限りだとエルセティの命を救ったんだろう? その《鞘》はエルセティにとって救世主だなと思っただけだ」
「ふーん。救世主、メサイアか。いいわね、この《鞘》とかで呼ぶのもいい加減どうかと思っていたからこの際、《メサイア》でいいか」
「ふっ、それは重畳。好きにするといい。さて、話を戻すが期限にも問題無し。レイズも今回は無し、だったな」
そう言った後、懐から金貨十枚が取り出され、目の前の机の上に用意されていた革製のトレイに置かれた。
「じゃ、これで依頼は全て完——」
「いいや、まだ星の昇格が残っているぞ」
あ、そか。
これまではブロン名義で依頼を受けていたから全く気にしていなかったっけ。
『星が増えるほど、色々なしがらみも増える。増やすにしてもゆっくり時間をかけて経験を積みながら、いろんなコネを作りながら登って行く方がいい』
依頼を受けるたびに言われたっけ。今となっては懐かしいな。
ま、星は一段階ずつしか昇格しないらしいから私もニつ星ね。
名前が売れる前に星が多いと知らない人からいちゃもんつけられたり、各領都や王都、冒険者ギルドから強制指名が来るとか聞いてるだけで面倒だもんね。
私はのんびり旅でもしながら冒険して行きたいのだ。
「おめでとう、今日からエルセティは五つ星だ」
「ぶっーーーーーーー!!」
私は口に含んでいたお茶を盛大に吹き出した。
いや、嫌味な顔したまま拍手するな!
「けほっ、けほ。え? 今、星いくつって?」
「五つ星だと言った。調査だけでなく、危険な迷宮を一つ潰して来たのだからまあ当然の結果だな」
はぁ?
はぁぁぁ?
はぁぁぁぁぁぁぁ?
う、嘘でしょ?
普通依頼を一個、二個完了させたくらいじゃ星の昇格なんてしないってリズ姉さんが昔言っていたよ!?
「内容が内容だからな。正当な評価だ。『通常』の抗議は受け付けんぞ?」
内容ぉぉぉぉ!?
確かに大変だったけど、迷宮を潰したなんて初めてだったけど、手に入った《メサイア》とか凄い代物だけど——
「あぁ、そうそう。通常なら四つ星以上になるためには昇格試験を受けてもらわないとならないのだが、今回は私の権限でパスにしておく」
昇格試験んんんん!?
そんなのあるの?
だめだ、これ受け入れると一つ星がいきなり五つ星になったって事でいろんな人に色々絡まれるパターンだ。
四つ星以上になりたくなければ、受けなきゃいい昇格試験とやらを強制的にパスするなんてゆっくり昇格していきたい私には不要すぎる配慮! 要らないお世話にだよ!
「んんん? どうしたぁ、エルセティ? 具合でも悪いのか? 顔色が悪いぞ? ん? ん?」
くっ、ニヤニヤしながら人の顔を覗き込みやがってぇぇぇ。
私がブロンから面倒事を避けるために星一つずつ昇格していくように言われていること、絶対知っていてわざとやってるでしょ?
……はっ、そうか。
それでさっき渋らなかったのか。こうなる事を見越して、か。
「くっ、『貸し』を……さっきの『貸し』でお願いします」
「ん? それは『貸し』を使って五つ星への昇格をニつ星にするってことでいいのか?」
くっそ!
そこまで理解してるんじゃないか!
こいつめっ!
でも仕方がない。ここで使っておかないといきなり五つ星になってしまう。
せっかく『貸し』を作って今後冒険者ギルドに対して優位に立ち回れると思ったのに。
「はい。それで、お願い、します」
「それならしょうがない。では、これで『貸し』は帳消しだな」
ぐぎぎぎ。
そのしてやったり顔、ムカつく、腹立つ、イライラするぅ〜!
いつか、絶対にぎゃふんと言わせてやるんだからぁぁぁぁぁぁッ!